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都市たち

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2022年6月の記事一覧

経由地:イスタンブール

経由地:イスタンブール

真っ白なキャンパスが空っぽなのと同じように、真っ黒なキャンパスも同じくらい空っぽなのです。イスタンブールのバスは、フェリーは、街中は、雑音で溢れ、混ざった絵の具が脳のキャンパスに色を散らします。色が混ざり過ぎて黒になった筆で何本か線を書いてみても、絵の具の散ったパレットは混沌としていますから何を書いているのか全く読み取れないのです。何も読み取れないのは、何も書いてないのと同じ。空っぽです。

雑音

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言伝:ベルリンへ

言伝:ベルリンへ

ソウルに書いたラブレターを今でもたまに読み返しては、ソウルに思いを馳せています。ソウルでの瞬間は、真心で色がついていたけれど、ベルリンではどうやら捻くれてしまうようです。家出少女が母になんと口をきけばいいのかわからないように、ベルリンになんと話しかければいいのかわかりません。ベルリンに真っ向から何かを伝える気概もないし、顔をみるだけで気まずい思いをするでしょう。そんなことをグダグダ書きましたが、ベ

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東京

東京

東京は当たり前の雑踏だった。スクランブル交差点も、蒸し暑い夏も、明るい夜も、ちぐはぐな服装たちが行き交う街並みも、小学生が夜分遅くまで一人で歩ける安全も、私の都市の初期設定だった。夜に外に出るのに躊躇するサンフランシスコのテンダーロインや、小学生が一人で電車に乗るのを憚る都市が新鮮だった。

網の目のような東京公共交通機関。駅に停車してからドアを開くまでに紳士的な間があることに初めて気づいた。ベル

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