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僕とワールドカップ・1990イタリア大会❷ 「創造力の戦い〜ブレーメが笑った~」

どうもどうも、吉良です。
前回に引き続き、サッカーワールドカップ・1990イタリア大会の観戦記をお話ししていきます。

僕がイタリアに入ったのは決勝トーナメントから。
予選リーグから入っていた村上龍さんはすでにサッカーの虜になっていました。まもなく東ドイツと併合する西ドイツ国旗を持って西ドイツ代表、特にブレーメ選手を応援していました。

それから一緒にローマで準々決勝のイタリアvsアイルランド、ナポリに移動して準決勝のイタリアvsアルゼンチン、トリノで準決勝の西ドイツvsイングランド、そしてローマで決勝戦、西ドイツvsアルゼンチンの4試合を観戦しました。もちろん見ていない試合の時も毎試合皆でワイワイ、ワインを飲みながらTV観戦しました。懐かしい試合を思い出してみます。

イタリアvsアイルランド戦は、ASローマ、SSラツィオのホームグランドで大会を通じてのメインスタジアム、スタディオ・オリンピコで行われました。イタリアの応援と強烈なブーイングに驚かされました。まさに国と国の戦いという感じで、ワールドカップをライブで見る最初の90分が本当に感動の景色でした。

大会最優秀選手で得点王のイタリア代表スキラッチ選手のゴールが、僕のワールドカップライブ観戦史上初ゴールでした。その1点を守り切ったイタリアが準決勝に進出しました。

ゼンガ、バレージ、マルディーニ、僕の推しのドナドニ、ロベルト・バッジオ、スキラッチと、イタリア代表のメンバーは豪華な上にあまりにカッコ良く、将来プロデュースすることになるLEONの原型、イタリアのやさ男たちのベースイメージになりました。サングラスにアルマーニのスーツ、村上龍さん曰く「スキラッチを除いて皆、カッコよすぎだよね、スキラッチを除いてだよ」と大笑いしていました。

イタリアワールドカップはアルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナの人生を変えた大会とも言われています。まさにその"マラドーナの人生を変えた試合"の生き証人になることができました。

SSCナポリのホームグランドのスタディオ・サン・パオロは本当に美しいスタジアムでした。この試合のキックオフが夕方だったので、丁度夕日がスタジアム後方の像にあたり、その幻想的な輝きを背景にアベマリアの曲が流れた時は「やっぱりイタリアはクラシカルでいいね」と村上龍さん共々感動に酔いしれました。

SSCナポリに所属し、89-90年のセリエA優勝へ邁進していたアルゼンチン代表のマラドーナにとってナポリでイタリア代表との試合はあまりに酷な状況でした。ゲームはPK戦にまで持ち込まれイタリア代表は敗退しました。マラドーナに浴びせかけられたブーイングはとても悲しく、村上龍さんも言葉すくなでした。

その後紆余曲折の人生を送ったマラドーナは2020年11月に60年の人生に終止符を打ちました。マラドーナに最大限の敬意を示したナポリはスタディオ・サン・パオロをスタディオ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナに変更、マラドーナスタジアムが誕生しました。

この大会で生まれたスーパースターといえば、イタリア代表のスキラッチとイングランド代表のガスコインでしょう。そのガスコイン選手がもっとも輝いた試合がトリノで行われた準決勝イングランドvs西ドイツ。

この大会前から西ドイツのブレーメの熱烈ファンと化し、西ドイツ国旗を持ってトリノのスタジアムに向かっていた村上龍さんに対して、僕はサッカーを始めたときからマンチェスター・ユナイテッドのジョージ・ベスト選手のファンだったので、イングランドを応援という競合感情で臨んだ試合観戦でした。

序盤から凄まじい攻守の切り替え、ブレーメ、マテウス、フェラー、クリンスマンなど組織的でパワフルかつ強固な精神を持つゲルマン魂のドイツに対し、切り裂くドリブルと抜群のセンスでグランド全体を動き回りリネカー選手へのスペースを創るガスコイン選手を中心としたグレートブリテン魂の激突は終了直前のリネカーのゴールでイングランドが同点に追いつき、延長戦に突入しました。

この時点で「創造力の頂点ともいえるサッカーが創り出す芸術」に観客は飲み込まれていました。西ドイツ国旗を振って応援していた村上龍さんも国旗を椅子の下にしまい「こんなにどちらが勝ってもいい、と思える試合なんてないよ吉良ちゃん!」とまさにグランドで両チームが繰り広げたショーを堪能しました。

結果はPK戦4-3で西ドイツが勝ちましたが、選手たちもわかっていたのか、試合終了後にお互いを称えあう姿に会場中がスタンディングオベーションをしていました。まさにラグビーで言う「ノーサイド」そのものでした。ここだけの話、村上龍さんも僕も涙がキラリでした。

(1990年のイタリア大会でW杯を制した西ドイツ代表・FIFA+より)

その日、トリノからミラノに戻りミラノオペラ座の横のイタリア料理はゲームの余韻をそのまま継続して興奮状態でした。美しいステンドグラスのレストランで飲んだDOCGワインは最高でした。

村上龍さんのおかげでイタリアワインのうんちくが増えました。やっぱりあらゆる知識が豊富にあるというのは魅力的です。ブルネロディモンタルチーノ、バローロ、バルバレスコ、ガヤ、キャンティ、村上龍さんに教わったDOCGワイン。それ以来ずっとイタリアワインが大好きです。

南イタリアのバ-リで行われたイタリアvsイングランドの三位決定戦は2-1でイタリアが勝ち、開催国の面目を保ちました。この試合はローマのホテルでゆったりと観戦。決勝戦にそなえました。

ローマのオリンピコ競技場で7月8日に行われた西ドイツvsアルゼンチン。アルゼンチン代表は準決勝のイタリア戦の激闘で4選手が出場停止、ワールドカップの決勝戦では前代未聞の2選手のレッドカード退場で11人対9人になり、攻めの西ドイツ、ベタ引きのアルゼンチンと攻防の変化がない試合になってしまいました。

後半、微妙なPKを村上龍さん推しのブレーメが決めて西ドイツが1-0で西ドイツとして最後の優勝をして、ジュールリメ杯を高々と掲げました。あまり盛り上がらないディフェンシブな試合でしたが、いつもクールで笑顔を見せた事がないブレーメがカップを掲げた時に笑顔を見せた瞬間「ブレーメが笑った!」と絶叫した村上龍さんはこのFIFAワールドカップイタリア大会の雑誌企画タイトルを「創造力の戦い〜ブレーメが笑った〜」とその場で決めていました。

「創造力の戦い」
サッカーを表現するのにこれほど素晴らしい言葉があったでしょうか。やっぱり村上龍さんの才能は凄いと感じました。

村上龍さんと巡ったイタリアワールドカップは最高でした。子供の頃から憧れていたサッカーの最高の舞台ワールドカップの地に立ち、それも大学時代からの憧れの村上龍さんと共に。こんな夢みたいなことも「想っていたからこそ実現した」と感じています。だから学生たちに言うのです「想いは大切」と。

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