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オススメ短編小説

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自信のある短編小説をどんどんじゃんじゃん追加していきます!
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#掌編小説

短編小説『地面着陸』

短編小説『地面着陸』

月面着陸をなんとなく夢見ていた。
クレーターの真ん中にでっかい旗を刺す奴がやりたかった。

でも正直宇宙飛行士になろうとは思わない。
無重力の生活は怖いし、絶対普通のラーメンとか食べたくなるし。
なにより自分の家以外であんまりトイレに行きたくない。

「…だからビジネス始めてお金持ちになろうって?」
「うん。それならすぐ帰ってこれるじゃん?」
「いやまあ気持ちはわからんでもないけどさ。」
「でしょ

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短編小説『考察』

短編小説『考察』

バイトの帰り、同じ高校だった大学生の友人から珍しく話したいことがあるとカラオケに誘われた私。
趣味がないはずの友人なのに、今日はいつもとは違ってキラキラした目をしている。
「なあ、最近ハマっているものある?」
珍しい。
趣味がなくて本気で人間観察を趣味にしようとした結果、怪しい見た目になりすぎて観察される側みたいになった友人がキラキラした目でそんなこと聞いてくるなんて。

「最近…まあずっと漫画は

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【掌編小説】季分屋の君は。(333文字)

【掌編小説】季分屋の君は。(333文字)

君は春の温かい風が好きという。
柔らかな陽の光や、桜の降る春という季節を芯から愛している。

君は夏の爽やかな風が好きという。
ずっと元気に照りつけてくる太陽や、沈むのがゆっくりな夏の夕日を芯から愛している。

君は秋の冷えた風が好きという。
赤く染まって地面に落ちる紅葉や、澄んだ空気で綺麗に輝く星空を芯から愛している。

君は冬の切り裂くような風が好きという。
しんしんと降り始める雪や、冷えて凍

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【掌編小説】レモンって何の味だっけ

【掌編小説】レモンって何の味だっけ

夏休みも終盤、私は今年出来た同じ高校の彼と地元の小さな神社でやっているお祭りに来ていた。

「ねえ、かき氷のシロップって全部同じ味らしいよ。」
もう使い古されたような雑学をあたかもとれたて新鮮かのように紹介してくるキミの表情に笑ってしまう。

私が食べたいものに指を指すと、キミは屋台のいかついおっちゃんにイチゴとレモンのかき氷を頼む。
「え、てかレモン食べたい。あとで一口交換しよ。」
さっきの自慢

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