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初めてのSDGs(リサイクル)

うちの祖父は農家だった。
60歳で退職するまでは会社員だったらしいが、私が物心着いた頃にはすでに専業農家として生活していた。

とは言ってもそんな大規模なものではなく、親戚一同がその年食べる分の米と野菜を作っていた感じだった。
祖父には子供が5人おり、孫もそれなりに多かったので、皆の食料を祖母と2人で育てるのにはとても手が足らなかったらしい。

特に田植えや収穫の時期には親戚中が集まって手伝いをした。もちろん孫たちもである。孫たちはあまり役には立たない。トラクターでは植えることの出来ない田んぼの端の方に苗をちょこちょこ植えたり、苗の入ったケースを運ぶくらいのものである。

でも私はこの田んぼの仕事が好きで声がかかると必ず行った。なぜなら仕事が終わった後に焼肉が振る舞われるからである。

そして焼肉と同じくらいに楽しみなのが、川で冷やしたラムネだった。この時だけは炭酸飲料を飲む事を許される。何故だか我が家では炭酸飲料は禁止され、日頃飲み物と言えば牛乳と麦茶だった。なので人一倍ラムネに対しての思い入れも強かった。

ラムネの瓶の中のビー玉

ラムネを飲み終わった後、空瓶をしげしげと眺めていると、中にあるビー玉が欲しくなった。
私は祖父の側に行き、ビー玉が欲しいので取り出して欲しいと言った。
田んぼの側には岩もあり、瓶を壊してビー玉を取り出す事はそんなに難しくないと思ったからだ。
だが祖父は首を横に振った。
「この瓶は飲み終わっても洗えば何回でも使えるだろ?でもビー玉が欲しいからって壊したらもう使えなくなる」

私は全くそんな事を考えていなかった。瓶を再利用するという発想さえなかった。飲み終わった瓶は捨てる物だと思っていたのだ。

祖父があの時断ってくれてよかったと思う。もし瓶を割ってビー玉を手に入れていたら、それで満足して私の記憶の中にはきっとこの思い出も残っていない。断られたからこそ欲しかったビー玉の思い出も、祖父との思い出も忘れずにいるのかなと思う。

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