M.e.A(めあ)

2021-Gunma. short story and shooting. (1mon…

M.e.A(めあ)

2021-Gunma. short story and shooting. (1month,1put) https://linktr.ee/mmeea

最近の記事

夏が終わる頃には

太陽が熱くコンクリートの壁を照らす。 同時に、わたしの感情は まだまだ夏を終わらせてはくれない。 絨毯の上にゆっくりとしゃがみ込む。 途端に一気に息を吐いた。 心地良い空気とその場の音楽は 皆の頬を撫でていく。 それくらいpeaceなもので。 仕事疲れのさびしさも、 どこかに行ってしまった人たちのことも 忘れてしまいそうだった。 いけないと思いつつも、 今日くらいは、 この場にいることだけを 考えていたい気分でいっぱいになった。 靡く空気の柔らかな気配を感じながら、 少し

    • Fluent

      国の、男女に隔たりを造る壁の上に立って、 波立つ争いの真っただ中を通過することが どれほどの恐怖だろうか。 生まれた土地のルールに抗えず苦悶することが、 どれほど苦しいと感じるのだろうか。 いつしか、性という存在を、 自由なものにすることが出来るのだろうか。 肌の見え隠れするドレスを着る私が、 この世界で醜く思われるのであれば、それでいい。 「ねえ、今どんな気分なの?」 あと少しで彼女は、 私の手の届かない場所に行ってしまう。 白いドレスが2階の窓際で、靡くこともない。

      • 2022.4.24 M.e.A's LIVE 音源

        2022.04.24 Kingpin Cafeにて。 Calme.による企画第2弾より、約30分間のLIVE。 〇セットリスト 1, とりのうた(Cocco)、 2, レディ(M.e.A) 3, 揺れる想い(ZARD)、 4, recordが終わるまで(M.e.A) 5, SOU(M.e.A) 、 6, アンコール: Cinema(阿部芙蓉美)

        • 憐野(Reno)と保乃実(Honomi)fin.

          ep. 保乃実 ...あくる日もあくる日も。 それほどわたしの心臓がゆったりと動く。 わたしは、本を閉じては開き。 閉じては開き。閉じて、開いて。 ひたすらにこれを繰り返している。 読み終わったこの本と見つめ合ってみる。 いつしか、 わたしはこの本に救われる日がくるんだろうか、 とか、文章の一部分に出てきたものを偶像化して、ああこれがその快感だったのかと納得したくなったりするんだろうか。 わたしは今、葛藤しているのだ。 こうして手の運動のみとなったものが、 Whilia

        夏が終わる頃には

          憐野(Reno)と保乃実(Honomi)

          ep.1 - 憐野 眩しい。 目を閉じて昼下がりの太陽を見る。 今日も天気が良さそうだ。 光が強いせいで薄赤い色の、 まるで熟しきれていないリンゴの一部分のような色味が私の目を覆い尽した。 今日も静かに本をめくる。 内容はよくわからない。 ただただ、目だけが文章をつらつらと 読み進めている。ああ、私は今日も寝ていた。 いや、今日もと思うくらいゆったりと寝てしまったのだ。そう感じるだけの人生が、ほんの一日だけ。この何とも言えないさみしさに、 目だけが私を追い越してゆく。 「

          憐野(Reno)と保乃実(Honomi)

          安らぎ (hostel)

          hostelの一室。 この一つの空間には、安らぎがある。 普段には無い、安らぎだ。 わたしは深く眠るために、 時々こうして、日常ではない場所で眠りたい。 少しだけ人のペースを知って、 少しだけ自分のペースを知ってもらう時間。 時々、自分の部屋以上に欲することがある。 隣り合わせの人の姿を見ることも、 上に寝転ぶ人との会話も無く。 夜、もしくは朝のおやすみを、 一人心で唱えながら眠る。 ただただ、ひたすら眠るのだ。 朝起きた時、 極力足音を立てないようにひっそりと歩いて、 朝

          安らぎ (hostel)

          ニューハーフショーの夜

          雨が未だに降り止まないまま、 秋の気温を感じるようになった。 東京から帰ってきた直後に扁桃腺が腫れて、 一年分の咳込みと鼻水の多さに、 色んな厄を一気に食らった気分になった。 今日それがようやく治ると予兆が見え始めている。 気持ちに余裕が出てきたので、 部屋を徹底的に掃除して、 使わないものを選り分けることにした。 その時間の間、 今までに撮った写真を見てみた。 そんな中で、この写真を見つける。 何回も見ていたのに全く気付かなかったのは何故だろう。 彼女か彼かわからないけ

          ニューハーフショーの夜

          感情。

          秋近くの風は少し乾いていて涼しい。 車は新潟の道路をひた走っている。 稲穂がそよそよと揺らぎ、 サーっと心地いい音に包まれる。 スキー場の近くの旅館の数々は、 角のない丸っこい形状をしている。 農家の木造建築が等間隔に立ち並んでいる。 稲穂の平野が広がる家の傍には、ツンとした、 まるでクリームを絞った後のてっぺんのような。 そんな形状の倉庫が可愛らしく感じられる。 トンネルに入って、仮眠を取ることにした。 あれは、 高速道路を照らすいくつもの電灯を通り過ぎるたびに 見えてい

          海。

          海が近い。 そんな夢をいつから見るようになったのだろう。 島が近い。 そんな日常をいつから求めるようになったのだろう。 疲れているのだろうか。 都会の刺激に飽き飽きしているのだろうか。 いや、僕にとって、その刺激が必要なこともある。 それは、間違いなく、必要なプロセスだ。 なら、どうして、こんなにも海を求めているのだろうか。 「ねえ、ここの海キレイでしょ?」 はにかむ少女が言う。 その声が遠くにあるような近くにあるような感覚に陥った。日が暮れる手前の海というのが一番好きだ。

          会話。

          「・・・どっちのわたしが本当でしょうか?」 彼女は、天秤の皿のように手の平を上に見せ、 僕の方に向けてさよならと手を振るしぐさをした。 今その手は、彼女の足を組んでより際立つ膝の骨を、 コンコンと叩いている。 彼女の微笑み。 僕がゾクッとしたのは恐怖ではない。 むしろ、この彼女に今すぐ触れて、 その口を黙らせてやりたいとさえ思わせる感情が 僕を満たしている。 彼女を見ると、どこにいてもあの時の、 と思い出せるほど、何故だろう。 時々少年のように目を輝かせるせいだろうか。 仕

          レモネード

          レモネードは誰が恋の味と言ったのだろう。 私がレモネードを飲んだのは、 ある夏の野外イベントで出店していたお店だった。 その頃には20をとうに超えて、 歳の下の子たちを見ると、 可愛いなあと思う年齢に差し掛かっていた。 東京は梅雨も明けて、 茹だるような暑さの夏が始まっている。 夕暮れ時の渋谷は真新しいビルが立ち並び、 またお店や新しいルートを開拓するのかと 多少億劫に思いながらも、 少しだけこの変わった風景を楽しみたいと思った。 私は人を待っている間、 お店の中に入る

          レモネード

          single ep. 03 -央(TERU)

          世界の中心とはなんだろう。 さっき見た水溜まりに、 足元のヒールが映って 雨の粒でポワーンと大きな波紋が出来た。 そのうち大雨になるだろうとその場を離れ、 これからくる嵐を逃れるために 駅に足早に向かった。 案の定雨は次第に激しくなり、 風の音が低く鳴り響いている。 私は電車が来るまでの間、待合室に入ることにした。 部屋の端っこには、 女の子と男の子が隣り合わせに座っている。 姉弟のようだ。 小さな手を握り合っては、 視線をちらつかせてソワソワしている。 女の子はなんて

          single ep. 03 -央(TERU)

          Single ep.02 M.e.A(myselfstory)

          初めて逗子駅に降り立った。 海が見えると思っていたが、 まったく見えないことを知って後悔している。 なんでこんな日にヒールの靴を 履いてきてしまったんだろう。 おろしたてのこの靴で海に向かうことを思うと 少々気が重くなった。 やっぱり東逗子駅に降りて、 銭湯にでも行った方がよかったかもしれない。 道中は昼真っ盛り。 3日前まで曇りか雨の予報だったのは どこへ行ってしまったんだろうか。 晴れ女は非常に助かることだけれど、 夏の日差しの強さは少々苦手だ。 もう少し曇り空であって

          Single ep.02 M.e.A(myselfstory)

          Single ep.01 -Sara

          この遠くとおくには、 私の国につながっているんだろうか。 星ばかりが映る海の水面上に波が打ち始めて、 ようやく夜が来た。 曇り一つない空なんて、ほとんど見たことが無い。 私の国はもくもくといつも雲を被っていて、 宇宙との距離を忘れてしまうほど空が見えないのだ。 ホステルには、一匹の白い猫がいる。 オーナーのネコだろうか。 それ以上に今訊きたいことがある。 果たしてここは、 私たちの泊まる場所で合っているのだろうか。 愛知といったら、グランドホテルや旅館のような佇まいを想像し

          Single ep.01 -Sara

          短編小説ep.05 -聖と藤

          -藤(fuji) 飛行機が飛んで行った。 私はジェットスターの白とオレンジが 雲の上へ消えていくのを見届けて、 ようやく安心した感覚をつかむことが出来た。 あの日から約一年半が経ち、 梅雨の季節が間近に迫っている。 しとしとと降る雨に少々億劫になりながらも、 仕事に行く為にがっつりと髪を縛り、 ボロボロの肌を労わりながら化粧に取りかかる。 ああ、元気かなあ、会いたいなあ。 そんな想いはずっと消えないままだ。 聖には、聖の人生がある。 そうわかっていてもやっぱり、 一緒に

          短編小説ep.05 -聖と藤

          短編小説 ep.06 -東里と美満

          00. 東里(Touri) 「ねえ見てよ、あの子。死んじゃったわ。」 テレビでは、横たわった男性が引きずられて どこかに連れて行かれている、 それを観ながら、 わたしは小さなglassにワインを注ぎ、 SNSをチェックしていく。 美満はポツりポツりと呟き始めた。 「私、無関心じゃないけど、 可哀想って思っても足がすくむわ。 日本人だからかしら。 異国の人々との交流機会が足りないからかしら。 怖くて仕方ないのよ。 今の時代また暴力が湧き上がってくることが。 どうかお願いだか

          短編小説 ep.06 -東里と美満