Meg

創作がライフワークです。 短編が多いです。

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最近の記事

「血薔薇の王妃」あらすじ

 世界中の薔薇が保管されているという、雪山の薔薇の塔。絶対に行ってはいけないと言われるそこは、ヴァンパイアの巣窟だった。  塔に入ったせいで、大切な父を異形に変え、死に追いやってしまった猟師の娘ヴァイオレット。  父の死を仕向けた仇を討ち、自らの罪を償うため、ヴァンパイアのアーリマンと契約したヴァイオレットは薔薇の塔を登り、各階の薔薇を守護する癖の強いヴァンパイアたちと戦って仇を追う。  憎悪。裏切り。友情。愛情。薔薇の塔での戦いを通じ成長するヴァイオレットは、辿り着いた最上

    • 「血薔薇の王妃」第2話

      ◯塔・1階・夜空・透明な薔薇の階段    銃を手に薔薇の階段を登るヴァイオレット。ヴァイオレットにぶら下がるコウモリのアーリマン。 ヴァ「なんでまたコウモリに戻ってんだよ。ていうか飛べよ」 ア「人型も飛行も体力を使う」 ヴァ「私だって……」    腕を見下ろすと、皮膚が黒い。 ヴァ・心の声「色が戻らない。なんか硬いし。嫌だな」    指についた赤い粉を見る。 ヴァ「あの時父さんは何を言おうとしたんだろう。最上階の王様って一体……」    階段の終わりに、空がくり抜かれた四角い

      • 「血薔薇の王妃」第3話

        ◯雪山・塔の前    吹雪。明るい髪色に白のキャソックの青年(アーサー)が塔を見上げる。    数匹の犬が寄ってくる。 アーサー「(犬に)危ないから離れな。(神妙に)これからあの人の狂った『選定』をやめさせに行くから」    アーサーは小銃を握りしめる。 ◯塔・3階・手術室    暗い部屋。カッと照らしてくる、ライトのまぶしい光。    手術台の上の、手術服のヴァイオレットは目を開ける。四肢それぞれが鎖で拘束されている。    横目で周囲を見る。吊るされた人の解剖体。ぼんや

        • 「血薔薇の王妃」第1話

          ◯薔薇の花園    薔薇の花、葉、茎で編まれた階段。花はガラスのように透明だが、傷だらけのヴァイオレットが猟銃を手に階段を登る度、朱に染まっていく。黒のシルクハットの紳士が、微笑みながらついてくる。 ヴァイオレット(以下、ヴァ)「行かなきゃ」 ◯雪山・雑木林    近代ヨーロッパ風の世界。    ダァンと銃声が響き、鹿を貪っていた熊が倒れる。猟銃を持つヴァイオレットが熊に近づく。 ヴァ「悪いね」    木の間から、山向こうの白色の高層の塔が見える。 モノローグ(以下、M):

        「血薔薇の王妃」あらすじ

          〜豚や牛じゃない。もっとおぞましく、おいしい『肉』〜 お肉屋さん 【短編小説】前編

           広くはない、かといって狭くはない焼肉屋の店内。照明は落され、薄暗い。客の姿はなかった。  テーブルには、肉の乗った皿が置かれていた。熱を帯び、ジュワジュワうまそうな音をたてている。銀のステーキナイフだの、フォークだのも一緒だ。  肉を横目に、店長の笹塚は、ワイングラスに口をつけた。グレーがかったシルバーのノートパソコンを開く。画面は闇のように真っ暗だ。  笹塚は、あちこちに茶色っぽいシミのついた、コックシャツを着ていた。中年というには若々しく、若年というには雰囲気が落ち着

          〜豚や牛じゃない。もっとおぞましく、おいしい『肉』〜 お肉屋さん 【短編小説】前編

          〜普通の女の子が人形にされるまで〜 人形と沈黙の日々【ショートショート】

           私を人形と呼びました。そして私と遊びました。ちょうど私が自分の人形をおもちゃにするようなさまでした。  初日  夕日をカーテンで遮断した。  ここは散らかったアパート。明るい茶髪に、ラフなTシャツを着たサチコは、彼氏のサチオに電話した。 「私今から初出勤なの」  机の上には、薄ピンクのパソコンが置かれている。電源はついているが、まだ真っ暗。『誰か』が接続するのを待っていた。  パソコンの横の、安っぽいアナログ時計の針が、チッチッと音を立てている。時刻は6時。 「お

          〜普通の女の子が人形にされるまで〜 人形と沈黙の日々【ショートショート】

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【あらすじ】

           どいつもこいつもクズクズクズ。俺様は神になる男だぞ。  中学2年生、脳洗傀儡(のせ くぐつ)。将来の夢は人を操り神になることだが、学校では陰キャ扱いされ、家は宗教に侵されている。宗教団体に惨殺され、死に際、バカとクズを洗脳し、教祖になることを誓う。  無垢の住民、ヌッタスートの世界に飛ばされた傀儡は、洗脳や独裁政治の知識を駆使し、社会に差別や分断を生じさせ、都合よく操る。また、傀儡の作ったポイントを貯めないと地獄に落ちると洗脳。結果、神として君臨する。  一方、ヌッタス

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【あらすじ】

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【3話】

           植物に覆われるカフェのガーデンテラスに、金ピカの椅子が置かれた。黒の制服の傀儡はそこに座り、キラキラの背もたれに背をあずける。街と、街をとりかこむ、白い雪をかぶった黒い山々をみわたした。  ヌッタスートたちが、ニコニコしながら傀儡の肩をもんだり、ひざをついて足をこすったりした。彼らはみんな青髪、青目。ひたいからはえたアンコウのような触覚の先端は青く、よつまたにわかれている。  カフェの前を通り過ぎるヌッタスートの中には、嫌そうな顔で、ちらちら傀儡を見、通りすぎる者もいる。

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【3話】

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【2話】

           街に立ちならぶカフェのテラス席で、ヌッタスートたちがいつものようにくつろいでいた。お茶を飲みながら談笑する。テーブルにつっぷし、うとうとしている者もいる。  青髪、青目の、背の高いヌッタスートが、切迫した様子でやってくる。 「みんな、聞いてくれ!」  くつろぐヌッタスートたちは、彼に注目した。  大工のアイキンだ。ひたいの、先端がよつまたにわかれた青い触覚をゆらし、深刻そうな表情をしている。  彼は木の看板をかかげた。ピラミッドのような、大きな三角形が描かれている。階層

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【2話】

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【1話】

          『地獄の鬼〜、最下等族少女、煮湯に沈めて皮膚溶かす〜』  外から歌が聞こえた。  1畳程度の縦長の狭い個室は、白い蛍光灯で照らされている。くすんだクリーム色の壁で囲まれ、物はない。黒く分厚い扉には、鍵がかかっている。  冷たい床に少女がうずくまり、頭を押さえていた。 「アイキン。あのやな歌をとめて。お願い」 『生きたまま手足をもがれ〜』 「アイキン。どこ?」 『肉喰われ〜』  起きあがり、少女はガン、ガンと何度も扉を叩く。びくともしない。ガリガリ引っ掻いた。 「わたし

          肉喰い教祖 〜神になりたい中学生2年生、教祖になってファンタジー世界を洗脳する〜【1話】

          時間売ります【あらすじ】

           友達との楽しい食事。やりがいのある仕事。恋人とのデート。家族との交流。あなたのその時間、買います。  めんどくさい。なにもしたくない。楽して生きたい。  全てが億劫な高校生、山田太郎。ネットオークションで自分の時間が販売できることを知る。  トイレ、お風呂、睡眠から、友人との食事、高校の卒業式、果ては仕事、デート、×××、結婚式、などなど。大切な時間ほど、高値で売れていく。  楽して生きれるじゃん。  そう思っていた太郎は、時間を売り尽くしたとき、得られた金であるものを大

          時間売ります【あらすじ】

          時間売ります

           街のベンチに、よぼよぼの老人が座っている。道ゆく、若く明るい人々を暗い目で凝視し、ぶるぶる震えた。 「……返せ。返せ返せ返せ」  通りすぎる人々が、異様な老人を見た。 「おれの時間、返せよおっ!!」  高校の教室。授業前、男子が話している。 「双流大学受けるわ。塾の模試でB判定でたから」 「いいなあ。おれ部活で忙しいから塾行けねえわ」  女子が話している。 「二年の山田と付き合ってるの」 「えー! すごいじゃん」  高校生の山田太郎は、机に突っ伏し、彼らを眺

          時間売ります

          クソ漫画家、吐血する

          「読者様方、この話、超面白いです。編集さん、絶対おれ逃しちゃダメっす。この百年に一度の人材を」  漫画家の仕事部屋。漫画関係の書籍や漫画が積み上げられている。  萬河 架構(まんが かこう)、20歳。ひとりでぶつぶつ言いながら、液晶タブレットに漫画を描く。  連綿と紡がれる名作という名作は、やがて全世界の人々を漫画へと駆り立てた。世はまさに大漫画時代。単行本売上100万部、アニメ化、グッズ化、舞台化、実写化……。漫画家たちは漫画史に爪痕を残すことを目指し、夢を追い続ける。

          クソ漫画家、吐血する

          クソ漫画家、吐血する【あらすじ】

          「読者様方、この話、超面白いです。編集さん、絶対おれ逃しちゃダメっす。この百年に一度の人材を」 『草。自分を客観視できないクソ漫画家』  自作品を面白いと信じて疑わない新人漫画家、萬河 架構(まんが かこう)。ネットで酷評を目撃、クソ漫画家呼ばわりされ、大ショックを受ける。  大漫画時代に、大御所漫画家に憧れる彼は諦めず、何十年と研鑽し、全読者の満足させる作品を作ろうとする。しかしどんなに努力しても、いつの時代も低評価レビューは消えてなくならないどころか……。  もがく

          クソ漫画家、吐血する【あらすじ】

          〜笑い続ける病気になったらこうなる〜 笑い病 【ショートショート】

           彼女のスマホの画面に、彼の姿が現れた。  彼はなぜか空のバスタブのなかで、ひたすら声を立てて笑っている。 「ふふ。ははは。ふふ。はははは」 「久しぶり。元気だった?」  久しぶりにこうして通信する彼が、あまりに楽しそうに笑っているものだから、つられて顔をほころばせた。  元々あまり感情を表に出すタイプじゃなかったのに。しばらく見ない間に変わったな。  何でバスタブなんだろう。  でも彼が楽しそうだと、素直にこちらも楽しくなる。 「楽しそう。なにかいいことあった?」 「

          〜笑い続ける病気になったらこうなる〜 笑い病 【ショートショート】

          愛されることが怖い。愛される資格などない 【地獄の淵の一匹の怪物】 ショートショート 前編

           地獄の片隅の暗闇の中、血の池には、人間の男や女たちがプカプカ浮いていた。血の池の岩の上からは、獄卒の鬼たちが、苦しそうな彼らの様子を見物し、ケラケラ笑っている。  池の淵で、一匹の怪物がその様子を眺め、人間たちや鬼たちをあざ笑っていた。怪物はブヨブヨとした半分液体のアメーバのような姿をしていて、決まった形を持たない。  ふと、鬼めらが怪物に気づき、怒号をあげて石を投げ、矢を放った。怪物は芋虫のように体をしきりに伸縮させ、急いでその場から離れた。  怪物は獄卒の来ない場所ま

          愛されることが怖い。愛される資格などない 【地獄の淵の一匹の怪物】 ショートショート 前編