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三つの橋

この世界には大人になるために渡らなければならない三つの橋がある。
一つが欲望の橋。
二つ目が恐怖の橋。
三つ目が論理と感覚の橋。
少年は今大人になるためにこれらの橋を渡り始める。
少年は欲望の橋を渡り始めた。
ところどころに少年の好きなお菓子が置いてある。
少年はそれを取って食べようと思ったが、そこには大きな穴があり、取りに行くと落ちてしまいそうである。
少年は気持ちを何とか抑え、橋を渡りきった。
次は恐怖の橋だ。
辺りは真っ暗で、悲鳴や慟哭が聞こえる。
門番にこの橋はまっすぐ進めば簡単に渡れるが、少しでも何かを避けてしまうと落ちてしまうと言われる。
少年は勇気を振り絞って暗闇をまっすぐに進んだ。
途中でコウモリのようなものがぶつかったり、何者かに肩を叩かれたが、気に留めなかった。
少年は橋を渡りきった。
最後は論理と感覚の橋である。
門番はこの橋を渡るには、論理的思考力と感覚のバランスが大事だと言った。
少年は何もわからずに渡り始めた。
橋は途中で二つに分かれた。
木の板が置いてあり、そこに右に進めと書いてあった。
少年はひとまず頭を使った。
門番が言うには論理的思考力を使うのだから、単純に言うことを聞くだけではダメだろう。
しかし、これ以外の情報はなく、出題者の正体も知らないため、あとはもう一つの自分の感覚に聞くしかない。
少年は、人を信じたいと思った。
今までもそうしてきたし、これからもそうするだろう。
人を信じずに、失敗してしまったならひどく後悔するだろうが、人を信じて失敗したなら、後悔はしないだろう。
少年は自分の論理と感覚を信じ、右に進んだ。
少年は無事に橋を渡ることができた。
少年は立派な人間になった。
しかし、仮に少年がどこかのルートで失敗していたとしても、少年は大人になっていた。
どこで失敗しようが成功しようが、どのみち大人になる。
実は正解など存在しなかった。

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