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医療 製薬業界|【モダリティ調査】最も注力されている、モダリティを読み解く ~海外・国内別~

クリニファー株式会社でインターンシップをさせて頂いております、大学院生のオダニと申します。
今回の記事は「【モダリティ調査】最も注力されているモダリティを読み解く ~海外・国内別~」です。コメントやアドバイス等ありましたら、ぜひお願いいたします!

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記事本文↓↓

これまで国内大手製薬企業11社と海外製薬大手5社の企業分析を行ってきました(各製薬企業の企業分析はこちら)。この企業分析を経て、国内・海外で特に注力されている治療疾患の違いやモダリティの違いはあるのか気になりました。そこで、今回は最も注力されている医薬品モダリティを国内、海外に分けてグラフを用いて分析しました。前回は治療領域別についての記事を執筆しました(記事はこちら)。
国内については、「国内製薬企業売上高ランキング上位11社」の2022年度に「100億円以上売り上げた製品」117製品をモダリティ別にまとめました。海外については、「海外製薬企業売上高ランキング上位11社」の2022年度に「10億ドル以上売り上げた製品」105製品をモダリティ別にまとめました。


国内で最も注力されている医薬品モダリティ

モダリティ別の売上高比較

「国内製薬企業売上高ランキング上位11社」の2022年度に「100億円以上売り上げた製品」117製品をモダリティ別にまとめたグラフを以下に示します。

図1 国内大手製薬企業11社の製品117品の売上高 モダリティ別
※クリニファー調べ

グラフから、低分子が1位で4兆4,200億円、2位は抗体で3兆2,000億円、3位はタンパクで7,000億円でした。以上から、国内の大手製薬企業では低分子医薬品が最も売上を上げていることがわかります。中でも最も売上を上げたのはアステラス製薬の前立腺癌治療剤「イクスタンジ」で6,611億円、次いで武田薬品工業のADHD治療薬「ビバンセ」で4,593億円でした。
2位の抗体医薬品の中では、最も売上を上げたのは武田薬品工業の潰瘍性大腸炎治療薬「エンタイビオ」で7,027億円、次いで第一三共のADC抗悪性腫瘍剤「エンハーツ」で2,584億円でした。
3位のタンパク製剤で最も売上を上げたのは武田薬品工業の血漿分画製剤「アルブミン」で1,214億円、次いで同社の血友病A治療薬「アドベイド」で1,182億円でした。
 
ではそれぞれのモダリティにおいて、高い売上シェアを誇っているのはどこの企業なのでしょうか?各モダリティの売上高を企業別(上位3位まで)にわけたグラフを示します。

図2 国内大手製薬企業11社のモダリティの売上高 企業別
※クリニファー調べ

低分子の売上で最も高いシェアを誇ったのがアステラス製薬でした。次に武田薬品工業、大塚HDと並びました。低分子医薬品においては、その他の企業も多くの売上を上げており、医薬品の多くは未だ低分子であることが読みとれました。
続いて抗体医薬品では武田薬品、中外製薬、第一三共の順で高いシェアを誇りました。近年は抗体医薬品の開発が盛んであり、武田、中外、第一三共だけでなく、小野薬品工業や協和キリンも力を入れています。
タンパク製剤では武田薬品、協和キリン、中外製薬でした。武田薬品は低分子、抗体、タンパク、ペプチドで高いシェアを誇っています。このことからも、国内製薬企業における武田薬品の存在の大きさをうかがえます。

モダリティ別の製品数比較

続いてモダリティ別の製品数をグラフに示します。

図3 国内大手製薬企業11社の製品117品の製品数 モダリティ別
※クリニファー調べ

グラフから、最も製品数が多かったのは低分子で70製品、次いで抗体医薬品で27製品、3位はタンパク製剤で15製品でした。製品数からも、国内大手製薬企業は特に低分子医薬品の割合が多いことがわかりました。

各モダリティの製品数を企業別(上位3位まで)にわけたグラフについても以下に示します。

図4 国内大手製薬企業11社のモダリティの製品数 企業別
※クリニファー調べ

低分子で最も製品数が多かったのは大塚HDで13製品、次いで第一三共の10製品、アステラス製薬の8製品でした。抗体医薬品では中外製薬が最も多く8製品、武田薬品が5製品、第一三共が3製品でした。タンパク製剤では、武田薬品が7製品、協和キリンが4製品、中外製薬が2製品でした。特に低分子医薬品は、その他企業が有する製品数が多く、このことからも国内の大手製薬企業では低分子医薬品が多くの割合を占めていることがわかりました。近年開発が進んでいるバイオ医薬品の中では、抗体医薬品の開発が最も進んでいることがわかりました。

以上、国内の大手製薬企業が有する117製品の治療領域別売上高と製品数を調べた結果、日本の製薬企業は低分子医薬品が多く、抗体医薬品やタンパク製剤の開発にも力を注いでいることがわかりました。

海外で最も注力されているモダリティ

続いて、「海外製薬企業売上高ランキング上位11社」の2022年度に「10億ドル以上売り上げた製品」105製品をモダリティ別にまとめたグラフを以下に示します。

図5 海外大手製薬企業11社の製品105品の売上高 モダリティ別
※クリニファー調べ

グラフから、低分子が1位で1,739億ドル(22兆6,100億円 1ドル=130円換算)、2位は抗体医薬品で1,505億ドル(19兆5,700億円)、3位はワクチンで625億ドル(8兆1,300億円)でした。海外の大手製薬企業が開発した医薬品においても、低分子医薬品が最も売上を上げており、海外においても低分子の割合が大きいことがわかります。しかし、日本と比べて抗体医薬品や、特にワクチンの開発が進んでいることがわかりました。ワクチンに関しては、新型コロナウイルスワクチンの売上が大半を占めており、海外はワクチンの開発力が高いことが伺えます。逆に日本国内では新型コロナワクチンなど、ワクチン開発が遅れている問題があります(関連記事)。

続いて各モダリティで高い売上を上げている製品について、まず低分子で最も売上を上げたのはファイザーの新型コロナ経口治療薬「パキロビッド」で189億ドル(2兆4,600億円)、次いでブリストルの抗凝固剤「エリキュース」で118億ドル(1兆5,300億円)でした。
2位の抗体医薬品の中では、最も売上を上げたのはアッヴィのヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」で212億ドル(2兆7,600億円)、次いでメルクの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」で209億ドル(2兆7,200億円)でした。
3位のワクチンで最も売上を上げたのはファイザーの新型コロナワクチン「コミナティ」で378億ドル(4兆9,100億円)、次いでメルクの子宮頸がん・HPVワクチン「ガーダシル」で69億ドル(9,000億円)でした。
 
それぞれのモダリティにおいて、高い売上シェアを誇っている企業を調べるため、各モダリティの売上高を企業別(上位3位まで)にわけたグラフを示します。

図6 海外大手製薬企業11社のモダリティの売上高 企業別
※クリニファー調べ

低分子の売上で最も高いシェアを誇ったのがファイザーでした。次にブリストル、ジョンソンエンドジョンソンと並びました。抗体医薬品では、ロシュ、アッヴィ、ジョンソンエンドジョンソンの順で高いシェアを誇りました。低分子だけでなく抗体医薬品についても、その他の企業が多くの売上を上げていることから、業界全体で抗体医薬品の開発に力を入れていることがわかりました。
ワクチンではファイザーが群を抜いてトップのシェアを誇り、その後ろをメルク、サノフィと続きました。

モダリティ別の製品数比較

続いてモダリティ別の製品数をグラフに示します。

図7 海外大手製薬企業11社の製品105品の製品数 モダリティ別
※クリニファー調べ

各モダリティの製品数を企業別(上位3位まで)にわけたグラフについても以下に示します。

図8 海外大手製薬企業11社のモダリティの製品数 企業別
※クリニファー調べ

低分子で最も製品数が多かったのはジョンソンエンドジョンソンで9製品、次いでファイザー、ノバルティスの7製品でした。抗体医薬品ではロシュが最も多く12製品、ジョンソンエンドジョンソンとノバルティスが5製品でした。ワクチンでは、ファイザー、メルク、サノフィが2製品でした。低分子医薬品はその他企業が有する製品数が多い結果となりました。

以上、海外の大手製薬企業が有する105製品のモダリティ別売上高と製品数を調べた結果、海外の製薬企業は低分子医薬品が多く、抗体医薬品やペプチド、ワクチンの開発にも力を注いでいることがわかりました。

まとめ

今回の記事は、日本の製薬企業が力を入れる医薬品モダリティと海外の製薬企業が力を入れるモダリティの違いを分析するため、国内・海外の大手製薬企業が有する製品を調べ上げました。
結果は、各モダリティの売上高・製品数から

●国内・海外製薬企業ともに、低分子医薬品の割合が最も高い
●国内・海外製薬企業ともに、バイオ医薬品の中では抗体医薬品の開発に最も注力している
●国内製薬企業はタンパク製剤の開発に力を入れている
●海外製薬企業は、ペプチド、ワクチンの開発に力を入れている
 
ことがわかり、日本は海外と比較して、

➤ タンパク製剤に力を入れている特徴がある
➤ ペプチドやワクチンの研究開発が進んでいない
ことがわかりました。


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