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長編作品の記録

これまでに書いてきた長編小説の記録です。(2024/7/18更新)

なお、ネット上に公開している作品はこちらで紹介しています。

▷高校入学

【15歳】

『宵闇に赤』
 凛野冥として初めて書いた小説。これ以前にも色々と書いていたが、意識的にミステリを書いていくようになって、この筆名に。冷徹な主人公、異様な恋愛観を持ったヒロイン、猟奇的な連続殺人事件、破滅的な結末、メタ構造など、今に通じる凛野の作家性がだいたい揃っていた。

【16歳】

『二千年姫の死亡』
 二千年の時を生きる〈姫〉によって統治される孤島で起きる大量殺人事件の犯人に仕立て上げられた少年が、島民から逃げ回りながら、引きこもりの女の子と共に事件を解決しようとする。思い付けるだけのガジェットや技巧をぶち込んだ、幕の内弁当みたいな小説。

『無限亡霊の未練』
 田舎町の高校を舞台に、幽霊によってクラスメイトが一人また一人と消されていくなか、高校生達が呪われた過去と向き合うミステリ。ホラーのお約束を網羅的に取り入れていることと、終盤に生者と死者が一斉に逆転する叙述トリックが肝だった。

『巡る因果の悲劇』
 タイムリープを扱ったミステリ。過剰な量の伏線とその回収に主眼を置いた力作だが、タイムリープものだと明かされるのが終盤のため、卑怯な感じになってしまったのが反省点。

【17歳】

『聖虐殺』
 サバイバルもののフォーマットでミステリを展開した。誰かを殺すとその人がはじめから存在しなかった世界に書き換わるという条件を神により与えられた少年少女が、それぞれの目的から計略を巡らせ殺し合いをする。

『閉じ込められた祭の夜に』
 『二千年姫の死亡』と同じ舞台で、時系列は過去にあたる。記憶を失った女の子が長いこと地下に監禁されていたが、ある日牢の鍵が開いていて、自分を監禁していた人々が皆殺しにされている。島では特別なお祭りが迫っていて……という話。

▷高校卒業
▷大学入学・上京

【18歳】

『凄惨、無慈悲な日曜日』
 自らの天才性を証明するために完全犯罪を目論む少年と、彼に献身的なサポートをするストーカー女子と、生意気な女子中学生探偵。過去の未解決事件〈シホちゃんの日曜日〉も絡み、時系列が分割される叙述トリックによってひとつの話が二つになると、互いが互いの解決編になっている。はじめて出版社の人からご連絡いただき、池袋の喫茶店で長話した思い出がある。

【19歳】

『少女の憧憬は鳥籠の外』
 四百人の妹が「お兄様」「お兄様」と云いながら襲い掛かってくる、パニックムービー的なミステリ。大都会と怪しい因習の残る村、さらには現在と過去が交錯する複雑な構成で、五重の叙述トリックを仕掛けた。

『聖少女堕落』
 主人公は小説家一家の次女。偉大な小説家である祖父が秘密裏におこなっている〈聖少女制作〉に触れて、夢と現実の境を失っていく。蟲だらけの珈琲、喉を焼く煙草、癇癪持ちの母、卑屈で厭らしい父、虚無主義の姉、性的に放縦な妹、正体不明の醜い老婆、目を覆いたくなる拷問など、生理的嫌悪感でイッパイになる。

『名探偵・桜野美海子の最期』
 桜野最期。稀代の推理小説家が建てた窓のない塔に、五人の探偵とその同伴者が集められ、クローズド・サークルでの連続殺人事件に発展する。凛野冥作品の入門編になればと思い、後期クイーン的問題をはじめ基礎的な要素を詰め込んだ。終わらない謎解きが終わらない話。オーディオドラマ(こちら)にしていただいた。

『ある慈悲深き恋の結末』
 慈悲結末。青春は閉塞感で以て進み、喪失感で以て終わる。叙述トリックは作者・読者間のやり取りとなって物語が置き去りなのが嫌だと感じ、物語・読者間の叙述トリックを書いた。内容、分量ともに読みやすいと思う。

『美化委員会の不浄理論』
 奇妙な事件の数々に不条理な解答を与えていく委員会を描いた連作短編。ミステリはどこまで不条理でも展開できるのか、みたいな試み。特に『完璧なクラスに積み上がった肉片の山』はよく出来ていると思う。いずれは完結編『美化委員会の清掃性創生』も書きたい。

『一息に殺して欲しい症候群』
 通り魔殺人事件の犯人が自分と同じ思想の持ち主であると考えた主人公は、事件を追う探偵志望の女子と協力関係を結ぶ。被害者たちは一息に殺されることにより救済されたのだろうか。死について最もよく考えていたころかも知れない。陰鬱な内容だけれど、特別な小説。

【20歳】

『環楽園の殺人』
 完全なクローズド・サークルを制作しようと思った。また、あらゆるトリックがやり尽くされた今、形而上ミステリとでも呼ぶべき形態に新たな可能性を感じたので、グノーシス主義を主な題材として独自の理論を構築した。観念の領域において後期クイーン的問題の超克を目指した小説でもある。

『戦闘女子高生の秘密』
 天ノ巣シリーズ1作目。魔獣と呼ばれる存在との戦闘を義務付けられた女子高生達が、学園で起きる殺人事件に翻弄されるうち、世界の秘密を知ってしまう。スケールの大きなSF的仕掛けを、ミステリの定番ネタ(密室殺人や死体誤認)の背景として消費する贅沢な試み。‬

『彼岸邸の殺人』
 行方不明の恋人を探す主人公が山奥の屋敷に辿り着くと、其処では記憶を失った恋人が尼僧達によって生き仏として崇められていた。転生と再会を巡る連続殺人事件。『環楽園の殺人』と対になる小説。こちらは大乗仏教が主な題材で、同じく本格ミステリが神話と接続する。

『咲き乱れたグロテスク譲』
 グロ嬢。譲シリーズ1作目。芸術の神・スゥンナクッダ子が脳内に住み着いた主人公が、殺人芸術〈グロテスク譲〉を完成させるために奔走するうち、人類の命運に係る大事件に巻き込まれていく。宗教、哲学、歴史学、宇宙論等をクロスオーバーして突き進む。ブラックホールを利用した密室トリックがお気に入り。

『踊り狂うファンタジア譲』
 ファン嬢。譲シリーズ2作目。町中に溢れた殺人鬼から逃げつつ殺し合いをしている妖精たちのひとりを知人の館に匿うけれど、館はすべての部屋で過去に未解決事件が起きていて、名探偵が全事件を再現しようと劇団員を引き連れてきたらその中に敵の妖精や殺人鬼が潜んでいたせいで予定が狂い、展開していく。

『嗚呼、夜の帳が降りる』
 交霊会を発端として起こる連続殺人事件に翻弄される高校、隔離病棟に怪しい秘密を抱えた精神病院、魔術の実践に憑りつかれた挙句に決定的な破滅を迎える一族。複雑に絡み合う物語は、やがて夜の帳が降りるその瞬間へと収束していく。心霊主義、エジプト神話、魔女狩りなどを題材にした大作。

【21歳】

『マイス・メガロマニアック』
 マイスメガロ。自殺志願者が集まる館にて、モーツァルトのレクイエムと共に進行する連続密室殺人事件。小説家になるという夢に破れた主人公を責め殺そうとする妄想の地獄。果てに見出された一縷の希望。当時の私が自らのすべてを懸けた大巨編であり、最も思い入れの強い作品。

『破滅式スプリングメモリアル』
 破滅メモリ。式シリーズ1作目。田舎町の猟奇殺人に関わってしまったのが最初の過ち。ある姉弟を破滅させた春。事件の進行が淡く、夢のようでありながら、破滅的な結末に至る落差が特徴。高度なミステリを展開しながら、四季をテーマに文学性を強く意識しているシリーズ。

『虚無式サマーバニラスカイ』
 虚無バニラ。式シリーズ2作目。犯罪集団〈夜の夢〉が巻き起こす連続殺人。姉を失った少年が彷徨った虚無の夏。同時進行する複数の連続殺人が収束していくなかで何度もどんでん返しがあって技巧面でも優れているけれど、それよりも全体を支配する焼け付くような虚無感が、私が高校生のときの夏休みそのままで気に入っている。

『堕落式オータムキングダム』
 堕落ダム。式シリーズ3作目。本格ミステリ式犯罪によるテロ勃発。堕落の果て、少年が王国を築く秋。事件の数が多すぎて、解決したりしなかったり。そして本命が明らかになったとき、怒涛のクライマックスに流れ込む展開がスリリングだと思う。いずれはシリーズ最終作『終局式ウィンターミーティア』まで完成させたい。

【22歳】

『甘施無花果の探偵遊戯』
 無花果遊戯。『名探偵・桜野美海子の最期』の続編で、探偵・甘施無花果と小説家・塚場壮太のコンビによる異形の探偵譚。前作で基礎を押さえたため、かなり自由に応用編をやっている。特に海野島編と探偵学校編が好き。いずれは続編『白山書子は探偵がしたい』も書きたい。

『探偵・渦目摩訶子は明鏡止水』
 渦目止水。学生生活の最後にそれまでの集大成として、メタミステリを極限まで研ぎ澄ませた。終わらない謎解きが終わる話。後期クイーン的問題の解消に成功している。エピローグは、これから社会人になる私はすべてを受け入れるが、しかし自分が本当にやりたいことだけは諦めないという決意表明でもある。第6回新潮ミステリー大賞で最終候補になった。

▷大学卒業
▷就職

【23歳】

『堕天の散りばめ』
 堕天ばめ。本物の天使と偽物の神と人間達が奏でる神格ミステリ。一見すると徹底的に悪趣味だが、救済なんてない世界でそんな人間を肯定する話。仕上がりは私流の思想小説となった。雨奈さんが語り部のTrack3がお気に入り。

【24歳】

『華の幼少に帰り咲き』 第1部:Zygomycota
 幼少帰咲。国内随一の犯罪街を舞台に、華が咲いて神懸かりとなった人々が巻き起こす事件の数々に挑むボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ。はじめて意識的にエンタメに挑戦した。いずれは第2部のCalendulaも書きたい。

【25歳】

『聖JKとアンチミステリ御破算』
 JK御破算。うりえる、がぶりえる、らふぁえる、みかえるに対応する四人の女子高生をめぐる連続殺人事件。絶望では安すぎる、破格のメタ女子高生ミステリ。『虚無への供物』の呪いを解き、すべてのミステリひいては小説というものを肯定する小説。

『GAOにえもいわれぬ横臥』
 GAO横臥。催眠術師の荻尾央、改造人間の郷義吟、霊媒体質の天亜愛の3名からなる移動型探偵事務所GAOが数々の事件をテンポ良く解決していく陰惨ポップなアーバンミステリ。あなたにとって神様みたいな小説。

『二足歩行型ガトーショコラ』
 二足ガトー。失踪した恋人の詩集に沿って進行する連続殺人事件を描いたポエティック・アナーキーミステリ。パズル性の高いミステリを展開しながらも、恋愛観病み病みな私流のナンセンス式文学として最上の仕上がり。

【26歳】

『探偵・宮代千鶴にテコを入れる』
 宮代テコ。有能すぎてどんな事件でも即座に解決してしまうことから、”小説にしても面白くない探偵”と云われる宮代千鶴。幼馴染で推理作家志望の浦羽道雄は彼女を苦戦させるために証言を偽るが、それが悪夢の始まりだった。前代未聞のテコ入れミステリ。

【28歳】

『小説と羊の肉』
 色々なことがあり、6年間務めた会社を辞める前に書いた小説。今にして思えば、私は初めてスランプというやつに陥っていて、そこから脱出できたときにこの小説を書き終えたのだと思う。

▷退職

【29歳】

(タイトル非公開)
 探偵小説をこよなく愛する田舎町の性悪JKが世間様に叩きつける青春ミステリ文学。何もおろそかにせず、持てるすべてを懸けて、私が信じるミステリを実現できた。これまでの創作の総決算。最高傑作①

(タイトル非公開)
 本格ミステリに徹した先の新天地。桜野美海子を探偵役に据えたシリーズ二作目。ただし時系列は前作『名探偵・桜野美海子の最期』よりも過去。二作目を書くなら真正面から本格ミステリで越えなければならないと考え、前作の執筆から10周年の節目にようやく達成できた。最高傑作②

以上

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