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凛野冥という筆名で小説を書いています(プロフィールに設定している記事をご参照ください)。noteでは短編小説、随想、小説や映画の雑感、その他。

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【小説】空気読め

 今年の春に入学した女子中学校のクラスで、私がいつも仲良くしていた友達四人が立て続けに自殺した。まず安達玲衣が浴槽で手首を切って、翌日に石垣美雨がマンションの屋上から飛び降りて、その翌日に上島優が自室で首を吊って、そのさらに翌日に浦野麻央が薬を大量に飲んで死んだ。  この友達グループの中で私だけが残っているので、クラスの人達はみんな口には出さないものの、『次は押井さんかぁ』という目で私を見てくる。  いや、知らないし。死にたくないし。  て云うか、どうして玲衣と美雨と優

    • 1/14(日)文学フリマ京都で本を出します

      1/14(日)の 文学フリマ京都8に〈新生ミステリ研究会〉の出店名で参加します。文学フリマへの参加はこれが初めてです。 凛野は『名探偵・桜野美海子の最期』を本にします。ネット上で公開している本編および短編の他に、新たに書き下ろした短編4本を収録した完全版です。イラストはsio5half様(X(旧Twitter)@sio5half)に描いていただきました。以下は広告チラシです。 凛野冥作品の入門編として書いた小説ですので、はじめて本にするのはやはりこれだろうとすぐに決めまし

      • 映画『首』に見た、過剰化されたブラックジョークが至る境地

         北野武監督最新作『首』を劇場で鑑賞し、大変なショックを受けた。失望でも絶賛でもない。賛否の尺度なんか後回しで、先にきたのはただ衝撃と動揺それ自体だった。  北野武作品はこれまで何本も観てきたし、暴力的だったり悲劇的だったりする映画には慣れているのに、どうして今作にこれほどショックを受けたのか。直接的なネタバレを避けながら、以下に詳しく書いていこうと思う。 1.本作の位置づけ 北野武映画は、身も蓋もない暴力が客観的・俯瞰的な視点によって、時にユーモア、時に無常観へと繋がる

        • M-1グランプリ2022に出場した話

           M-1グランプリ2023が既に始まっていて、いまは1回戦がいよいよ終盤を迎えているところだ。現在は活動休止中なのだけれど、昨年の私はお笑いコンビを組んで漫才に取り組んでいて、M-1グランプリ2022にも出場した。  相方は高校からの知り合いで、私が「人生変えてやる!」と勢い込んで誘ったら乗ってくれた。その年の1月1日、他にも数人をまじえ地元の居酒屋で飲んでいたときのことだった。前月にM-1グランプリ2021のテレビ放送を観ていた私は途中でふと「出たいな」と思い立ち、今度会

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          【随想】なぜ紙の本が良いのか

           電子書籍がすっかり一般化しても、私は変わらず紙の本が好きだ。特に小説を読むときには(電子でしか読めない作品でない限り)必ず紙の本と決めている。その理由を4つの観点から紹介する。 1.厚みによる効果 当然ながら紙の本はモノとして存在するため、ひと目で厚みが判る。これによる効果が大きすぎる。  厚みとはすなわち量感だ。電子でもデータとしてページ数や文字数は判るが、そこには視覚的な把握が伴わない。紙の本において量感は重要な第一印象である。それが損なわれては本との出会いにおいて

          【随想】なぜ紙の本が良いのか

          映画『君たちはどう生きるか』は、こう楽しめばいい

           宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』、私は劇場で2回鑑賞した。  はじめに断っておくと、私はこの作品に関して完全な肯定派だ。宮崎駿監督の長編アニメーション作品はこれまですべて観ていて、その流れも踏まえると今この作品がつくられたことには大変な感慨を抱くし、作品自体の出来栄えも素晴らしい。以下に詳しく書いていこうと思う。 *「2.ストーリー全体の構成」以降はネタバレへの配慮をせず書きますのでご注意ください。 *宮崎駿監督はこれまで「崎」の字だったのが本作では「﨑」表記と

          映画『君たちはどう生きるか』は、こう楽しめばいい

          公開中の凛野冥作品ガイド

          ネット上に公開している作品の一覧です。複数のサイトに跨っていることもあり、「どこで何を読めばいいのか」が分かりやすいように整理しました。どうぞお役立てください。 【この一覧の凡例】上から完成年が新しい順に並んでいます。各タイトルの右に括弧書きしてあるのが完成年で、その下にはキャッチコピーをつけています。 掲載サイト ひと文字表記で、下記のとおり対応しています。リンクを設定していますので、ここから飛んで作品をお楽しみいただけます。 小:小説家になろう。文字をぎっしり詰め

          公開中の凛野冥作品ガイド

          【随想】ミステリを読むことのすすめ

          1.読書すると得をするよ「○○しないなんて損してるよ」って云い回しが苦手だ。  ○○しない人は、○○することにより生じる効果を体験し得ないため、それを損とは自覚しない。損なんて云われても、ほっとけよボケとしか思わないだろう。人になにかを推奨するなら、素直に「○○すると得をするよ」と云えばいいのだ。  読書すると得をする。  実は、読書する人には、”会話している相手が読書する人なのかどうか”が分かっている。私の場合、五分ほど会話すれば分かる。読書しない人は、気付かないうち

          【随想】ミステリを読むことのすすめ

          【随想】長編小説の書き方

           ツイキャスでご質問いただいて答えた内容を、こちらにも書いておく。これが正しいのだと主張するつもりはなく、おすすめするつもりもない。あくまで私の小説について考えるときの参考として読んでいただければと思うが、  私の長編小説の書き方は、ミステリを考えて、物語を見つけるということに尽きる。 1.ミステリを考える まずはミステリとして、なにを書くかを考える。テーマとか、構造とか、トリックとか、これらは考える部分だ。  大抵はミステリに関する問題意識が切っ掛けとなる。私はミステ

          【随想】長編小説の書き方

          【随想】メタ意識のすすめ

           メタレベルという言葉がある。  これは”一段高いレベル”という意味で、小説や漫画、映画などの創作においては、〈物語〉に対する〈作者〉がメタレベルとなる。  そんなメタレベルについての意識=メタ意識は、しかし充分でない場合が多い。メタ意識とは自覚だ。自覚なくして責任は持てない。メタ意識を徹底することではじめて、作者は自らの創作のすべてに責任を持つことができる。  そして私が思うメタ意識の目的とは、物語を単なる嘘にしないことだ。  この文章は、そんなメタ意識の習得を目的

          【随想】メタ意識のすすめ

          【小説】マイティー教

           僕の高校では放課後になると校舎内をオートバイで爆走する集団がいて、自分達のことをマイティー教と称している。  教祖は三年生の長谷川マイティー。  長谷川マイティーはどっかの国の国王の娘で、教師も含め誰も注意することができない。彼女の機嫌を損ねようものなら戦争になりかねないし、そうじゃなくてもその国からしか輸入できない燃料があるだとかで、良好な関係を保つ必要があるのだ。  よってマイティー教じゃない生徒は、マイティー教の生徒と下手に関わらない方がよい。さいわい、マイティ

          【小説】マイティー教

          【小説】階段デート

           僕は十階だろうと二十階だろうと必ず階段でのぼるようにしていて、よく周りから「健康のため?」と訊かれるけれど違う。二十歳までは、僕も階段を使っていた。こうなったのには理由があるんだ。  みんなも憶えているだろう。僕はあのとき十六歳だった。朝起きると、『世界中の階段が一段少なくなった』というニュースで大騒ぎとなっていた。事実、僕の家の階段も一段少なくなっていた。通学路の途中にぴったり百段の階段があったけれど九十九段になっていたし、学校も各階そうなっていて、そのぶん天井が低くな

          【小説】階段デート

          【小説】肉坂

          ※※※※ これは、高校でクラスごとに劇をやることとなった際に私が書いた脚本を、ナレーション(ステージ脇に立っている人が読み上げ)部分を地の文としたほか一部修正し、短編小説にしたものです。オリジナルのストーリーなんてつくれないだろうと思われたのか、何の話をやるのかは決められてしまっていて、私のクラスは「赤ずきん」の劇だと云われたので、こう仕上げました。ちなみに次のクラスは「浦島太郎」でした。 ※※※※  まだ人類が天動説を信じて疑わなかったはるか昔、太平洋にとある島があっ

          【小説】肉坂

          【随想】魔法がないから面倒くさい現象

          1.生活と観念 ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがあるだろうか。  主人公ラスコーリニコフが「人類の歴史や社会にとって大きな価値を生むような非凡なる者は、そのために小さな罪を犯したっていい」みたいな観念的思想で高利貸しの婆さんを殺した結果、しかし自らの思想とは裏腹に罪を犯したことによる苦悩から無様にさまよう羽目になる話だ。  この小説、読んでない人や読んだ気になっているだけの人からは、この「人類の歴史や社会にとって~」の思想だとか、「罪に対して受けることになる罰が

          【随想】魔法がないから面倒くさい現象

          長編作品の記録

          これまでに書いてきた長編小説の記録です。(2024/7/18更新) なお、ネット上に公開している作品はこちらで紹介しています。 ▷高校入学 【15歳】『宵闇に赤』  凛野冥として初めて書いた小説。これ以前にも色々と書いていたが、意識的にミステリを書いていくようになって、この筆名に。冷徹な主人公、異様な恋愛観を持ったヒロイン、猟奇的な連続殺人事件、破滅的な結末、メタ構造など、今に通じる凛野の作家性がだいたい揃っていた。 【16歳】『二千年姫の死亡』  二千年の時を生きる

          長編作品の記録

          好きな小説/映画ベスト100

          変動があった場合には更新していきます。 【好きな小説ベスト100】1.夏と冬の奏鳴曲(麻耶雄嵩) 2.バイバイ、エンジェル(笠井潔) 3.虚無への供物(中井英夫) 4.痾(麻耶雄嵩) 5.暗闇の中で子供(舞城王太郎) 6.春にして君を離れ(アガサ・クリスティ) 7.氷の涯(夢野久作) 8.吸血鬼と精神分析(笠井潔) 9.ジョーカー 旧約探偵神話(清涼院流水) 10.罪と罰(ドストエフスキー) 11.九十九十九(舞城王太郎) 12.黒死館殺人事件(小栗虫太郎) 13.魍魎の匣

          好きな小説/映画ベスト100