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メンタル不調時の3ステップ「気づく、原因を知る、対処する」。 つらい時は当たり前に頼れる社会へ #女性起業家支援プログラム

グローバルスキンケアブランドSK-IIと渋谷区、meeTalkが連携し、共同で開催する女性起業家支援プログラムのキックオフイベント。このプログラムはコロナ禍で事業に悪影響を受けた女性起業家を支援する目的で開催され、発表イベントでは女性起業家を支援するセッションが行われました。

女性起業家のメンタルウェルネスを考える〜あらゆる困難(ハード・シングス)、に立ち向かう〜」をテーマに株式会社cotree創業者・株式会社コーチェット代表取締役の櫻本真理さんが登壇。モデレーターをmeeTalkの山中が務めました。

左:山中直子 (meetalk株式会社 代表取締役)
右:櫻本真理さん (株式会社cotree創業者・株式会社コーチェット代表取締役)


◼︎経営者が悩みを抱え込みやすい背景

山中直子(以下、山中):
このセッションでは女性起業家のメンタルヘルスを考えていきます。真理さん、よろしくお願いします。

櫻本真理さん(以下、櫻本):
よろしくお願いいたします。私の簡単な略歴を申し上げると、大学を卒業した後、株式アナリストの仕事を経て2014年に株式会社cotree(以下、コトリー)を設立し、2020年に株式会社コーチェットを立ち上げました。
(*注 後に桜本さんはコトリー社の代表を退任されました)

Web:オンラインカウンセリング 「cotree」
Web:リーダーのためのコーチング習得プログラム「CoachEd」

山中:
コトリーの立ち上げには、ご自身の経験も関係しているそうですね。

櫻本:
はい。証券会社時代にハードワークが過ぎて、睡眠障害になりました。その時、まずどこに行けばいいのかわからないという壁がありまして。誰にも相談できず、悩んだ末にメンタルクリニックに行きました。

そこで、数分の診察ののちに「軽いうつ状態だと思います。薬を出しますので、また来てください」と。睡眠をなんとかしたいと思っていたけれど、こんなに簡単に流れに乗っていいのだろうかと思いました。

そもそも眠れない理由となるストレスがあるはずで、そこを取り除かずに薬だけでメンタルの不調が改善されるのだろうかと。

それからカウンセリングサービスの必要性について考えるようになりました。日本ではまだ一般的ではないけれど、アメリカでは、カウンセリングが一般的です。専門家と1対1で対話をするサービスが広く普及しているのですが、日本での認知度はまだ低くスティグマ(偏見)もある。

もっと気軽にカウンセリングを受けられ、かつ、オンラインでいつでもどこでも対面より安く受けられるプラットフォームを作ろうと思って立ち上げたのがコトリーです。

複数の事業展開を経て、現在はカウンセリングとコーチングのオンラインサービスを提供しています。事業を行っていると、経営者の方々からの相談も一定数あることに気づきました。

山中:
そうですね。私自身も含めて、経営者が孤独を抱えていたり、相談できる人がいなくて困っていたりするという話はよく聞きます。

櫻本:
そうですよね。まず、相談できる人がいない。そもそも部下に弱みを見せるのは不要な心配を抱かせてしまうかもしれませんし、トップとしての悩みを共有できる人がそもそも少ない。

誰かに相談しても、その苦しさがわかってもらえず、さらに苦しんでしまったり、どう解決したらいいかわからないことも多い。

なので、自分で抱え込んでしまうんですよね。特に経営者は対外的には元気でいなければならないという思い込みもあるでしょう。

山中:
そうですね。魅力的な会社だとか、尊敬する経営者だと思ってもらいたいですからね。

櫻本:
その対外的なものと内面的なもののギャップが苦しみの元になってしまうことも多くて、信頼できる専門家や守秘義務のある人に相談をしたいという方が、私たちのようなサービスを利用されています。

◼︎カウンセリングとコーチングの違いは?

山中:
職場だと人間関係もこじれやすいですよね。経営者や上司との関係性に悩む声もよく聞きます。

櫻本:
そうですね。その一方で、経営者や上司も悩んでいます。人とうまく関わることができないとか、自分自身もメンタルの不調を抱えているのに、と。

このようなすれ違いを見ていて、経営者やリーダー、あるいは親など、人に影響を与える側にいる人たちが、人とうまく関わる力を身につけていく必要があると感じ、立ち上げたのがコーチェットです。

私たちは「優しさでつながる社会を作る」というビジョンを掲げています。そのために、コトリーではオンラインカウンセリングサービスを通じて、メンタル不調の人と専門家をつなぐ、優しいつながりを作るサービスを展開しています。

一方でコーチェットでは、人を生かす、リーダーを育てるためのマンツーマンプログラムを運営していて、優しい人を育てる事業を行なっています。優しい人が増えることと、優しいつながりを作るということで、一つの山を二方向から登っているというのが、今、私が行なっている事業です。

カウンセリング、コーチング、ふたつの登りかたでサポート

山中:
つらい時はカウンセリングで、事業のことなど何か導いてほしい時はコーチングなのかなという漠然としたイメージを持っている人が多いと思うのですが、カウンセリングとコーチングの違いについて、改めて教えていただけますか?

櫻本:
すごくシンプルな言い方をすると、カウンセリングはマイナスからゼロコーチングはゼロからプラス。多くの場合、カウンセリングは課題そのものを扱うケースが多く、コーチングは未来から逆算して考えていくケースが多いです。

つまり、何が問題なのかから始まるのか、何をやりたいのかから始まるのか。出発点の違いがあって、それでも行き着く先は似たようなところにあって、ウェルビーイングの向上がほとんどです。

よりよく生きることに対してより向き合うための対話の時間がカウンセリングにもコーチングにも共通しているところですね。

◼︎「今までの人生で一番価値のある、5000円だった」

山中:
以前、どなたかのブログで「5000円のカウンセリングのコースを受けて、今までの人生で一番価値のある5000円の使い方だった」と書いてあって、共感しました。

櫻本:
対話に対してお金を払う感覚がまだ一般的でないかもしれないけれど、対話を通じた気づきや考え方の変化に払っているんですよね。それに伴って、自分の行動が変わる可能性に対する対価なのだと思います。

カウンセリングもコーチングも、問いかけを受けて、それを通じて自分自身の解像度を上げたり視点を増やしたり、視座を高めたりする営みです。問いかけられることで、ふわっと見えていたものが具体的に見えるようになる。

山中:
そうですね。

櫻本:
メンタルが不調な方がよく使う言葉を分析すると、「みんな」「いつも」「自分」が多いです。「みんな」や「いつも」は抽象度が高いですよね。

いい人も悪い人もいるのだけれども、全て嫌な人に見えているとか。いい時と悪い時があるのに「いつも」だと思ってしまうとか。

一方で、「自分」というのは、自分にフォーカスしすぎて周りが見えてないない状態。メンタル不調の時に大切なのは、今、何を見ているのかに気づくことと、見えていないものの解像度を上げることです。

具体的には、なぜ悩んでいるのか、いつから悩んでいるのか、どうしたら解決だと思えるのか、そのためにできることは何か。そんな問いかけを重ねることで、モヤモヤしている部分とクリアな部分が見えてきて、やるべきことが明確になっていきます。

◼︎ストレス対処の3ステップ【気づく、原因を知る、対処する】

山中:
トラブルは、想定外の時に起こりがちですよね? 事業は順調なのに組織の中に大変なことがあったり、組織内の雰囲気は良くても事業が伸びなかったり。実際にメンタルの不調に陥ったらどうしたらいいでしょうか?

櫻本:
ストレス対処の3ステップがあります。まずはそのことに気づく。ストレスを感じていることに対して価値判断せず、気づくことです。次に、原因を知る。なぜそれが起こっているのか、いつから起こっているのかをクリアにすること。そして、いろいろある手段の中から対処するという3ステップです。

山中:
具体的にするには、一つ一つ書くといいですね。

櫻本:
そうですね。メンタル不調の時に書くのはとてもいいです。文字でも絵でも。受け身になってしまうことが多いので、何かをアウトプットしてみる。

女性起業家のメンタルウェルネスという文脈で言うと、女性は葛藤を抱えやすい傾向があります。具体的には、妻としてとか、親として、ビジネスマンとして。そこに経営者としての自分も加わると、ものすごく複雑な葛藤になる。

山中:
人間って多面的なのに、一貫性があることを求められがちです。どの自分も本当のはずだけど、そのギャップに悩んでしまいがちというか。

櫻本:
そうなんです。わからなくなってしまうんですよね。メンタル不調の時によく使う言葉に「わからない」「できない」も出てきます。だから、わからないことをわかるようにしてあげる。できないことをできるようにしてあげるというのが、基本的なメンタル不調から脱するポイントかなと思いますね。

山中:
気づく、対処するということについても解説していただけますか?

櫻本:
不調に気づくには、心理面、身体面、行動面での変化に意識を向けてください。心理面の変化としては、落ち込んでいるなとか、不安だなとか、イライラするなというような場面。

身体面では、疲れやすいとか、眠れないとか。行動面だと、タバコやお酒の量が増えたとか、無性にカラいものが食べたいとか。食べ過ぎや、眠れない、逆に寝すぎてしまうということもあります。そういった変化が出てきたら、何か抱えていないかなと振り返って立ち止まってみていただきたいです。

◼︎コロナ禍のメンタル不調

山中:
コロナ禍特有の不調の要因もあるそうですね。

櫻本:
はい。まずは感染への不安、外出自粛、景況感悪化などがあります。女性起業家という文脈で抱えやすいのは外出自粛によるコミュニケーションの変化、人間関係の変化、生活リズムの変化、それらによってストレスの発散がしにくいというのが大きいかなと思います。

要因によって、いろいろな不調に発展していく

山中:
逃げ場の喪失感はすごく感じます。息抜きになる行きたかったカフェに行けないとか、いつもの場所に行けない。在宅勤務がマストになって、会社に行けなくなったり。使用するツールの変化もちょっとしたストレスです。

櫻本:
人とのコミュニケーションが好きな人は特に辛かったでしょうね。あとは純粋に、経営者の視点だと利用者が減ってしまい、キャッシュがつきそうになってしまうこと。いつまでこの状況が続くのかわからず、先行きが不透明ですよね。それらが組み合わさってメンタル不調につながるケースが多くなっています。

山中:
そもそも事業をしていると、先が不透明なのがデフォルト。今は、それが何倍にもなって、もっとわからなくなっているという感じがします。

櫻本:
そうですよね。いつコロナが収束するのかわからない中で事業を運営していくストレスは大きいだろうと思います。なので、こうした原因を知って、対処する方法を知っておくことが大切です。

感情は溜め込むと蓄積されていつかおかしくなってしまうので、辛いという気持ちを誰かに伝えて、感情を表出していく。特に経営者は言えないケースも多いと思うのですが、周囲に頼れる人を作っておけるといいですね。家族でも、友達でも専門家でも。

山中:
打ち明けられて嬉しいということもありますよね。

櫻本:
本当にそうだと思います。特に、経営者なのだから強くあらねばと思ってしまうことも多いけれど、周囲は意外と気づいていたりします。自分のことを頼りにして欲しいのにと思っていることもありますから。

◼︎失敗が糧になるのは、挑戦する人の特権

櫻本:
回避や感情を抑圧する方法はあまりオススメしません。それが有効な時もありますが、後から顕在化することもありますので。できれば、他のパターンで対処していただけるといいのかなと思います。

山中:
ただ、ゆっくりお風呂に入るとかって、そんな余裕があるなら仕事をしてよと自分を責める気持ちも生まれてきそうで…。

櫻本:
そうですね。けれど、事業だけが人生ではありません。私も、今年の3月に出産したことをきっかけに改めて人生や働き方と向き合い、持続可能な働き方を目指すべきだと思いました。バランスをとるために、この頃は自分の余白を作る努力をするようになりましたね。

山中:
このプログラムの目的の一つでもありますが、横のつながりを作ることも大切ですね。

櫻本:
はい。自分一人ではどうにもならないことをみんなでやろう、と。助けて欲しい人だけでなく、助けを提供したい人も社会にはいるので、うまく頼る。女性の起業家に限らずですが、頼り上手であるというのは、起業家として長くやっていく上でのポイントだと感じます。

経営をしているといろんな苦しいことが起こります。けれど「苦しい、苦しい」と言うだけでは現状は変わりません。だから私は、何か違う見方はないか、この出来事が自分にとって意味のあるものだとしたらどんな見方ができるだろうか。

考え方、捉え方を変えていくようにしています。大体の女性起業家の持つハード・シングスは、振り返るとあのことがあったから自分は変わったとか、成長できたと思うことがほとんどで。少なくとも私の場合はそうでした。

山中:
今は辛くても、振り返ったらよかったと思える。

櫻本:
そうなんです。なので、視点を変える方法の一つには、長期の視点で見てみる。例えば、今は苦しいかもしれないけれど、5年後の自分からはどう見えているだろうと考えてみる。

意外と、あの経験のおかげでできるようになったと言っている自分がいるかもしれないと思えるかもしれません。すると少し気持ちが楽になりますよね。あとは、憧れの経営者だったら何と言うだろうと想像してみる。

山中:
他人の視点っていいですね。

櫻本:
そうですね。起業をしていると強くなってきませんか?このぐらいの失敗なら立ち直れるぞと言うか。

山中:
はい。あの時に比べたらマシかな……とかありますね。

櫻本:
失敗が糧になるのは、チャレンジする人の特権です。自分が耐えうる失敗許容量みたいなのを用意しておけるといいですよね。

私も、人に相談できなくなるほど悩むこともあったし、泣くことも何度もありました。外から見て元気そうに見えていても、実は苦しんでいる人のほうが多いという前提で見ると、自分だけが辛いという視点から抜け出せるのかなと思います。

また、しんどいことが多いという前提を持てば、自分がしんどいと思ってしまうことを恥ずかしいと思う必要もありません。自分に合ったストレスの対処法を知り、人に頼ることもしてみる。そんな普通のことが普通にできる世の中になれるといいですね。

【参加者した起業家からの感想】
「一人で抱え込むことが多く相談できる相手がいないのですが、メンタルの自己管理・ケア方法について、構造的に学ことができて気が楽になりました。さっそく活用していこうと思います」

「今はすごく活躍されている皆さんも、初めはそんな時期もあったんだということや、その時の心境や進んできたエピソードをお聞きすることができ、本当に良かったです。」

「一人で悩まず、女性経営者の方ともっとつながり情報交換をしていこうと思いました。」

といった感想も届き、セッションを通じて心が軽くなったように感じた方も多かったようです。

◼︎登壇者プロフィール


櫻本真理 / 株式会社cotree創業者・株式会社コーチェット代表取締役
1982年生まれ。京都大学教育学部卒。
モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券にて勤務。
証券アナリストとして2009年日経アナリストランキングその他素材部門20位、2010年同10位にランクイン。同社退社後複数のスタートアップやプロジェクトに携わる。
国内のメンタルヘルス領域においてカウンセリング・コーチングの活用が進んでいないことに問題意識を持ち、オンラインカウンセリングサービス立ち上げを決意。
2014年5月に株式会社cotreeを設立、その後2022年6月に代表を退任。2020年1月に株式会社コーチェットを設立。

山中直子 / meetalk株式会社 代表取締役
東京生まれ。WEBデザイン、ムック本編集・店舗企画など女性向けコンテンツの企画制作を行うフリーランスを経て、2016年に株式会社CAMPFIREヘ入社。法人のクラウドファンディング活用、コミュニティ育成、セールス、アライアンスなどを担当。
アクセラレーターMOVIDAへの参加をきっかけに、2020年meetalk株式会社を創業。
女性起業家のコミュニティ運営と支援プログラムを提供する。挑戦する女性のための資金調達のサポートや専門スキルを共有する、学びとつながりの場を提供する。
渋谷区・野村不動産・SK-Ⅱなど行政と企業が連携し、起業家目線でサポートすることで、これからの時代の女性の多様な成功の形をつくる。


概要:女性起業家・事業主のビジネスをサポートする支援プログラム
主催:SK-II、meeTalk
協力:渋谷区、Facebook Japan、Google

ライター:安次富陽子


講義やセッションのレポートを続々と公開していきますので、ぜひご覧ください

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