見出し画像

本を贈ろう

誰かに本を贈るのは、難しい。

本は、個人的なものだと思う。どんな本を読むかは、その人がどんな考えを持ち、どんな生き方を選択しているかに直結する。

相手が喜んでくれる本、相手が望む本は何かを考え始めると、あっという間に時間が過ぎる。本を贈るためには、相手のことをよく知らなければならない。この世に無数に存在する本の中から、ぴったりの一冊を見つけ出すのは、非常に難しい。


でも、誰かに本を贈るのは、素敵なことだ。

幼い頃に読んだ絵本のことを大人になってもずっと覚えている、ということはないだろうか。普段は本をあまり読まなくても、なんとなく手に取った小説の一節が、記憶の片隅に残っていたりしないだろうか。

本は、読者の心に寄り添い、記憶に深く宿る。とりわけ、誰かから贈ってもらった本は、印象に残りやすい。

相手の好みに合う本を見つけるのは難しい。だからこそ本の贈り物には、「自分のことを考えて選んでくれた」という嬉しさがついてくる。本を読むとき、贈ってくれた相手の顔が浮かび、喜びが込み上げてくる。


「プレゼントの選択肢のひとつに本がある」ということは、豊かなことだと思う。私は本を贈れる人が好きだし、私も本を贈れる人でありたい。

今回の記事では、大切な人に贈るのにぴったりな、おすすめの「贈り本」をご紹介する。

選書の基準として、あえて「普段あまり本を読まない人に贈る」という観点で選んでみた。そのため、活字が苦手な方でも、比較的読みやすい本になっているはずだ。



木下龍也|あなたのための短歌集


一冊目は、木下龍也さんの『あなたのための短歌集』だ。

歌人・木下龍也さんが「お題」を受けて作歌する、 短歌の個人販売プロジェクトが一冊の本になりました。 これまで作歌した700首の中から「100題100首」を収めています。 歌人がひとりの想い(お題)と向き合うことで生まれた短歌が詰まった歌集です!

つい先日「今日も、読書。」でもご紹介した本作は、誰かへの贈り物にぴったりだ。


依頼者からメールで届くお題をもとに短歌をつくり、それを封書にして届けるという、短歌の個人販売を行なっていた木下さん。本書は、その個人販売で依頼者に贈られた短歌を再び集め、歌集としてまとめた一冊だ。

元々はある特定の個人に宛てて創られた短歌だが、似たような想いや境遇を持つ第三者が読んでも、心が揺さぶられるようなパワーがある。どんな人に贈っても、その人のそばに寄り添ってくれる歌が、きっと見つけられるはずだ。

右ページにお題、左ページに短歌という構成



エラ・フランシス・サンダース|翻訳できない世界のことば


二冊目は、エラ・フランシス・サンダースさんの『翻訳できない世界のことば』だ。

外国語のなかには、他の言語に訳すときに一言では言い表せないような各国固有の言葉が存在する。本書は、この「翻訳できない言葉」を世界中から集め、著者の感性豊かな解説と瀟洒なイラストを添えた世界一ユニークな単語集。言葉の背景にある文化や歴史。そしてコミュニケーションの機微を楽しみながら探究できる。小さなブログ記事が一夜にして世界中へ広まった話題の書。ニューヨークタイムズ・ベストセラー。

プレゼントにぴったりな可愛い装丁の本作。ページを開くと、素朴で彩豊かなイラスト、そして世界中の「日本語に翻訳できない言葉たち」が並び、とても楽しい。

絵本のような可愛らしいデザイン

たとえばスウェーデン語の「FIKA(フィーカ)」や、フランス語の「FEUILLEMORT(フイユモール)」など、その国独自の文化に結びついた面白い言葉が紹介されており、パラパラ眺めているだけでも楽しい。日本語だと「木漏れ日」や「積読」などが紹介されていて、新しい発見がある。

ちょっとした勉強になるし、インテリアとしても映える。何より、読んでいるうちに海外に興味が湧いて、世界がひらけるきっかけになる。子供への贈り物にもいいかもしれない。



枡野浩一選|ドラえもん短歌


三冊目は、枡野浩一さんが選者の『ドラえもん短歌』だ。

本書は「かんたん短歌」の提唱者として知られ、若者に圧倒的支持を受ける歌人・枡野浩一がネットを中心におこなった呼びかけに、全国から続々と寄せられた「ドラえもん短歌」の傑作選です。日本人ならだれもが笑えて共感できる、新・短歌ジャンル「ドラえもん短歌」。「ドラえもん」×「短歌」という言葉のひみつ道具を使い、ぼくたちの今の想いを詰め込んだ、22世紀に届けたい決定版です。

国民的キャラクター「ドラえもん」を主題に、ネットに寄せられた短歌をまとめた本作。誰もが知っている「ドラえもん」というフィルターを通すと、短歌がグッと身近に、そしてグッとエモくなる。


見開きに2首ずつ短歌が載っている

自転車で 君を家まで 送ってた どこでもドアが なくてよかった
(仁尾智)

大丈夫 タイムマシンが なくっても あの日のことは 忘れないから
(加藤千恵)

ドラちゃんの 「えもん」を「エモン」と 書くような 人とは結婚 したくないです
(沼尻つた子)

クスリと笑えてホロリと泣ける、本家ドラえもんの良さはそのままに、短歌の味わいが合わさって、心がとても温まる。疲れた時にページを開くと、ドラえもんやのび太がそばにいてくれているような、心強い気持ちになる。

ドラえもんには誰もが親しみを持っており、贈り物として非常に優秀である。短歌は時間がなくても気軽に読むことができ、読書初心者にもきっと楽しめる一冊だ。



おすすめの贈り本3選、いかがだっただろうか。

本を贈る人、贈られる人。多くの人に「本を贈る」ことの喜びが広がってくれれば嬉しい。

さあ、本を贈ろう。



↓読んで良かった本をご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください!

↓おすすめ記事です!次の連休は、ブックホテルでゆっくりと。

↓本に関するおすすめ記事をまとめています。

↓読書会のPodcast「本の海を泳ぐ」を配信しています。

↓マシュマロでご意見、ご質問を募集しています。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?