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#ファンタジー小説部門
『転生しても憑いてきます』#60
場はさらに緊張感が高まっていた。
黒いローブの人(?)達は僕らを囲うように立っていた。
ビーラはそいつらに向かって舌打ちをした。
「カース、離れるんじゃないぞ」
この言葉に僕はウンと頷いた。
マールは赤い目をギョロギョロさせながら手の甲を叩いた。
「いやはや、素晴らしい絆ですな。
人も魔物も嫌いだったエルフ族の女が、人間どもを守るとは……滑稽にもほどがある。
まぁ、間違いなく後悔する
『転生しても憑いてきます』#59
突然何を言い出すんだ。
ケーナにも死霊が見えている?
そんな馬鹿なことがあるか。
ケーナとは初対面なのに知ったような口を聞いて。
僕が一番彼女の事を理解しているんだ。
小さい頃からずっと側にいたから誰よりも彼女の事を知っているんだ。
ケーナは人一倍母性愛が溢れている人だから、秘密を打ち明けようがしまいが、僕が頼めばお風呂にも入ってくれるし、一緒に寝てくれる。
それがケーナなんだ。
『転生しても憑いてきます』#58
もうどれくらいの時間が経ったのだろう。
そろそろ村についてもいい頃なはずだ。
やっぱり、ビーラは嘘つきで、村に行くとか言って、神様の所に連れて行ってるのかもしれない。
そして、また棺桶に生きたまま入れられるんだ。
僕は脱出を試みようかなと一瞬考えたが、奥に行けば胃液で溶かされるし、前は灼熱の壁で突破できそうになかったので、大人しく待つ事にした。
頭の中では、色々と策を考えていた。
口
『転生しても憑いてきます』#57
どこか懐かしい呪文が聞こてきたかと思えば、怨霊達の悲鳴が響き渡った。
「何を怯えている?! さっさと殺せ!」
神様の怒鳴り声が聞こえ、おかっぱの奇怪な笑い声がした。
「ピカーラ! ピカーラ!」
が、謎の声が呪文を唱える度に、「グギャッ!」「ブジュッ!」という断末魔が聞こえた。
「えぇい、離せ! ワシが相手してやる!」
神様がそう叫ぶと、雷鳴みたいな音が轟いたが、「ピラピカーラ!」という声の
『転生しても憑いてきます』#56
神様だって?
女王よりも更に上が存在するのか。
一体誰だろうと思っていると、モジャモジャで真っ黒な髭を生えた老人が姿を現した。
……あれ? あの人、どこかで見覚えがあるぞ。
でも、随分遠い昔の記憶……五歳? いや、違う。
三歳? いや、もっと前だ。
生まれる前……前世にはいなかったような。
……あ、思い出した!
そうだ。この世界に来る前に会った。
僕が怨霊からの呪いを取り除いて
『転生しても憑いてきます』#55
そこからは三半規管が狂い、世界中がグルグル回転しているかの如く目まぐるしい展開が起きた。
無数のグレイ型の怨霊達が僕に猿ぐつわで口をふさぎ運び出したかと思えば、ミノムシみたいに縄でグルグル巻きにされて、天井に吊るされてしまった。
食堂の天井というものはこんなにも高いのかと思うくらい引き上げられ、もし縄が切れればグシャッと潰れてしまうなと思った。
背中からほんのり炎の温かさを感じた。
恐ら
『転生しても憑いてきます』#54
「排除」
すぐさま番兵が斬りかかろうと走った。
斧を横に構えて、腹を引き裂くつもりだったらしいが、その前に蜘蛛みたいな長い腕にあたって吹っ飛んでしまった。
その威力は凄まじく、壁を突き破って、外に飛び出てしまった。
「グオオオオオオオオ!!!!」
怪物は速度を変えずに猛進していた。
ようやく脚が動けるようになったので、死ぬ気で走った。
しかし、相手は僕よりも多くの腕や脚がある。
見え
『転生しても憑いてきます』#53
「死ねかりゃあああぁぁぁぁぁ………」
コナの声が投げ棄てられたように遠ざかっていった。
ふといきなり身体に覆いかぶされた。
「うわっ!」
僕は反射的に跳ね除けるように起き上がると、首のない身体が力無く横たわっていた。
その近くに番兵が立っていた。
どうやら彼がコナの首をちょん切ったらしい。
「ありが――グッ!」
番兵にお礼を言おうと思ったが、首なし身体がひとりでに動き出し、僕の喉に掴み
『転生しても憑いてきます』#52
無限回廊から抜けると、再び暗闇に戻っていた。
もしかしてまだ続いているのか?
だとしたら、最悪だ。
そんな不安を抱きながら、ランタンを探して火をつけた後、歩き出した。
妙に衣服の擦れる音や僕の心臓の鼓動しか聞こえない静寂さがさらに恐怖心を煽らせていった。
頼む。
頼むから、あってくれ。
祈りながら進んでいくと、念願のドアを見つけた。
走り出したい衝動に駆られていたが、また罠だった
『転生しても憑いてきます』#51
とにかく走った。
奴から距離を取らないと確実に死――と思っていた時、目の前に突然現れたものに慌てて脚を止めた。
キグルミの背中が見えたのだ。
そういえば、この無限廊下は一周グルリと回っているような構造だったっけ。
奴はそれを知ってか知らぬか、嘲るように笑っていた。
一、二歩下がって再び走り出す。
奴の姿が見えなくなった所で脚を止めた。
どうしよう。
何か策を見つけないと、体力が無
『転生しても憑いてきます』#48
「本当?!」
「ほんとなの?!」
ニュイはコクンと頷くと、勢い良くペンを動かした。
『転移魔法を使う』
転移魔法――確かにその手があった。
けど、あれは無くしちゃったし……あれ?
ニュイに僕がキャーラから貰ったお守りを身に着けている事を知っていたっけ?
疑うつもりはないけど、念のため聞いてみよう。
「どこでその魔法を知ったの?」
僕の質問にニュイはすぐに『本で読んだ』と書いた。
確か
『転生しても憑いてきます』#50
「うわあああああ!!!!」
僕は叫ばずにはいられなかった。
闇からキグルミの顔が現れたからだ。
ヤツはジッと僕を見ると、何かキラッと光った。
それが刃物だと分かった瞬間、反射的に「ボラ!」と魔法を唱えていた。
至近距離からの火の球はけっこう熱くて、こっちまで燃えそうになったが、キグルミは何ともなさそうな顔をしていた。
それを見た僕はすぐさま背を向けて走り出した。
足元がほとんど見えな
『転生しても憑いてきます』#49
「排除」
番兵はそう言うと、斧を振り上げた。
あぁ、真っ二つにされると分かった途端、僕は気が狂ったように命乞いをした。
「お願いします。助けてください。お願いします。お願いします……」
もう立て続けに狂気的な出来事が起こり過ぎて、精神が故障してしかけていたからか、僕はお経を唱えるように、番兵に殺さないでくれと頼んだ。
だが、番兵は無慈悲だった。
斧を手放す素振りも見せず、勢い良く振り下ろ
『転生しても憑いてきます』#47
番兵の手には斧を持っていた。
キラッと光る刃を見た時、僕の全身に鳥肌が立った。
「あ、あれは何なの?」
ニャイが声を震わせながら僕に聞いてきた。
そうか、二人はまだコイツに会っていなかったっけ。
「アイツは裏門にいる番兵。不審者を見つけたら、攻撃してくるんだ」
「こ、攻撃って、私達は大丈夫だよね?」
ニャイが顔面蒼白で僕に聞いてきたが、何も答えられなかった。
番兵は忍び寄るようにゆっく