はるこはとても散歩が好きな犬だった。散歩という言葉を聞くだけで、後ろ足でピョーン、ビョーンと高く跳ね上がり喜んだ。どちらかと言うとご飯より好きだったかもしれない。だから毎日の散歩は欠かせなかった。もちろん雨の日もである。はるこは外飼いの犬だったが、うんちを庭ではしないため、雨の日でも傘をさし、長靴を履いて散歩に行かざるを得なかった。 私は散歩の時間が好きだった。特に雨の日は母と二人で散歩に行くのが恒例になっていて、学校であったことなどを話しながら散歩する時間はそれなりに楽し
うちの祖父は農家だった。 60歳で退職するまでは会社員だったらしいが、私が物心着いた頃にはすでに専業農家として生活していた。 とは言ってもそんな大規模なものではなく、親戚一同がその年食べる分の米と野菜を作っていた感じだった。 祖父には子供が5人おり、孫もそれなりに多かったので、皆の食料を祖母と2人で育てるのにはとても手が足らなかったらしい。 特に田植えや収穫の時期には親戚中が集まって手伝いをした。もちろん孫たちもである。孫たちはあまり役には立たない。トラクターでは植えるこ
「お母さんの家の主はね‥」 母はニヤニヤしながら話し始めた。 「蛇だったんだよ」 「へ、蛇？」 「そう。昔の家は柱がむき出しでね。2階の天井の梁に蛇が巻き付いてて、いつも家族を見守ってくれてたんだよ」 お母さん、それって捕食するために狙われてたんじゃ‥。 母曰く、蛇は結構大きな青大将だったらしく、その長さは1.5m位あったらしい。 そしてその主はいつも天井の梁にいるわけではなく、日中はどこかに行っていて、気がつくとそこにいるという感じだったらしい。 うちの主（蜘蛛）と
私達家族は、私が5歳の頃まで賃貸のアパートで暮らしていたが、私が小学校に入学するタイミングで、一軒家を建てて住む事になった。 そうして新しい家に家族四人、ウキウキと暮らしていたが、ある時天井の片隅に子供の掌ほどある大きな黒い蜘蛛がこちらを窺うように貼り付いているのを見つけた。 私はおののいて母に「く、蜘蛛がおる〜」と訴えたが、母は「ああ、あれは主（ぬし）で家を守ってくれとるんよ」と全く動じない。「お母さんは怖くないの？」と聞くが、「お母さんが子供の頃も主いたしね。そういう
先日、昭和を紹介するTV番組でゲストに南野陽子さんが出演して、ドラマ「スケバン刑事II」の撮影当時のお話をされていた。 知らない方のためにざっくりと説明すると、スケバン刑事シリーズはIからIIIまであり、セーラー服姿の女子高生が特命刑事となり、仲間達と助け合いながら悪の組織と闘うというストーリーである。 その中で自分の生い立ちに向き合ったり、悪の組織の実態が明かされていくなど、なかなかに重厚なストーリーで、シリーズのIは斉藤由貴さん、IIは南野陽子さん、IIIは三姉妹で浅
先日職場で子供時代のおやつの話になった。 私の母は結構手作りのおやつを作ってくれた方だと思うが、今思うと「え〜？」というおやつもあった。その中の一つが食パンのミミを揚げて砂糖をまぶしたものだ。うちが豊かではない家庭だからかもと思ったが、職場のお嬢さん育ちの先輩も「食べた、食べた」と言っていたので昭和のおやつとしてはスタンダードだったのかもしれない。 このパンの耳は確かスーパーやパン屋で一袋20円位で売られていたもので、これを母が作ると「ああ、これね‥」と思いながら無言で食
はるこは私が小学3年生の時に飼い始めた犬だ。 学校からの帰り道、柴犬と二匹の子犬が庭で遊んでいるお宅を見つけ、私と友達はたまらず庭にいたおばさんに声をかけた。 子犬は一匹がポメラニアンのような容姿をしており、もう一匹はビーグルのように胴長で体に茶色の斑点があった。 おばさん曰く、二匹の子犬は兄弟で、母親犬はそばにいた柴犬の雑種、父親は分からないとの事。昭和の頃は飼い犬の避妊手術も現在ほど行われていなかったため、こういう事も度々あったようである。 兄弟の容姿の違いは不思議
昭和生まれ(1970年代)の女子です。現在50代。 コロナの時に実家に帰れないのが辛くて、子供時代の事を思い出してちょこちょこメモしていました。 今回記録がてらnoteで書いていこうと思います。 絵は練習中で絵柄が安定してませんが、上手くなるのを待っていたらお迎えが来そうなので、恥ずかしいですが出しちゃいます。 毎回顔が違いますが、笑って頂ければ幸いです。
