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【おすすめ本】ビジネスや人間関係など 日常でも使えるテクニックがわかる! 『東大教授が教えるヤバいマーケティング』

■本の詳細
『東大教授が教えるヤバいマーケティング』
著者:阿部誠
出版社:KADOKAWA
初版:2019/5/24
ページ数:288ページ

 マーケティング関連の本を初心者でもわかりやすく紹介していくブログの第4弾。Kindle unlimitedでも読めるものを選書し、手に取りやすく、なるべく身になるポイントを紹介していこうと思います。今回は阿部誠先生の著書『東大教授が教えるヤバいマーケティング』を紹介します。本書は、行動経済学や認知心理学の観点からビジネスや対人コミュニケーションでも使えるマーケティングにまつわる手法が書かれていますので、日常生活でも取り入れられる内容です。

■著者プロフィール 
阿部誠先生は東大経済学部の教授で行動経済学や認知行動学が専門

 阿部誠先生はマサチューセッツ工科大学卒業後、イリノイ大学助教授となり、2004年から東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授に。行動経済学や認知心理学の観点から個々の心理特性を理解することで、顧客レベルのマーケティング活動に応用することを研究課題として活動されています。

■はじめに 
行動経済学とは

 行動経済学という言葉はみなさんご存じでしょうか。名称自体は聞いたことがある方も多いかもしれません。ナッジという理論の提唱者であり2017年のノーベル経済学賞受賞者でもリチャード・セイラ―教授が第一人者と言われる行動経済学者です。
 行動経済学は、簡単にいってしまうと経済学と心理学をミックスした学問のことです。経済学は人間が合理的に判断して行動することをベースにしている学問ともいえますが、行動経済学は人間は決して合理的に判断をしているのではなく、さまざまな状況判断や心理によって非合理な行動をとってしまうということを前提としています。つまり人間の非合理の行動に着目している学問ともいえるでしょう。
 そのような行動経済学は現在でもマーケティングの手法として注目をされ、論文や数々の関連書籍が出版されていますが、それぞれ理論や言葉自体が難解のものが多く、なかなかわかりづらいということ方も多いのではないでしょうか。
 本書では、人間の意思決定システムや、本能・特性を利用し、消費者を翻弄する最先端の手法を消費者を翻弄する最先端の手法を東大教授が明らかに!資本主義社会に生きるあらゆる人が知っておくべき、資本主義社会に生きるあらゆる人が知っておくべき、“悪用禁止”のマーケティング論という刺激的なコピーが推薦文として書かれています。ただ、本書はしっかりと行動経済学や認知心理学の理論に基づいているのでタイトルほどに刺激的な内容が書かれているわけではありません。しかしながらたしかにこれらの理論を理解して行動することによってヤバい購買プロセスに至らずにバイアスなどを冷静に判断することにはつながることでしょう。

■1章のポイント 
なぜマクドナルドのメニューはわかりづらいのか

 その中で本書は、行動経済学について学問的な解説やマーケターの視点から書かれたというよりも消費者の視点から書かれているので、非常にわかりやすい内容になっているのが特徴といえます。
 そこでこの章のポイントにある通り、マクドナルドのメニューがなぜわかりにくくなっているのか。レジの後ろにある大きなサイネージのメニューには、バリューセットと新商品ばかりが出てきます。レギュラーの単品メニューはレジ前に立ってやっと確認することができます。これも行動経済学を使った手法といえるもので、意思決定の際に時間的圧力を感じると、効率よく情報を処理するために単純に決めてしまうというヒューリスティックという意思決定プロセスが働くと書かれています。
 マクドナルドであればそういったヒューリスティックにより決定をしてもさほど後悔はないかもしれません。しかし時には、偏った情報だけで、判断をしてしまい、気づかずに誤った判断をすることが多々あるということです。この辺りは、本書でヒューリスティックの種類やバイアスについて書かれていますので是非読んでみてください。

■2章のポイント 
あなたは賢い買い物をしていますか?

 2章でも1章からの流れを受けて、知覚を惑わして消費者が購入をしてしまう事例について心理的効果を説明しながら解説されています。
 おとりの商品をメニューに載せることで高い商品の付加価値を上げて注文を促すフレーミング効果やかなりの費用をかけてしまったがために後に引くことができなくなってしまったサンクスト効果、DIYによって苦労して作成した家具に愛着が湧いてしまうイケア効果など、消費者として意識しないさまざまな心理効果は、実は学問上ではすでに分析されていることが多くあります。
 本書では、その事例がとてもわかやすいです。コーラやチョコレートのパッケージや訳あり商品などがどのようなマーケティング戦略のもとにつくられているのか、成功例だけではなく失敗例も書かれていて、大変興味深く読むことができるはずです。
 私たちがひとつのさまざまな商品を購入する上で、企業は多くの分析や戦略のもとに商品を生み出しています。マーケターはそのような商品戦略に敏感になってしまうものですが、「この商品にはどのような戦略があるのかな」と考えながら商品を見るだけでも、視野が拡がりマーケティングの面白さがわかるだけではなく、商品を賢く購入できるようになるはずです。

■3章のポイント 
需要と供給で価格は決まらない

 3章では価格についてのマーケティング戦略が網羅されています。返金保証、〇〇日間無料、初回は〇〇円などさまざまな価格に関するマーケティングが掲載されています。
 中でも印象的だったのは、冒頭で申し上げたリチャード・セイラ―教授による取引効用異論の話です。本文中には下記のように説明があります。

“取引効用理論とは、モノ・サービスの売買からもたらされる満足度(全体効用)は、製品自体から得られる価値(獲得効用)と、お得に買えたかを評価した「取引効用」の和になっています。”

 価格とは市場の需要と供給によって決まるというのが経済学の基本ですが、行動経済学、つまり現実社会ではそういったことで価格が決まらないことがあるということを表した理論といえるでしょう。

■4章のポイント 
広告の心理的効果とは

 旅行に行ったときに立ち寄る駅や空港、高速道路のサービスエリア。かならず目にするのが地域限定のギフトではありませんか。そういったギフトの地域限定だけではなく、スーパーやレストラン、近くのコンビニ、ファッションアイテムでも限定ものは数多くありますよね。これは人と被らない、今しか買えないといった一種の心理的効果を狙ったものですが、こと限定でもおとり戦略として集客のために使われることがあります。
 数量限定と販売したが実際にはすでになく、他の商品を売るためのおとりだったりすることもあるので注意が必要です。アメリではそういった数量限定販売が禁止されていますが、日本では大なり小なり手を変え品を変えて同様のことが起きているのが現実といえるでしょう。
 いくら限定に目がくらむとはいえ、気をつけないとそれこそ判断を誤った購入につながりかねません。自分がどのようなバイアスにかかっていないか、購入する際は一度冷静になることが必要かもしれません。

■5章のポイント 
ほんとにそれを買いますか?

 5章では、商品を購入する上での基本的知識がわかります。企業が価格競争を避けるための戦略やオークション、ダチョウ俱楽部のかの有名な「じゃあ俺も」のギャグ、SNSで話題になることが多いステルスマーケティングなど身近な例についての心理的効果の解説が続きます。
 この章は、とても事例がわかりやすいので、マーケティングについて初心者の方はこの章から読むことをおすすめします。よりマーケティングの面白さを理解できるだけではなく、営業テクニックついての記述がありますので、ビジネスパーソンにとって役に立ち情報が書かれています。

■6章のポイント 
その買い物なにを根拠に購入しましたか?

 確立と統計といわれると数字の羅列で苦手と思う人は多いのではないでしょうか。しかしマーケターにとっては、ロジカルに分析データとしても貴重なものであり、そして消費者の行動を知るうえで欠かないものです。
 マーケティングで研究されている消費者行動に、二重過程理論があります。さきほどのマクドナルドでのメニューを選択する際にも関連する理論で、人は動機によって選択肢を直観か熟慮で使い分けていることを言います。
 ほかにも空腹時やストレスが起因し衝動買いを起こしてしまいやすいといったムード(気分)における注意点など、マーケターによる分析や戦略を消費者に対して注記喚起を促す内容があります。
 ある意味マーケターにとってはネタばらしのような解説が続いていますが、自分が商品をどのように選び、どのような時に購入するのかを自身で分析できるようになることは、情報が氾濫する中でもなぜ購入しようとするかを考えることは、賢い選択が増えて支出が減っていくことにつながるはずです。

■7章のポイント 
顧客満足度を高める企業の施策

 企業は顧客を取り込むために、顧客満足度を高めるさまざまな施策を行っています。心理的なことや顧客の行動に関することが阿部先生研究室でのアンケート調査などを紹介しながらわかりやすく書かれていますので、一読の価値があります。
 ほかにも現金値引きとポイント還元に関することなど、身近な事例があります。現金値引きよりもポイント付与のほうが還元率について低くなるにもかかわらずポイント付与を選んでしまうかの心理的側面を丁寧に解説されています。
 現在ポイントで顧客満足度を高める施策は多くの企業が取り入れていますが、これはデータ分析をするだけではなく、顧客の心理的効果にも関係しているのです。

■8章のポイント 
成功事例は確証バイアスの温床?

 8章では、行動経済学的側面からのマーケティングのポイントが解説されています。グループインタビューでの注意点やアンケート調査の注意点などマーケターにとってはようやくといったところです。企業による「自前主義のバイアスや勝者の呪い」などは、マーケターはもとより企業のトップたちにとっては戒めの言葉が多くあります。
 成功例は、往々にして、成功という結果までのプロセスを調査・分析し後付けしたものがほとんどです。結果によって評価自体が変わってしまうことは往々にしてあるといえるのではないでしょうか。
 とかくビジネスパーソンやマーケターは、成功している事例にはついつい魅かれてしまうものです。 同じことをすれば成功に近づくという確証バイアスによって考えてしまうことが多くあるのではないでしょうか。
主観的なデータだけに頼らずに業績から離れた項目や客観的に判断をすることが大切ですし複合的に判断することも忘れてはいけません。

■まとめ

 最後にまとめです。
・賢い商品の選択ができるようになる
・客観的な判断をくだすためのヒントがたくさん
・成功事例に惑わされないようになる

 巻末には、本書で登場したマーケティングや行動経済学や心理学などの用語がわかりやすい解説とともに数多くまとめてありますので、マーケティング初心者にとっては、より勉強になることでしょう。
 タイトルにはヤバいという言葉がありますが、悪用禁止というような内容ではなく、消費者にとっては、商品購入の際に賢い選択ができるようになりますし、ビジネスパーソンやマーケターにとっては、知らず知らずに陥っているバイアスに対して客観的に判断することに立ち返られてくれる手元に置いておきたくなる良書でした。

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