著者の人柄そのまま、丁寧に優しくパソコンの使い方を説明してくれる~高橋聡『翻訳者のための超時短パソコンスキル大全
「大全」だから、辞書のように引く本である。これは大前提。
しかし、日本翻訳連盟副会長や複数の翻訳学校講師を務める著者はとにかく顔が広い。彼と直接会ったことのある翻訳関係者は、生徒さんを入れれば数千人はくだらないだろう。そういう「知り合い」やブログの読者ならば、著者の人柄を思い浮かべて読むと楽しい。あの独特の語り口が随所に出てくる。
CHAPTER 06 Excelをどう使うか
「コワがる」とカタカナを使うあたり、著者の人柄がにじみ出ている。「Excelの関数? いやいやいや、関数なんて無理、無理」というわたしのような者にも、「大丈夫、あなたにもできる」と語りかけてくれる。こんなにも優しい本がこれまであっただろうか。
わたしはときどき関数を使うが、しょっちゅう必要というわけではないのですぐ忘れてしまう。使うときにはその都度あちこちの解説サイトを漁っていた。一番わかりやすそうなページを印刷し、それを1行ずつ見ながら操作していく。だがこの本と一緒なら、他のサイトを見ることなく、最低限の関数が使えるようになりそう。
Excelの章からもうひとつ見てみよう。
あるあるあるある……。効率化を狙うのと腱鞘炎を避けるため、マウスをあまり使わないようにしているわたしだが、たまにダブルクリックしてしまうことがある。そんなとき、ファイルの最後や最初に移動してしまって「なんでだよっ! だ~か~らExcelはっ!」とひとり画面に向かって毒づいたりしているのだ。
その理由がいま本書を読んでわかった。こんな風に、単なる操作だけではなく、誤操作した場合の理由などをていねいに説明してあるのも本書の特徴、いや著者の優しさである。
CHAPTER 05 Wordをどう使うか
勝手に「本書の真骨頂」と思っているのがWordの章、ワイルドカードの項である。
このことは知っていた。「コンピュータ」と「コンピューター」が混在するファイルで、すべて長音を削って「コンピュータ」としたいときは、検索する文字列に「コンピュータ[!ー]」を入れればよいはずであることも。
だがそうすると、「コンピューター」の次の文字が消えてしまったりする。「コンピューターがほしい」が「コンピュータほしい」になるというのは、まさに本書のとおりだ。
ではどうすればよいのか。大事なのはここである。
本書では、この問題も扱ってくれている。「コンピューター」を「コンピュータ」と「ー(長音符号)」の2つのパーツに分けて、それぞれを半角カッコで囲むのである。
このようにする。そして「置換後の文字列」は、2つ目のパーツを¥2で表すことができるのだという。
こうするとよいと本書は教えてくれている。ここのところ、わかる人にとっては簡単だろうが、わたしのようにそうでない者はなかなか理解できない。実際、これまで正規表現のムックなど買って、それを見ながら操作してもぜーんぜんダメだった。
「コンピュータ」を「コンピューター」にするのは、Wordの置換機能を2回使っていた。「コンピュータ」を「コンピューター」に全置換してから、「コンピューターー」を「コンピューター」に全置換していた。つまり手順が2つあるので面倒だった。
そんなわたしに愛の手を差し伸べてくれたのが本書である。これならわたしでもできそう。手順ひとつで置換できるようになったというわけで、ありがたい限りである。
最後に、著者へお願い。わたしは今年パソコンを買おうと思っています。いま買うならどんなスペックがよいか、またはどの当たりの製品が推しなのか、ぜひ教えてもらえないでしょうか……。
今日の久松:紅白の花をつけた1本の桃の木を発見。このような咲き方を「源平咲き」というと知った。
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