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目的地を定めない旅〜合宿へ〜【前編】

ロゴ制作の一環として、私たちは「徒歩旅行"Wayfaring"」に出ることにしました。目的地は静岡県伊東市にある宇佐美。いちおう「目的地」とは言っていますが、この場所さえも、地図を眺めながら「なんとなく」気になって決めた行き先だったのでした。
ここからはメッシュワーク水上による、フィールドノート的な記録です。

一日目(2021年9月某日)

11時50分頃、そろそろお腹が減ってきたが、宇佐美駅にたどり着いた。駅前にはロータリーもあり、思ったよりも立派な駅だ。昔は、あるいは一月前は、海水浴客で賑わっていたのかもしれない。
今までの人生では、熱海や下田には来たことがあったが、その間に数多くある、伊豆半島の街には来たことがなかった。比嘉夏子さん、高橋真美さん、私(水上優)の3人とも行ったことのない土地で、歩き回れる程度のサイズの街という理由で選んだ町、宇佐美。どんな町なんだろう。

まずは腹ごしらえをしたいと思い、駅前の商店街を歩いてみる。
駅前に定食屋さんがあったが、閉まっている?ようだ。
「そこは今日はやってないよ!」タクシーの運転手と思われる制服制帽のおじさんが声をかけてくれる。

私たちはもう少し、屋根の付いたアーケードを歩いてみる。
今日は小雨が降り、肌寒い。

比嘉さんを先頭に、高橋さん、私の順で歩く。しんがりを勤めながら、ついついGoogle Mapでランチに良さそうな店を探してしまう。スーパーの近くにある、国道沿いの寿司屋があるな。良さそうで、今日営業してそうだ。二人に言おうかな。いや、Wayfaringするために来たのに、マップに従って目的地に向かっていては、だめだろう。お腹は減ったがもう少し、成り行きに身を任せよう…。そんなことを思いながらスマホをポケットにしまい、二人についていく。

ふと、商店街の中にオープンしているお店があった。手芸屋さんだろうか?
よく見ると、ホコリがかぶったビニールの下に、花火が並べられている。

すーっと入っていく比嘉さん。
毛糸の棚の写真を撮るまみさん。
花火の種類と値段を見る私。

お店には60~70代くらい?のおばあさんがいらっしゃった。私たちは花火を目前に、コロナ禍で失われた夏を取り戻せるような気がして、盛り上がった。花火をいくつか購入。

商店街の現状などの世間話をしつつ、ランチにオススメの店を聞くと、まず駅前の定食屋さんを教えてくれた。そこが閉まっていた事を伝えると、別の寿司屋を教えてくれた。

その寿司屋は、商店街を少し戻り、スーパーの方に向かい、国道沿いにあるという。そして名前は、、、そう、私が二人に隠れて調べていた寿司屋だったのだ。

おお、結局そこにたどり着くのか…なんと奇遇なことなんだ。と思いつつ「行ってみましょう!」と声を掛けあった。


寿司屋に向かう途中、ひときわ立派なお店が目に入る
「ファッションプラザ ひらやま」
低層の住宅が多い中に、二階建て、ガラス張りで大きな看板をつけたお店がとても目立っている。
私の地元にもこういう洋品店あったな…小学生が制服を買いに来たりするんだろうかと思ったりもする。

国道沿いに出ると、今度はショッキングピンクの建物が目に入る。
見ないようにしても、どうしても目に入ってしまう存在感だ。

小雨が降っており、どんよりしていて、周りは晩夏の緑と控えめな家の茶色が広がっている中で、ひときわ眩しピンクが目に入る。
3人の話題にせざるをえない。
「あれはなんですかね」
「なんでしょうね」
「お客様に最高の。。。なんとか。。。を提供しているらしいです。重要な部分がちょうど見えない」
「それにしても、すごいピンクですね」

最高の…

そんなことを話しながら歩いていると、手芸屋さんにおすすめされた寿司屋にたどり着いた。

そこで、それぞれが別のメニューを頂き、お腹を満たす。
確か、まみさんは地魚の握りのようなものを召し上がっていたと思う。
私はランチ寿司を、比嘉さんは海鮮丼を食べた。とても美味しかった。

海鮮丼

その後、寿司屋からほど近いスーパーに向かった。

地元のスーパーは必ず行きましょう

生活に密接にかかわる場所、例えばスーパーには生活や土地、環境の重要な断片があったりする。

やはり伊豆らしく、しらすなどが少しおいてあったりもした。しかし、マグロなど全国流通していそうな魚の方が多い。天気が悪いから漁にでていないのかな?などと思いながらも、外に出た。


夕方には、実は不動産屋さんとの約束があったのだ。
比嘉さんは移住先を検討しており、「徒歩旅行」の合間に、不動産内見をすることとなっていた。

不動産屋さんはスーパーの裏側にあったのだが、最初はそうとは気が付かず通り過ぎていた。なぜなら、見た目がカフェのようなのである。

実際にソフトクリームなども販売しており、観光客が入りやすくしているのかもしれない。中には常連?近所の人?のような方が不動産屋さんと話し込んでいる。

いい感じだ。
人によっては入りにくいと思うのかも知れないが、その空間にはとてもいい雰囲気、そうグッドバイブスが流れていた。

「メールで連絡した比嘉です」

不動産屋の方がとても優しく、さも当然のように私たち三人を窓際のテーブル席に案内する。女性2名と男性1名で、不動産の内見をするのは普通のことなんだろうか?

その後いくつか物件情報を見せていただき、一度見てみましょうかと言うことになり、女性の不動産会社社員の方の運転で山の上の方にある、物件へ向かう。

セダンの車で、後部座席はふかふかだった。

この辺りの買い物事情、少し出かける時は沼津か小田原に出ることなどを解説しながら、車は坂を登っていく。

かなり急だ。
宇佐美は海に面しているが、平地が少なく、少し離れると斜面に張り付くように住宅が立っている。

私たちが訪れた1件目の物件も斜面に立っていた。

雨で滑りそうな小道を進むと、景色が開ける。
おお、海が見える。

物件の中に案内していただく。
前の持ち主の情報や、内装工事の状況など、親身にさまざまな情報を教えていただく。

その後、麓の物件なども2〜3物件内見させていただいたのちに、なんと宿泊先まで送ってくださった。
小雨が降っているので大変ありがたく、温かみを感じた。


宿泊先はAirbnb経由で借りた一軒家だ。
ホストの方と交流できたり、情報交換できたりするのかな?と淡い期待を持っていたが、キーボックスに鍵が入っており、それを使ってセルフサービスで入室する方式だった。

入ってみると、田舎の親戚の家に来た気分になるお家だった。
荷物をおろし、一通り家の中をみて回ったあとは、朝食を買いに先ほど訪れたスーパーへ向かい、その後、宿泊先に近かった中華料理店で夕食を食べた。

intaxと3人の足

夕食後、1日目の振り返りをダイニングルームで行った。
持参した、intaxと呼ばれるインスタントカメラのようなプリンターで、今日撮影した写真を印刷してみた。

印刷してみると、三人とも全く異なる視点を持っていることが視覚化し大変興味深かった。

まず、比嘉さんはほとんど写真を撮影していなかった。
「フィールドワークするとき、普段も数多く写真を取ったりメモしたりをするわけじゃないんですよね」

高橋さんは「色」に着目する写真が多かった。色とりどりの毛糸、光の差し込む家の中のレトロな照明、ビビットな壁の色。

私は人に関わる部分をよく写していた。内見する比嘉さん、写真を撮る高橋さん、たくさんの人が来るであろう運動場。

撮影は2日目も継続し、2日目の最後に見直すことを決定した。

その後、1日目の反省と2日目の方針を話し合った。
1日目の反省として、「徒歩旅行」的な動きが少なかったことが挙げられた。

物件の内見は全て車で回っており、別の物件から別の物件へ向かう最短最速の移動をしてしまっていた。また、駅前商店街、スーパーの周りしか歩いていないため、宇佐美の全体像が見えていないことを確認した。

2日目はもっと歩いてみましょう。という方針を決め、花火をして、就寝した。

左:水上撮影「比嘉さんと商店街」
右上:高橋撮影「毛糸」
右下:比嘉撮影「うさ みほ いく えん」

(メッシュワーク・水上)


つづき
第4回:後編


メッシュワークのロゴデザイン連載一覧

第1回(メッシュワーク・比嘉)

第2回(デザイナー・高橋)

第3、4回(メッシュワーク・水上)

第5回(デザイナー・高橋)


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