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(冥)随想

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記事一覧

【随想】なぜ紙の本が良いのか

【随想】なぜ紙の本が良いのか

 電子書籍がすっかり一般化しても、私は変わらず紙の本が好きだ。特に小説を読むときには(電子でしか読めない作品でない限り)必ず紙の本と決めている。その理由を4つの観点から紹介する。

1.厚みによる効果 当然ながら紙の本はモノとして存在するため、ひと目で厚みが判る。これによる効果が大きすぎる。

 厚みとはすなわち量感だ。電子でもデータとしてページ数や文字数は判るが、そこには視覚的な把握が伴わない。

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【随想】ミステリを読むことのすすめ

【随想】ミステリを読むことのすすめ

1.読書すると得をするよ「○○しないなんて損してるよ」って云い回しが苦手だ。

 ○○しない人は、○○することにより生じる効果を体験し得ないため、それを損とは自覚しない。損なんて云われても、ほっとけよボケとしか思わないだろう。人になにかを推奨するなら、素直に「○○すると得をするよ」と云えばいいのだ。

 読書すると得をする。

 実は、読書する人には、”会話している相手が読書する人なのかどうか”が

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【随想】長編小説の書き方

【随想】長編小説の書き方

 ツイキャスでご質問いただいて答えた内容を、こちらにも書いておく。これが正しいのだと主張するつもりはなく、おすすめするつもりもない。あくまで私の小説について考えるときの参考として読んでいただければと思うが、

 私の長編小説の書き方は、ミステリを考えて、物語を見つけるということに尽きる。

1.ミステリを考える まずはミステリとして、なにを書くかを考える。テーマとか、構造とか、トリックとか、これら

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【随想】メタ意識のすすめ

【随想】メタ意識のすすめ

 メタレベルという言葉がある。

 これは”一段高いレベル”という意味で、小説や漫画、映画などの創作においては、〈物語〉に対する〈作者〉がメタレベルとなる。

 そんなメタレベルについての意識=メタ意識は、しかし充分でない場合が多い。メタ意識とは自覚だ。自覚なくして責任は持てない。メタ意識を徹底することではじめて、作者は自らの創作のすべてに責任を持つことができる。

 そして私が思うメタ意識の目的

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【随想】魔法がないから面倒くさい現象

【随想】魔法がないから面倒くさい現象

1.生活と観念 ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがあるだろうか。

 主人公ラスコーリニコフが「人類の歴史や社会にとって大きな価値を生むような非凡なる者は、そのために小さな罪を犯したっていい」みたいな観念的思想で高利貸しの婆さんを殺した結果、しかし自らの思想とは裏腹に罪を犯したことによる苦悩から無様にさまよう羽目になる話だ。

 この小説、読んでない人や読んだ気になっているだけの人からは、

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