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都市たち

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爽流

爽流

地球の南側にもまた、同じように街が広がって、人々は背の高い摩天楼の下をありんこのように歩いて過ごすようです。私の勘違いでしょうか、この街の日の差し方は、東京とも、ベルリンとも、ソウルとも少し違うような気がします。ブエノスアイレスというカタカナの堅物な印象は、この街に似合いません。Buenos(良い)Aires(空気)と直訳されるように、この街で流れる大気中の分子たちは、すごく爽やかで光に満ちていま

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経由地:イスタンブール

経由地:イスタンブール

真っ白なキャンパスが空っぽなのと同じように、真っ黒なキャンパスも同じくらい空っぽなのです。イスタンブールのバスは、フェリーは、街中は、雑音で溢れ、混ざった絵の具が脳のキャンパスに色を散らします。色が混ざり過ぎて黒になった筆で何本か線を書いてみても、絵の具の散ったパレットは混沌としていますから何を書いているのか全く読み取れないのです。何も読み取れないのは、何も書いてないのと同じ。空っぽです。

雑音

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言伝:ベルリンへ

言伝:ベルリンへ

ソウルに書いたラブレターを今でもたまに読み返しては、ソウルに思いを馳せています。ソウルでの瞬間は、真心で色がついていたけれど、ベルリンではどうやら捻くれてしまうようです。家出少女が母になんと口をきけばいいのかわからないように、ベルリンになんと話しかければいいのかわかりません。ベルリンに真っ向から何かを伝える気概もないし、顔をみるだけで気まずい思いをするでしょう。そんなことをグダグダ書きましたが、ベ

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東京

東京

東京は当たり前の雑踏だった。スクランブル交差点も、蒸し暑い夏も、明るい夜も、ちぐはぐな服装たちが行き交う街並みも、小学生が夜分遅くまで一人で歩ける安全も、私の都市の初期設定だった。夜に外に出るのに躊躇するサンフランシスコのテンダーロインや、小学生が一人で電車に乗るのを憚る都市が新鮮だった。

網の目のような東京公共交通機関。駅に停車してからドアを開くまでに紳士的な間があることに初めて気づいた。ベル

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クリスマスまぐま

クリスマスまぐま

クリスマスとかバレンタインとか、イベントの日に名前があるのならば感情を基に日に名前をつけてもいいと思う。

海辺の街のモーテルで、夜の風に揺すぶられる建物のブレを聴きながら感じるのは泣きたいような温かい感情の波。腹の底からぶちあがってくる彼らは愛で私を包んでそのまま流していく。沖へと沖へと流していく。ticktickboomという新しいネットフリックスのミュージカルを見てから、温かい感情の流動で心

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らぶれたー:ソウルへ

らぶれたー:ソウルへ

ソウル。
あなたをどうやって説明すれば良いのでしょう:淡々としたカフェのリズム、夜のバス席、午後5時に見つめる私の影、なんだかプラスチックな渋滞。ラジオ局に向かう道、午後一時、昼の街。

バスに揺られながらコンピューターサイエンスの課題をやっては酔いました。寮の坂下、バブリーな日本居酒屋ですきやきを頬張りながらビールを欲しがる肝臓をたしなめました。私たちはいつも、切迫した時間割と、膨大な課題と、

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ベルリン(少しソウル)

ベルリン(少しソウル)

おはよう、ベルリン。今日も曇っているね。朝から雨を降らしていたらしいけれど、なにか悲しいことでもありましたか。私は、、、そうですね。悲しみや寂しさに暮れるよりも、あなたの曇り空とあなたの人々を知りたいと思っています。少し努力もしているんですよ?自分をいつもより少しだけ忙しくして、やることを詰め込んで、ソウルのことやそれにひっついてくる全ての慢性的感情を考えすぎないように努力しています。自分は本当に

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