
メルカリロゴリニューアルの裏側、見せます。
こんにちは。
メルカリデザインブログです。
メルカリは2018年10月31日にロゴのリニューアルを行いました。
リニューアル後のロゴは、プレスキットよりダウンロードできます。
ロゴのリニューアルを起点としたリブランディングは、社内に新設されたCXO Design Team主導による、社内外を巻き込んだ大きなプロジェクトです。
企業の大々的なリブランディングは頻繁に行われるものではありません。
だからこそ、その舞台裏や背景、補助線となるような情報を広く共有し、デザイン組織のノウハウを伝えていきたいと考えています。
デザインブログでは、複数回に分けて取り上げます。
目次
・なぜ、ロゴを変えたのか
・メルカリのこれからを表現する
・汎用性の高いロゴを目指す
・リブランディングを行うチーム
・実際の制作プロセス
・イベント告知
なぜ、ロゴを変えたのか
リブランディングにおいてロゴのリニューアルは大きな比重を占めるトピック。コミュニケーション設計の支柱になります。
また、ロゴは企業とサービスの顔だからこそ、ミッションやサービス内容と密接に関係しています。
そのため、ロゴの変更にはさまざまなコストがかかる上、ありとあらゆるチェック項目を通過しなくてはなりません。それでも変更に踏み切る目的は、整理すると二つです。
・メルカリのこれからを表現する(思想的なアップデート)
・汎用性の高いロゴを目指す(テクニカルなアップデート)
それぞれについてご説明します。
メルカリのこれからを表現する
メルカリは、「フリマアプリ」として広くご利用いただいています。日進月歩でアップデートを続けていて、それは今後も変わりません。
CXO Design Teamは、中長期的にフリマという括りを超えるオープンなプラットフォームを目指すという目標と向き合っています。
「フリマアプリから、より広い役割を持つプラットフォームを目指す」
この思想を表現する新しいロゴとデザインフォーマットを作ることが一つ目の大きな目的です。
汎用性の高いロゴを目指す
もう一つの目的が、ロゴの汎用性を高めること。テクニカルなアップデートです。
前提として、ロゴはブランド認知の記号です。
今後、人々の日常の中に当たり前に存在するサービスを目指すため、速く、適切に理解してもらえるロゴが必要と考えました。
また、ロゴはアプリだけではなく様々なメディアで使用されるものです。テレビやインターネット、紙媒体や屋外など、様々な環境下にフィットするよう、単色表現やカラー展開も想定しました。
もちろん、これまでメルカリを知ってくださっている方が「メルカリだ!」と一目でわかることも大切にしています。
以下に、ロゴの考え方のポイントを整理します。
・フリマからプラットフォームへ。より広い意味合いを表現する
・様々なメディア上で機能する汎用性の高さ
・よりシンプルで認識しやすいもの
・単色やカラーバリエーションで表現可能
・これまでの認知を生かす
これらを踏まえ、具体的にどんなチームで、どんな手順・考え方で行ってきたのでしょうか。
リブランディングを行うチーム
リブランディングチームは以下のような構成です。

メルカリ内に新設されたCXO Design Teamが中心となり、デザイン・イノベーション・ファームであるTakram、クリエイティブラボのPARTY NEW YORKと共に取り組んできました。
背景には、メルカリという組織の急激な成長があります。全社のブランディングとプロダクトの成長を足並みを揃えて実現していくために、デザイン組織の整備が必要とされました。そこで社内に新設されたのがCXO Design Teamです。
リブランディングのスタート地点は、「ミッション」について考えること。
「フリマという便利なサービスを中心に、メルカリはこれからどんな未来を実現していきたいのか?」
中長期的なミッションを整理するところからはじめ、それをデザインに落とし込むために下記のようなキーワードを抽出しました。

デザインのトーン&マナーを共有しやすいキーワードに落とし込みながら進めます。
また、リニューアルサイトの動画制作を含む、対外的なコミュニケーションプランの立案・クリエイティブの制作は、クリエイティブラボのPARTY NEW YORKと社内のデザインチームがタッグを組み実施しました。
実際の制作プロセス
実際にどのような手順でロゴマークを決定していったのか、その過程をお見せします。まずは、たくさんのボツ案から。

前述のポイントに沿って、それぞれの項目に強弱をつけながら、チームメンバーが手を動かしてたくさんのロゴを考えました。
その数、数百個! ここで公開しているものはごく一部です。
一つひとつ見ていくと、発想の痕跡がイメージしていただけるのではないでしょうか。
この中から精査を重ね、二つのロゴマークに絞り込みました。

これら2つのロゴマーク(四角形・六角形)に絞るにあたって、喧々諤々の議論がなされました。議論の記録は以下の通り。
サマリー
現在のロゴマークからのリデザイン(洗練)になるという前提で、六角形/四角形という2方向に決定し、それぞれのPros/Consを抽出して比較。
[四角形]

Pros
+ 正面視にすることで「m」をより強く印象付けることができる
+ より洗練され落ち着いた大人な印象、オープン&フェアなイメージ
+ シンプルなデザインで長く使え、アニメーションなど取り回しがしやすい
Cons
- メルカリという認知が多少落ちる可能性
- ボックスからの進化がパッと見はわかりづらい(アニメーションで補完は可能)
[六角形]

Pros
+ 既存ロゴマークからのジャンプは大きくないため、認知の再獲得のコストが低い想定
+ これまでのメルカリ同様に、ワクワク/やんちゃな感じを醸し出せる
+特徴的なmで他のロゴと比較したときに特徴がでやすい
Cons
- 斜めのmの取り回しが少しむずかしい(あえての特徴と考えるのはあり)
- 立体ベースのためアニメーションなどの展開がしづらい
カラーについて
形状と同時に、カラーについても議論を進めます。
サマリー
認知獲得にコストがかかる観点から、現状カラー(赤ベース)を引き続き利用するのがよい。
ただし、現在のカラー(#F9401C)はオレンジに近く、これを引き続き使うかは検討が必要。赤に寄せていくことで、お客様のメルカリに対する印象に近づける、印刷時に再現性が高くできるなどの観点からより赤の方向に変える必要あり。

#F9401C (旧ロゴと同色)
Pros
+ 現在のものと同色のため認知獲得コストが低い
Cons
- 人の印象として「メルカリ=赤」と思われるため、印刷した際に印象が異なる可能性がある
- 印刷時の再現が難しく、丁寧に色校正および色指定が必要
- 少し古臭い印象
#FF2011 (ほぼ赤)← こちらがおすすめ
Pros
+ はっきりした赤で印刷でずれがでにくい
+ 他社に近いカラーがない
+ ほぼ赤で、メルカリ=赤の認知を獲得しやすい
Cons
- 色と形状変更による認知獲得コストが多少ある可能性
#FF0036 (ピンクよりの赤)
Pros
+ はっきりした赤で印刷でずれがでにくい
+ 発色がきれいでクリーンな印象
Cons
- 他社で近い色がある
- 色の変更による認知獲得コストが多少ある可能性
テキストにすると短いですが、これらを比較・検討し、決定するのはなかなか骨の折れる作業。
ロゴの変更には、さまざまな観点からの検討が欠かせません。
会長の山田進太郎含む経営メンバーも巻き込んで、泥臭い議論を重ねて決定していきました。ここに至るまで、数ヶ月単位の時間がかかっています・・・。
そして決定したのがこちら。コードネームは六角形を意味する「HEX LOGO」です。


新旧を比較すると違いが明確になるのではないでしょうか。
既存のロゴをベースに、よりシンプルに。それが新しいロゴのデザイン意図です。(蓋が閉じたわけではないんですよ!)
ロゴタイプの細かいリファインプロセスに関しては、また改めて。
今回は「ロゴデザイン」にフォーカスしましたが、その裏側には戦略思考やデザインシンキング、コミュニケーションデザインなど、複数のメソッドが有機的に絡み合って成立しています。
リブランディングは点では捉えられない取り組み。今後もさまざまな切り口で継続的に発信してゆきます。
イベント告知
今回のロゴリニューアルを含めた、ブランディングやデザインをテーマにしたイベントを11月28日(水)に開催します。
デザインブログをご覧いただいているみなさまに、先行して情報を公開します。
場所:メルカリイベントスペース
住所:東京都港区六本木6-10-1(六本木ヒルズ森タワー18F)
料金:未定
詳細:企画中
現在企画を進めているので、詳細は改めて告知いたします。
メルカリが主催するデザインにまつわるイベントは、実は初めての試み。会場でお会いできることを楽しみにしています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
企画:CXO Design Team
編集・構成:メルカリ コピーライター 長嶋太陽