利益と理想。出世か独立。仕事と家庭。人材紹介が舞台の映画をみた。
Amazonプライムで「ファミリー・マン ある父の決断」をみた。
先日釣った「ガンギエイ」を唐揚げにして食べていたら、思わず最後のほうで涙がこぼれて、のどを通らなくなってしまったのでレビューを書きたい。
話の筋とは関係ないけど、こちらがガンギエイ氏。尖っているね。
この作品は、ぜひ働き盛りの人の親にみてもらいたい。親じゃなくても、仕事と家庭や家族についての優先順位付けがあべこべになって大切なものを失いつつある人にも見てほしい。
それと、舞台がヘッドハンティング企業なだけに、人材紹介企業の人にもぜひ見てもらいたい。
人材紹介ビジネスは、企業と人をつなぐことで収益を得るもので、ときに人が「モノ」「数字」そのものとして取り扱われがちだ。
この映画はそんなところも背景として描かれている。
主人公のデイン(ジェラルド・バトラー)は米国の人材紹介会社(ヘッドハンティング)企業のマネジメントで、数人のチームを率いている。
話の最初で、会社の代表であるエド・ブラックリッジ(ウィレム・デフォー)から部長職(GMかディレクターとか?)についての競争の話があるから、たぶん、デインはマネージャーあたりなんだろう。
ちなみに、この会社は「ブラックリッジ」という名前で、きっとエドが自ら立ち上げた会社だと思われる。欧米系の人材ビジネス企業はこの創業者の名前がついているところがチラホラある。
日本発のエージェントでなんとなくビジネスの先端感を出したいから、海外の大学だったりそれっぽい名前をつけているエージェントもあるんだけど、それはそれでまー仕方ない。
人材ビジネスを知っている人はわかるだろうが、無形のサービスを取り扱うという点で、如何に企業顧客の採用ニーズをくみ取り、求職者の希望とすり合わせて、口説くというスキルが求められる。
「巧言令色鮮し仁」
という言葉があるが、巧言令色でないとやっていけない職業でもある。営業職全般がそうだが、とくに人材ビジネスはそうだ。
「至誠天に通ず」
という言葉もあるけども、誠実だけでは、あっという間に蹴落とされてしまう。
主人公のデインは、そのあたりをよく知っていて、成果を上げるために、限りなく犯罪に近い行為までやってのけるのだが、それは家族のためと考えている。
家族をなに不自由なく養うためには自分が勝負に勝つことが重要で、人材紹介ビジネスであれば、それは、入社決定。
だから、その障害はなんとしてでもつぶしたい。そこで、デインはクロージングにあたっての「ある超必殺技」をもっている。
この必殺技は明らかに道徳に反するし、ビジネスマナー違反という領域を超えているんだけど、それは映画を見てびっくりしてほしい。そんなことあり得ないだろということなんだけど、人材ビジネスでは類することがよく行われている。
映画は「ファミリー・マン」というタイトル通り、家族がテーマだ。
殺気を帯びて四六時中、ビジネス、決定、紹介料のことを考えているデインは大切な家族を失いかける。だけど、彼の妻がとても賢く強い人なので、本当に尊敬する。
人材紹介ビジネスという背景があるが、ビジネスに傾倒しすぎて、なにもかも失いそうになるというのは、どのビジネスマン、とくに男性にとっては共通項なのだろう。
「目的のためには手段を選ばない」
「そうしないと厳しいヘッドハンティングの世界では生き残れない」
「出世できない(出世したい)」
こういったことにデインは突き動かされる。
虚偽報告などお手の物である。これは、営業会社ではよくあることで、人材ビジネス企業でもよくある。
物語は、社内の別チームとの成績争い(勝てば責任者になれる!)でクライマックスを迎える。
ぎりぎりのレースをしているときに、一人の高齢求職者が内定ラインに乗る。
が、採用担当者(というか米国なので現場の上司)は、その求職者の能力や誠実さは十分に理解しているが、年齢と紹介料の存在で渋らざるを得ない。
そこで、デインはある決断を迫られる・・・。
この映画では、ウィレム・デフォーが演じるエドがかなり冷徹な存在として描かれるが、ラストがいい。
何を隠そう、わたしはプラトーンの時代からウィレム・デフォーのファンである。やっぱりウィレム・デフォーのあの笑いはいい。プラトーンのときも、いい笑顔をしていたよな。
とにかく、ラストがよかった。終盤の展開が速すぎるかもだけど。
社長のエドは、冒頭で「退職後の競合禁止云々契約」についてデインと同僚を脅すように強く語る。
人材紹介会社に所属するひとのキャリアの道としては以下の選択肢がある。
1、人材紹介会社で出世する
2、ほかの人材紹介会社に転職する(登録型紹介、ヘッドハンティング、再就職支援)
3、独立して人材紹介会社をやる
4、採用など人事側にいく
5、ぜんぜんちがうことをやる
このなかで、3の選択肢を選ぶ人もいるのだが、だいたいの企業に競合としての独立や転職を禁止する契約みたいなのがある。
そんなものは、憲法の職業選択の自由が上位にあるので、実際に訴訟すれば負けないとは思うんだけども、精神的に退職者を追い詰めたり、一定数、人材紹介会社としての独立などを防ぐ効力があったりする。
わたしの知り合いには人材紹介会社のひとが多いのだが、何人かが、会社をやめて独立するときに、このあたりはすごい気にしていたのをよく覚えている。法的に問題なくても、嫌がらせをされるのが怖いとかなんとか。
これは想像だが、もしかして、エドも、どっかの人材紹介会社から独立したのかもなと思ったりする。映画を全部みるとうっすらと見えてきたり・・・。
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