【ピリカ文庫】大寒を過ぎて
「そろそろいこうよ、初詣」
と妻が言う。一月の下旬であった。哲生はまだ部屋になじまないカレンダーを眺めて
「今年もそういう時期になったか」
背伸びをしながら独り言のような声をだす。妻は続ける。
「そうだ、今週末の天気、どう?」
「傘は要らないみたいだな」
一月末の初詣。それは世間的に初詣とは言わないのだろうが、年が改まって初めて神社へ詣でるのだから、そうといえなくもないのだった。
哲生も妻も昔から人混みがきらいで、年が変わる瞬間にわざわざ神社へ行こうとは思わなかった。成