1989年1月7日の手紙
1989年1月7日。今日で昭和が終わります。
僕は今、高校生3年生で、あと2ヶ月足らずで高校を卒業します。大学受験に失敗したから、卒業後は浪人です。明日から平成。平成の始めは浪人だなんて、これからの人生が心配になります。
僕は本当にダメな奴だ。この受験だって本当に全力で戦ったって胸を張って言えない。次は絶対合格しよう。次こそ全力で頑張ろう。
僕はまだ10代だけど、あと10年したら20世紀も終わるんだ。その時僕は28歳か29歳。
1999年に世界が滅亡するってノストラダムスが予言してるけど、それって本当なのかな。
10年先なんて両親もお婆ちゃんもきっと生きてるよな。結婚してたり子どもがいたりするのかな。みんな死んじゃうなら、そんな大切な人を作るの怖いから結婚とか結婚の約束をするような彼女は、1999年が何事もなく過ぎてから作った方がいいかもしれないな。
20世紀の大部分だった昭和は今日で終わるけど、明日から始まる平成はいつまで続くのかな。
平成はどんな時代になるんだろう。日本はすごく景気がいいし、頑張って勉強したら、きっといい仕事が見つかるよね。
そういえば今日生まれる子どもは昭和最後の子どもたちで、明日生まれる子どもは平成最初の子どもたちなんだな。
君たちに読んでもらえる機会があるかわからないけど、書いておきます。
平成生まれのみなさん。平成を楽しんでいますか?僕は平成最初の年に、この北国の小さな町を出て東京へ行きます。将来はデザイナーになりたいです。まずは頑張って次こそ受験戦争に勝とうと思います。
今日は1989年1月7日です。明日以降に生まれる平成生まれのみなさん。一緒に平成をいい時代にしましょうね。
でも君たちが大きくなった頃には、僕みたいな昭和生まれなんて、古いな〜とかダサいな〜とか言われちゃうのかな。
浪人生になる僕が言うのも生意気だけど、東京へ行ったら、やりたい事がたくさんあります。将来はなるべく楽しく生きていきたいな。
新しい天皇陛下は今何歳なのかな。だけど昭和は長かったから、きっと平成は昭和より少しだけ短いかもしれないな。大正よりは長くなると思うけど。
平成が終わる頃、僕は何歳になってるのかな。きっと10年てことないよね。だったら平成の間に21世紀がやってくるんだ。1999年に世界が滅んだりしなければの話だけど。
もし平成が20年続いたら、その時僕は38歳です。30年続けば、その時僕は48歳になってるのか。
平成最後の日の僕へ。元気ですか?まさか死んじゃいないよね?今日は1989年1月7日です。
平成最後の日の僕は何をしていますか?家族はいますか?両親や弟やお婆ちゃんはまだ元気かな?
憶えてると思うけど、今日は昭和最後の日です。
4月から東京暮らしが始まるけど、僕が来年大学に合格したかどうか、君は知ってるんだよね。大学だけじゃなくって、その後の僕がどんな風に生きてきたかも全部知ってるんだもんね。
わかってるんだ。多分いろんな人に迷惑かけたりして、そんなに幸せじゃなかったって思ってるかもな。あ!幸せだったらいいんだよ。でもごめんね。僕は自分がだらしないってわかってるから。
だけどこれだけは先に言っておきます。後悔はしないでください。
今これを書いてる僕は、今の僕です。だけど未来の僕も今ここにいる。
今の僕が未来の僕をわからないのと同じように、未来の君がそのまた未来の君を知ることはできない。
だから向くなら未来を向いていた方がいいと思います。
今の僕は未来を見ているから、きっと未来の僕にも同じことはできるよね。
いつか平成が終わって時代が変わっても、未来を向いて今を精一杯生きてください。僕もそうしようと思います。
僕は平成っていい時代だったねって思えるように頑張ろうと思います。
だから明日から生まれてくる平成生まれの皆さん、いつかやってくる平成最後の日の僕。約束しましょう。平成の後にやってくる新しい時代を、きっといい時代にしてください。
昭和に生まれ平成に旅立つ田舎者より
1989年(昭和64年)1月7日
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