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ネガティブ思考を克服する!ANT(自動再生式悲観思考)退治法。

ADHDは極めてネガティブ思考になりやすい。もともと、不安を感じやすい脳を持っていることも関係していそうだし、とにかく小さなころから失敗が多く、自尊心が底辺まで落ちているからだともいえる。(参考:「まただ」・「やっぱり」。ネガティブなセルフトークをやめよう。

ADHDと診断されて、薬物療法を行うことになるとしても、自分に根付いてしまったネガティブ思考は簡単には変えられない。考え方を変えるには努力が必要だ。考える間もなく、自動的に表れてくるネガティブ思考を発見し、それをつぶす方法をご紹介したい。

ANT(自動再生式悲観思考)

これは、ADD(ADHD)治療の権威、エイメン博士の推奨している方法だ。ANT(英語:アリ)は「Automatic Negative Thoughts」の頭文字。日本語に無理やり訳せば「自動再生式悲観思考」だ。

エイメン博士は、頭の中に、自動的に湧いてくるネガティブな考えを、アリに例えている。とても分かりやすイメージだ。

「せっかくのお弁当にアリがたかり、ピクニックが台無しになる場面をイメージしてほしい。悲観思考は、どこからか入り込んでお弁当にたかるアリ(ANT)のようなもので、いつのまにか精神に入り込み、侵略する。アリも一匹くらいなら気にならないのと同じで、悲観思考も一つだけなら大した問題ではない。これが二つか三つになると、だんだんうっとうしくなってくる。10か20になると、本格的に実害が出てくる。」(P188)

これから、あげていくANTに気がついたなら、その場で握りつぶすこと。頭の中いっぱいにネガティブ思考を氾濫させるのを決して許さないことだ。頭の中のモヤモヤした考えは、書き出してみると良いという。そして、反論を書き加えていくと、反論することができるようになる。

多くのネガティブ思考には「根拠」がないものだ。書き出したANTは、アルバート・エリスのABC分析で反論するのがよさそう(参考:ネガティブな考え方を変える方法。エリスのABCDE理論(論理療法REBT)を実践してみよう。

9匹のANT

これから、エイメン博士による、ANTの分類を引用していく。認知行動療法でも使われる、歪んだ思考パターンと同じだ。でもアリが群がっていると思うと、よりいっそう、つぶしてやろう!という気になる。

1:「白黒アリ」
物事を白か黒か即断したがる思考。グレーゾーンを一切認めないので、柔軟ではない考えになりがち。事実をしっかり調べると、物事は白か黒かのように単純ではないことがほとんどだ。自分は〇〇だというイメージさえ、一面に過ぎない。良い面もあれば、悪い面もあり、美しい面もあれば、醜い面もあるのが人間だ。

2:「いつもアリ」
物事を究極的に一般化してしまう思考だ。悪いことが起きた時には「いつもこうだ」「毎回こうなんだ、失敗続きだ」なんて、思考をしてしまうと当然落ち込むことになるだろう。しかし、本当に「いつも」なのか?「いつと、いつと、いつなのか?」事実に即して書き出してみると、ずいぶん大げさな言い方をしている自分に気づけるかも。

3:「悪いことだらけアリ」
物事の良くない面ばかりを見ると、何もかも悪いことしか起こっていないように思えるかもしれない。自分も、相手も、この世界も、完全・完璧ではないので、悪いところを発見しようと思うと、いくらでも見つかるものだ。しかし、悪いところを見ていると、気分は暗くなる。どうせなら、良いところを発見しようとしたほうが、はるかに自分のためになる。

4:「最悪結果予想アリ」
考え得る限り最悪の結果を予想する思考だ。私の親族に、この手の人がいたけれど。とにかく、信じられないほどネガティブなのだ。ただ、そのように考えておくと期待通りいかなくてもがっかりしないからということだった。でも、本人の予想より物事が悪くなるようなことなど、ほとんどなかったようだ。そうであれば、最悪の予想を立てて、最悪の気分でいるのは、そんなに良い方法なのだろうか。

エイメン博士も取り上げているが「予言の自己成就」は、人は自分が考えている通りの結末を招いてしまうというものだ。誰かに嫌われていると思い込むと、自分からその人を避けるようになり、だんだん相手もそれを察知してその人を避けるようになり、やがて本当に嫌われてしまう。最悪のことを予想して、良い結果になることを望むことはできないのだ。

5:「読心アリ」
人の気持ちが完全にわかっているように感じる思考だ。まあ、これは、100%誤解だ。多くの人が、自分は感じやすく、人の気持ちが手に取るように分かると思い込んでいる。しかし、その予測は当たっていないことも多い。私は妻と結婚する前に、彼女の思考パターンはほとんど読み取っていると自負していたが、結婚してから、その考えが100%妄想だったことを実感した。

人は人の気持ちなんか分からないことを知るには、この本がおすすめだ。読心術の限界が分かっていると、この手のネガティブ思考に負けなくなる。

6:「気分アリ」
感情と事実を取り違えてしまう思考のことだ。人の感情はうそをつく。気分や感情ほどあてにならないものはない。1分単位で気分なんて変わるじゃないか。このことを実感したのは、ひどく体調が悪い日のことだ。睡眠不足がたたって、とにかくネガティブにしか物事を考えられなかった。その気分に引っ張られて、腹を立てたり、悲しくなったりしていたのだが、一晩寝てスッキリすると、そんな気分は消えてしまったのだ。

もしそうだとすると、気分や感情など、それほど真剣に取り上げるべきものではないことが分かるだろう。森田療法の「気分本位」・「行動本位」という考え方を学ぶと、このアリをつぶせる。(参考:森田療法と論理療法(REBT)【書評】あるがままに生きる 大原健士郎

7:「罪悪感アリ」
~しなければならない、~すべきだというマイルールを決めて、それに縛られて罪悪感を感じる思考だ。ストレスを感じている時、どんなマイルールに縛られているのかを探るだけで、柔軟な思考を手に入れることができる。(参考:柔軟ではない考え方。3つの「要求」(べき思考、ねばならならない思考)

8:「レッテルアリ」
自分や他人にレッテルを貼る思考だ。例えば、発達障害・ADHDやHSPというのも、レッテルに過ぎない。そのレッテルを貼った瞬間から、そのレッテルに合うようにしか考えなくなる。(参考:ラベルをつけることには意味がないけれど。ADHDでありHSPでもありIBSでもあった?自分考

これまでで一番悲しかったのは、幼いころにADHDと診断されたJ君だ。自由奔放で活発でユーモアがあり、とてもかわいい子だった。でもADHDだと診断されて、そのレッテルを受け入れたJ君は「病気だから」と、何をするにもレッテルの中に入り込むようになった。ほんとに残念だった。レッテルは、自分の特性を見つめる良いきっかけになることもあるけれど、思考を狭めることもあるので注意が必要だ。

9:「人のせいアリ」
自分のせいではなく、誰かのせいにして、責任転嫁する思考だ。この思考を持つようになると、いつも「被害者」になってしまう。自分の人生なのに、コントロールできないというのは大きなストレスになる。しかし、実際には、どんな状況でも、自分でコントロールできることはあるのだ。人のせいにしている時に、気が楽になるのは一瞬だけだ。

それなら、自分のせいだと受け止めて、自分にできることを探したほうがポジティブだ。文句ばかり言っていても何も始まらない。(参考:【書評】勝間式 超コントロール思考 勝間 和代

考え方の習慣を変えよう

人の思考パターンは、何度も何度も、同じ考え方をするから作られる。けものみちみたいなものだ。森林の中を何度も何度も通ればそこに道ができる。自動的にネガティブな思考をしてしまう人は、いつもネガティブなことを考える「習慣」が身についているというだけの話だ。習慣であれば、変えることができる。

最初は努力が必要だ。なかなか、違う考えはできないように思える。だから、最初はとにかく書き出して、整理することが必要。形のない考えには圧倒されがちだけれど、書き出してみると、実はたいしたことがないことが多い。そして、じっくり整理してやればいいのだ。

参考:心配事は書き出して「整理」しよう: モヤモヤ整理マップのすすめ

やがて、自動的にポジティブな考えが浮かぶようになれば、幸せなADHDへの道が一歩見えたことになるだろう。二次障害(ウツ・不安)などが起きなければ、ADHDは楽しい人生だと思う。(トラブルも見方を変えれば、イベントともいえるしね。)

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq