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オススメ短編小説

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自信のある短編小説をどんどんじゃんじゃん追加していきます!
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#恋愛小説

短編小説『地面着陸』

短編小説『地面着陸』

月面着陸をなんとなく夢見ていた。
クレーターの真ん中にでっかい旗を刺す奴がやりたかった。

でも正直宇宙飛行士になろうとは思わない。
無重力の生活は怖いし、絶対普通のラーメンとか食べたくなるし。
なにより自分の家以外であんまりトイレに行きたくない。

「…だからビジネス始めてお金持ちになろうって?」
「うん。それならすぐ帰ってこれるじゃん?」
「いやまあ気持ちはわからんでもないけどさ。」
「でしょ

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短編小説「この星が終わる前に」

短編小説「この星が終わる前に」

星が終わる前にした約束、僕はそれをはっきり覚えている。
住んでいた場所、好きだったもの、よく聞いていた音楽は何も覚えていないというのに。

確かに存在しない記憶の中に微かに眠っている女性の声。
「生まれ変わってもお互い好きでいようね。」
この言葉だけは輪郭ごと覚えている。

「それで軽音部入れなかったんだ…。」
カラカラな空の下。
夏休みも終盤、たまたま家の前で出会った幼馴染のユウカと家の前の階段

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【掌編小説】レモンって何の味だっけ

【掌編小説】レモンって何の味だっけ

夏休みも終盤、私は今年出来た同じ高校の彼と地元の小さな神社でやっているお祭りに来ていた。

「ねえ、かき氷のシロップって全部同じ味らしいよ。」
もう使い古されたような雑学をあたかもとれたて新鮮かのように紹介してくるキミの表情に笑ってしまう。

私が食べたいものに指を指すと、キミは屋台のいかついおっちゃんにイチゴとレモンのかき氷を頼む。
「え、てかレモン食べたい。あとで一口交換しよ。」
さっきの自慢

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【短編小説】猫背の君は僕より背が高い

彼女は今日もキーボードをたたいている。
「ふあぁ...ねっむ。」
「お疲れ様…。」
「あぁ、そこ置いといて。」
前に出た首と丸くなった背中は今日も美しい。
「…ありがと。」
「え、あ、うん。…お風呂もうすぐ沸くよ。」
「ん。りょーかい。」

僕はコーヒーを置いて部屋を出る
最近、目を合わすことが少なくなっている。
仕事が忙しいらしく、一緒に何かをするということが出来ない。

でもそれでいいんだ。

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【短編】転は転がるまま

「…はいー!私のかちー!」
彼女は笑顔でこっちを向く。

「いやー強い….。」
「いや拳太が弱すぎるんだって!」
彼女と住み始めて2か月、僕らは結構な頻度でゲームの大会をやっている。

「いやそれにしてもさ、めっちゃレベル上がってない?」
「まぁちょっと練習してるからね~。」
彼女は腰に手を当て自慢げに語る。

2か月前….
「ただいま....。」
「おかえり!ってそれ!」
彼女は僕が右に抱えてた

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