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オススメ短編小説

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自信のある短編小説をどんどんじゃんじゃん追加していきます!
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#創作

短編小説『地面着陸』

短編小説『地面着陸』

月面着陸をなんとなく夢見ていた。
クレーターの真ん中にでっかい旗を刺す奴がやりたかった。

でも正直宇宙飛行士になろうとは思わない。
無重力の生活は怖いし、絶対普通のラーメンとか食べたくなるし。
なにより自分の家以外であんまりトイレに行きたくない。

「…だからビジネス始めてお金持ちになろうって?」
「うん。それならすぐ帰ってこれるじゃん?」
「いやまあ気持ちはわからんでもないけどさ。」
「でしょ

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短編小説『考察』

短編小説『考察』

バイトの帰り、同じ高校だった大学生の友人から珍しく話したいことがあるとカラオケに誘われた私。
趣味がないはずの友人なのに、今日はいつもとは違ってキラキラした目をしている。
「なあ、最近ハマっているものある?」
珍しい。
趣味がなくて本気で人間観察を趣味にしようとした結果、怪しい見た目になりすぎて観察される側みたいになった友人がキラキラした目でそんなこと聞いてくるなんて。

「最近…まあずっと漫画は

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短編小説「ビタースパーク」

短編小説「ビタースパーク」

「…んぅ。」
だらけた毛布を拾い集め、くるまってやり過ごす冬の不快な朝。
オフタイマーのせいでだんだんと冷え込む室内が億劫になり今日も嫌々目を覚ます。
冬休みが終わってから数日、学園生活にも終わりが告げられそうな高校3年の1月上旬。
ベランダで靴を整える父、夜勤の疲れで寝ている母。
今この家で生きた目をしているのは僕だけだ。

菓子パンをほお張りながら、今日の時間割に教科を入れ替える。
ちゃんとし

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短編【入道雲が見たいので。】

短編【入道雲が見たいので。】

「あ、おーい!葵さん!」

俺は大きな声で制服の女の子を呼んだ。

彼女は先日引っ越してきた高校二年生の俗にいうJKだ。

「あ、日向さん!」

あ、俺の名前は日向蘭。めちゃ女の子っぽい名前だけどちゃんと男。今年で19。

葵さんはこっちに来た。

揺れる髪は暖かい風に美しい香りを乗せた。

「この町は慣れた?」

「結構なれてきました!」

まあ、町と言っても正直かなり田舎だ。

学校まではバス

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