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自分を知る、相手に知ってもらう。コミュニケーションをあきらめないことが自分らしいキャリアにつながる

はたらく女性の健康とキャリアをサポートする“mezame”(めざめ)がお送りするセミナーシリーズの第1回。

実は、パネルディスカッションのテーマをいろいろ用意していたのですが、途中からゲスト宛の質問がどんどんチャットに入り、ラジオのリクエスト番組のような様相に。
【後編】のレポートは、そんな質疑応答のようすを中心にお送りします。

▶▶《前編》はこちら

“出る杭”が打たれるのは女性だから? 

――お話の途中ですが、参加者の方から質問が入ってきていますね。せっかくですので、こちらにもお答えいただきながら進行したいと思います。

女性が活躍すると“生意気”と言われる経験をときどきしています。
周りの理解や価値観のアップデートをすべきだと思いますが、具体的にはどういう取り組みが必要だと思いますか?」

江尻:私の会社は女性従業員が約2割。それでも以前よりは増えました。私の配属は技術系だったので先輩方はほとんど男性で、仕事ももちろん男性の方々に教わりました。
私はそこで、男性の先輩方と同じようなコミュニケーション方法や話し方、提案のしかたが自分にも求められていると想像して行動していましたが、実はそれ自体が(相手の)女性に対するギャップや違和感につながったようで、うまくいかないことが多かったんです。同じようにやっても懸念をもたれてしまい、他の男性のようにうまくいかない。
そこで、「結局は自分らしく表現していくほうがいいのでは?」と考えました。男性型のコミュニケーションではなく、やわらかさや和を意識することによって相手に理解してもらうようにし、実践するようにしました。周囲の様子を見ながら、その場その場で話し方を変えることもあります。

――最初の頃の男性と同じような方法とはどのようなものだったのですか?

江尻:合意を取るために、まず先手を打って得たい結論を言い、交渉を進めるスタイルでした。快活で強い印象を与えるアプローチですが、私の話し方や印象とは合わず、その進め方自体に違和感をもたれることがありました。

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山中:私は、幸いそこまでのシーン(生意気だと言われるようなこと)はなかったと思います。鈍いのかもしれませんが(笑)。でも、男女関係なく、出る杭は打たれる的なことはありますよね。
ただ、ヘルスケア分野では、男性ばかりの意見ではサービス開発のバランスが取れないんですね。女性ならではの視点、子育てをしているという視点が役に立つことが多いんです。
私は、仕事上必要であればシチュエーションに合わせます。「あなた方の分野に詳しくはないですが、こういう切り口での提案はありかもしれませんよ」的な言い方で、相手と上手くやろうと試みることもあります。でも、「この環境は私に合わない」と判断すれば、場所を変える、人を変えるということもします。いまとは違う場所をさがしにいくということです。

――キャリアコンサルタントとしてお話を伺っていると、「女性社員を受け入れるときにドキドキしてしまう」「初めて女性部下を持つが、どうしよう」といった会社さんはまだあります。チャット欄にもこんな質問が届いていますが、このあたりはいかがですか?

実際、女性が管理職に求めていることって何なの?

女性が多い職場で働く男性管理職です。女性特有の体調やライフイベントについて、女性の立場から男性にどのように気をつけてもらいたいか。
理想的なコミュニケーションの取り方があれば教えてほしいです」

山中:私が実際に経験したシーンだと、妊娠・出産で休むことを上司に相談したら「その分野のことはわからんから、わからん!」…的なことを言われたことがあります(笑)。
でも、率直にそう言ってくれたのは、それはそれで良かったと私は受け止め、「『わからない』でいいですから、わからないと思ったら聞いてください」と返しました。「私もできないことはできないと言うし、できることはやりたいと言いますから」と。
男女に限らずですが、お互いに「わからない」ということを前提条件にするのはありだなと思っています。

――性差でわからないことはどうしてもあるけれど、女性同士ならわかり合えるのかというと、そうでもないこともありますしね。相手が誰であれ、お互いに話をすることがやはり大事ですね。

江尻:私自身は、月経前の不調の影響で休暇を取ったこともあります。生理休暇の相談を直属の男性上司にしたときは、不調に関しては「男性なのでわからない」と言われましたが、「そういう制度があるなら休んでもいいんじゃないか」と言ってもらえたこともありました。
お互いを解し合うのは難しいかもしれませんが、制度がある場合はそれを利用すること自体を止めない。気持ちよく使わせてあげようとするだけでも変わっていくことはあると思います。

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生理痛、PMSのツラさを理解してもらうには…?

――その延長で江尻さんご指名の質問です。

PMSのツラさについて、家族や職場の人たちから理解が得られません。
どうすればいいでしょう?」

江尻:会社や家族の理解を得られないと、とてもツラいですよね。自分の不調を伝えることはそれだけでも大変ですが、私は身近な人に知ってもらう、理解してもらうことは意識しておこないました。いまならネットで検索すると情報が出てきますし、PMSについて書かれた本もいろいろあるので、それを見てもらったり、見てもらったうえで話し合ったり、理解してもらうだけで気持ちが楽になったり、状況が変わることもあると思います。
会社や職場によって状況は違うと思いますが、一人でも身近に味方がいれば心強いと思います。私自身もそれでかなり楽になったので、理解者が得られることを願っています。

――開発の話にも通じますが、自分の体調がどういうときに悪くなっていくのか「知る」、記録を付けて事実を集めるということは大事ですよね。

江尻:はい。私は服薬の状況や体調の変化を記録していましたが、記録したことによって、月経が始まる前に体調が悪化しやすいことに気づきました。モニタリングすることで体調の変化に気づけたことは、自分にとって大きなきっかけになりました。
女性の体調は月経周期の中で変化しますし、ストレスや環境によって月経周期の期間が変わることもあります。そのような変化を知るために、自分の症状を記録し、不調に備えるようになりました。自分の心を書き留めることもバランスを取ることにつながりました。

「キャリアの定義」はひとつじゃない

――次の質問は山中さん宛です。

子育てしながらキャリアアップするためにはどうすれば?

山中:以前、キャリアコンサルタントの方に相談したことがあるのですが、その際に言われた「あなたにとってキャリアってなんですか?」という質問が刺さりまして、すごく考えたことがあります。
キャリアの定義は人によっていろいろだと思います。昇進、給料をあげたい、細く長くほどほどに…等々。それぞれの人にそれぞれのキャリアに対する考え方がある。ですから、会社側にしてほしいのは、会社が提示するキャリアの定義を1つの型に縛らないということですね。

重なるから悩ましい…キャリアと出産・育児の黄金期

――さて、あっという間にお時間が迫ってきてしまいました。次が最後の質問になるかと思います。どうぞよろしくお願いします。

キャリアアップの黄金期と(子どもの)生育の黄金期は重なっていて、どう対処すれば良いのか悩みます。おふたりはどうバランスを取っていったのですか?」

山中:お気持ちお察しします。上手く対処したり自分で選べたりできればいいのですが、いま振り返ってもそれは正直難しかったと思います。
私は就職してから出産までの時間が短かったので、出産までにキャリアを堅固にできませんでした。
「10年くらいはたらいて、キャリアをある程度築いてからから子どもを産めば良かったのかな」と考えたこともありました。でも、自分なりにキャリアプランを立てていても、「育休・産休を繰り返されると迷惑だから、連続して取れるようにバースコントロールをして」と言われる会社もあるんだそうです。ですから、選べないこと、自分で選択できないことの方が多いと思っていた方がいいかもしれません。
では何をするのか? 私はサポーターを見つけること。どんなライフステージでも「自分を支えてくれる味方」を作ることが大切だと思います。保育園、家族、祖父母、ご近所やシッターさんなど、そのときどきで必要な人を探して協力を得ながら、はたらき続けるのがいいと思っています。

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――「支援されることを厭わない」って実はすごく大事なんですよね。多くのサポーターの存在は、キャリアの資源にもなります。味方を増やしていく、開発していくという発想、共感します。

江尻:私自身が体調を崩した後、自分らしいキャリアを考えていった時期は、多くの女性が妊娠・出産、子育てを考える時期と重なりました。その間、夫と話し合っていくなかで、社会貢献や自己実現に対する気持ちを大切にし、“ふたりの人生”のなかで、お互いにキャリアを築いていくことに決めました。
そういう選択肢もあると思います。お互いに納得して結論を出すために、私は話し合うことをとても大切にしています。

気持ちを大切にしながらバランス感覚を持って(江尻)/できることに目を向けて大きく育てていきましょう(山中)

――今日はいろいろな属性の方が視聴されていますが、「はたらく女性の悩み」をテーマに送ってきた今回、最後に改めてみなさんにメッセージをお願いします。

江尻:体調不良をきっかけに、自分と向き合って頑張ってきたという私の話をさせていただきました。
おそらく何歳になっても状況の変化はありますし、ライフイベントなどとのバランスで自分がどうありたいのか悩むこともあると思いますが、「全部をちゃんとやろう」と思うと頑張りすぎてしまいます。そうすると、疲れてバランスが崩れることもにもつながりますよね。
「何かを目指したい」という気持ちが芽生えたときは、何歳からでも目指せるというお話もしましたが、やはりその気持ちを大切にしながらも頑張りすぎず、詰め込みすぎず、バランスを取っていくことも大事です。周りの大切な人と話をしながら自分らしいやり方を見つけ、バランス感覚を持ちながらはたらき続けたいですね。

山中:女性ならではのライフイベント、からだの変化。両立しないこともたくさんあるし、私自身、あきらめたことも多いです。でも、なくしたことに目が行きがちですが、実際には得られたことも多いんですよね。私の“青天の霹靂人事”もそうですし、今日のセミナーでのみなさんとの出会いもそう。
はたらきかたに制約がない人は、実はそんなにいないんだと思います。男性も、家族とのバランスやご自身の健康など、それぞれ苦労していることはある。できなかったことやあきらめたことよりも、今できることに目を向けて、それを大きく育てていくといいのかなと思います。
企業の人事の方も、気長につきあってもらえるといいですよね。いまこの瞬間だけを切り取るのではなく、長い目で従業員を見てほしい。いまははたらき方に制約があっても、会社がサポートすることで数年後に大きく羽ばたくかもしれない。みんな1人ひとり違うので、制度も画一的に当てはめるのではなく、本当にその人に合うのか、合わない人もいるのではないかという視点も持っていただけたらうれしいなと思います。

――ありがとうございました。

《第1回》はたらく女性の健康とキャリアを考えるセミナー
2021年3月26日(金)開催
【テーマ】
女性の“はたらく”悩み、どう乗り越える?
【ゲスト】
・江尻綾美さん

コニカミノルタ株式会社
・山中菜詩さん
中外製薬株式会社
【モデレーター】
・松岡澄江

株式会社キャリアポート代表/国家資格キャリアコンサルタント

▶▶ 《前編》はこちら!

(構成・文/阿部志穂)

「はたらく女性の健康とキャリアを考えるセミナー」
7月開催分の参加申込を受付中です!

現在参加者募集中のセミナーは、7月7日の七夕にちなんで「夫婦のパートナーシップ」をテーマにお送りします。

ゲストスピーカーとして中外製薬株式会社の山中菜詩さんが再登壇。そして、組織や人と人との関係性を専門に扱うシステムコーチの平田香苗さんがモデレーターを務めます。

3人の子育てと仕事を両立してきた山中さんの説得力ある体験談、数々の夫婦の関係性を見つめてきた平田さんならではのエビデンスに基づいた司会進行は、ご夫婦はもちろん、あらゆる1対1の人間関係をよりよく紡ぐためのヒントや気づきにつながるはずです。

参加費は無料。
▼▼こちらから、みなさんのご参加をお待ちしています!

《第3回》はたらく女性の健康とキャリアを考えるセミナー
2021年7月7日(水)12:10〜13:20

【テーマ】
育児・家事と仕事のバランス、どう共有する?
【ゲスト】
山中菜詩さん
中外製薬株式会社 
【モデレーター】
平田香苗さん
CRR Global認定 組織と関係性システムコーチ 


“mezame”は、はたらく女性の健康とキャリアをサポートするための、さんぎょうい株式会社が提供するプログラムです。




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