猿から紐解く心理学シリーズ3 ボノボ・Love&peace SEXに支配される男達
ボノボの特徴
猿から紐解く心理学シリーズとして、ゴリラ・オラウータンとご紹介しましたが、第3回目はヒト科のボノボという猿の生態を詳しく解説しつつ、このボノボからなる原始本能や人間との関わりをご紹介します。
ゴリラとオラウータンについては、下記の記事をご参照ください。
「ボノボ」という猿をご存じ無い方も多いかと思いますが、このボノボという猿はその昔「ピグミーチンパンジー」と呼ばれていました。
動物系ドキュメンタリーが好きな方などはその名前をご存じかもしれません。
実はこのボノボ、チンパンジーと混同されていたという歴史があり
チンパンジーとボノボが明確に別の種類であると特定されたのは、約100年程前の事です。
ボノボとチンパンジーはゲノム解析の値もほぼ同じで一番人間に近い猿だと言われています。
現在はコンゴ川という大きな川に遮られているため、チンパンジーとボノボが出会い、交雑する事はありませんが、太古の昔には広大なコンゴ川が干上がり、わずかながらに交雑をしたり、初期人類達との交雑も認められています。
チンパンジーとボノボは、そのDNAの近さや性質からも、
ほぼ我々人類の兄弟であり先祖と言っても過言では無い存在なのです。
しかし、チンパンジーとボノボは見た目こそ殆ど同じですが、その性格や社会性は真逆と言って良い程に違います。
発見されてからの歴史が比較的に浅い事や、チンパンジーとよく似た見た目から混同されていた事。
そしてチンパンジーと比較した場合、ストレスに弱く輸送の途中に死んでしまう事が多々あり、ボノボの研究はあまり進んでいませんでしたが、人類の進化の過程やメカニズム等を解明する上では非常に重要なサルでもあるため、現在でもフィールドワークや研究飼育が進められています。
DNAや見た目も、ほぼ同じですが生き方や性質が違うために別の種族として生きていますが、私達人類の祖先である初期人類も見た目は、このチンパンジーやボノボとほぼ同じす。
そして、このチンパンジーやボノボと初期人類達が交雑をしていた事は紛れもない事実ですし、チンパンジーと人間のゲノム差は馬とシマウマ程度の違いですから、
人間はチンパンジーとボノボ両方の性質を色濃く受け継ぎつつも、別の進化をしているという事です。
そのため、ボノボやチンパンジーが持つ性質や本能にプラスして、真逆とも言えるの本能を併せ持っていると考えるのが妥当でしょう。
ヒト科の進化における最大のテーマ、それはオスの性欲と、どう向き合うのか? という事。
現在まで全ての「猿から紐解く心理学シリーズ」でもお伝えしているように、人間も含めた「ヒト科の猿」のメスには、基本的にあまり特徴がありません。
メスの種の保存という命題は出産・育児である以上、基本的な部分と言うのは変わりようが無いのです。
オスの種の保存に関する命題はといえば
「交尾をして子孫を残す」
極端に言ってしまえば、これだけなのです。
ですから、交尾をしたいというのは男性にとって、親子間の愛と同等かそれ以上に強い原始的本能でもあり、最も強い衝動でもあるのです。
これに対してメスも子孫を残すために交尾はしたいけれど、子を持つための「過程」でしかありません。
そのため、子供が一人で育てられる安全な環境や食料が揃っていればオスは不要です。
ボノボやチンパンジー、そして人間においても子育て中の忙しい期間にオスの相手はしたくないというのが本音であり、原始的本能なのです。
もっと言えば、子孫を残してしまえば無駄な交尾をしたくないという方々が人間の女性にも多く存在し、深刻なセックスレスによる家庭不和という問題を抱えるご家庭も少なくはありませんが、こういった問題の原因として
原始的本能によるものも少なくないのではないか?という事です。
ですから、子育て中の女性に対する性行為の強要が深刻なセックスレスを招くというのは、ある種当然の事であると考えられます。
そもそも、なぜオスは性欲に振り回されるのか
性欲の強い男女を「猿のようだ」と例えるのは世界共通ですし、また猿に自慰行為を教えると死ぬまでやめなくなるという都市伝説も、まことしやかに囁かれています。
(※実際に猿は、私達人間が一般的に死ぬまで自慰行為しないように、命の危険が迫る程自慰行為をしません。)
しかし、なぜヒト科を含めた猿(特にオスの性欲)は強いのでしょうか?
そもそも、私達人間を含めたヒト科の猿達は、人間へと分岐する以前から
他の動物達と比較した場合、脳の容量も大きく、またある程度の知恵や豊富な森の知識などを持って生活しています。
そして、こういった知恵や知識といったものを子孫に伝える必要があるため、子育てに長い時間をかける必要があるのです。
現代の日本人は18歳、大学へ進学すればそれ以上に扶養する必要がありますし、オラウータンも約7年程の育児を行います。
それに比べて、安産の象徴とも言われる犬や愛玩動物の猫、ブタや牛をはじめとした動物はどうでしょう?
これらの動物は発情期の度に交尾をし、そして妊娠出産を繰り返しますが、百発百中と言っても良い程の精度で、交尾をすれば妊娠をします。
そして何より、育児にかける期間はヒト科の猿と比較した場合圧倒的に短いのです。
一度の出産で多くの子供を産み、約1年~2年もすれば子供が繁殖が可能な年齢になります。
まるで薄利多売のように、多くの子供を作り、その中から数匹が生き残ればラッキーと言う生存戦略なのです。
繁殖という種の目的を考えた時、妊娠しにくい体というのは一見してデメリットのようにも感じられますが、
例に挙げた、ペットや家畜の繁殖方法が多売薄利であるとすれば、ヒト科の生存戦略は多くの精子を選りすぐって厳選した、究極の逸品です。
他の動物に比べて妊娠しにくい女性の卵子は、男性の精子をより遺伝子的に相性が良い子孫を残すべく選別しているのです。
そして、メスが妊娠しにくい体を得る事で、子育てに必要な育児期間をも同時に獲得しているのです。
メスが妊娠出産が出来るという、貴重な繁殖期間を無駄にしないよう
卵子は遺伝子的にベストな選択をしようと機能していますが、このような
卵子による精子の選別が健康な男女であっても不妊である原因になっているという事が最近の研究で分かってきており、研究が進められています。
現代社会ではイレギュラーな事ですが、レイプをされるなど命の危機が迫った場合には、女性は突発的な排卵をしますし、戦時下やケンカ等で命の危機が迫っている場合、男性は性的興奮をしていないにも関わらず勃起をします。
(※激しい喧嘩などをした事のある男性は、このような性的興奮とは全く関係の無い衝動的な勃起を経験をした事があるかもしれません。)
この様な命の危機が迫る緊迫した状況下においては、子孫を残す事が優先されるようですが、こういったイレギュラーな場合でもない限り
人間をはじめ、ヒト科のメスと言うのは他の動物と比較して極端に妊娠しにくいのです。
そのため、何十回、何百回と交尾をする必要があります。
オスは性欲が強い、もしくはメスは複数のオスと交尾をしなければならない
というのが子孫を残す上での必須条件です。
オスが生きる上での命題でもある交尾ですが、この交尾を何回もしなければ妊娠をしない以上、オスの交尾への執着と衝動は他の動物達よりも強いと言って良いでしょう。
性犯罪等の犯罪例を見た場合、男性による加害が圧倒的に多いのは、私達人間がヒト科の性質を受け継いでいる以上、必然的に起こりうる事なのです。
男性の性的衝動がどれ程強く、生きる上で重要な原始本能であるという事は、男女共に知っておくべきでしょう。
私達人類は、現代社会において多くの場合一夫一妻という婚姻制度をとっていますが、原始本能という部分において、この一夫一妻制という制度は子孫の繁栄や繁殖という動物としての命題を考えた時、メリットでもありデメリットでもあります。
男女共に原始本能として優秀な遺伝子を持っているであろう異性と出会った場合は浮気をしたいという衝動に駆られてしまうのです。
(理性や社会性が不貞行為が歯止めをかけていますし、ベストパートナーとも呼べる、遺伝子的にも相性が良い相手がいる場合にはこの限りではありませんが、このような原始本能を人間は強く持っている、という事です。)
ボノボやチンパンジーのメスは、妊娠をするまでに平均して6回程の発情期間を要としますが、多数のオスと1回の発情につき約600回もの交尾をしてやっと妊娠が出来るという程、妊娠する確率が低いのです。
(1度の妊娠に対して、3600回という気の遠くなるような回数の交尾が必要です。)
6回の発情期に3600回もの交尾をして、妊娠に至らない理由ですが、正確に言えば受精はしますが遺伝子的な相性が悪い場合には卵子が子宮に着床せず、初期流産として気付かぬうちに流産をしてしまうのです。
人間の妊娠と出産も、それ自体が奇跡とも言われますが、ボノボやチンパンジーと交雑しながら初期人類へと進化した我々人間も
この妊娠し難いという性質を確実に受けついでいます。
生命の誕生というのは本当に奇跡的な事なのです。
ゴリラの項目でもご紹介しましたが、人間とチンパンジーの交配が成功しなかった理由もこの辺り(卵子による選別)にあるのではないか?
と個人的には考えています。
受精はするものの、現代人の体が本能として考えている
「最高の条件」
をチンパンジーの精子はとても満たしているとは言えないいため、初期流産という強い拒否反応を起こすのでしょう。
ボノボやチンパンジーよりも人間の方が妊娠はしやすいのでしょうが、男性が衝動的な性欲に振り回されてしまう事も、このような原始本能からです。
ボノボという雌 ‐メス‐ の秘密と女の嘘
人間をはじめ、ヒト科のメスと言うのは他の動物と比較して極端に妊娠し難く何十回、何百回と交尾をする必要があります。
そのため、オスの性欲が強くなるという進化をしました。
特に、チンパンジー・ボノボ・そして私達人間は、ほぼ同じ先祖からなる兄弟のようなものですから、オスはみな同じように性欲が強いのです。
しかし、妊娠出産には長い時間を要しますし、性欲が強くなるという進化をしてしまった以上、この性的欲求を止めるという事が出来ません。
多くの動物はメスが発情を知らせる事でオスが発情をしたり、特定の季節や条件によって「発情期」を迎えます。
チンパンジーやボノボは、発情期になると性器がふくれあがり
「今発情をしている」という事をオスに知らせるのです。
見るからに準備万端の状態だからこそ、オスはなおさら交尾がしたいと興奮し発情をするのですが、実はこのボノボ
排卵をしていない時期でも性器がふくれます。
具体的には、繁殖可能なメスは子育て中の本当に忙しい時期
(子供が1歳になるまで)を除いて、性器が膨らませるのです。
ボノボ・チンパンジーの子育て期間は約5年で、出産をしてから次の出産まで約5年の期間が必要ですが、ボノボの場合1年後に性器を膨らませて
ニセ発情
という、排卵していないにも拘らず
「いかにも発情してますよ!」というサインをオスに見せるのです。
ニセ発情ですから、当然……。
交尾をしても妊娠はしません。
チンパンジーの場合、次の出産が可能になる5年後まで性器が膨らみません。
つまり、このニセ発情とはオスの性欲を満たす事だけを目的としているのです。
どの生き物であっても、種の保存や繁殖を考えた時、生命の維持(食・住)の次にオスにとって重要な命題は交尾です。
この、交尾という最重要の命題をメスが完全にコントロールする事で、ボノボは超女性社会を作り上げているのです。
ひたらく言えば、オスが「交尾をしたい」と思った時に、子育てで一番忙しい時期を除いた、たくさんのメスがいつでも交尾をしてくれる状態なのです。
ですから、まず他のオスと争う必要がほぼありません。
そのため、ボノボのオスは小動物などを狩った場合食べ物をメスや子供達などにも分け与えますし、他のボノボの群れがいても大規模な喧嘩などに発展する事がほとんどありません。
むしろ、他のボノボの群れと遭遇した場合は
まるで女子会のようにメスが中心となって集まり、食べ物の交換や毛づくろいなどのコミュニケーションを取りながらお泊り会までするのです。
別の群と一緒に数週間過ごしたりと、ボノボの群れはかなりフレンドリーです。
また、捕らえられた見知らぬボノボに対して多数のボノボが餌を分け与えてあげるなど、かなり温厚で優しい性格をしています。 [5]
これがボノボが平和や愛の象徴とも言われる由縁です。
人間にも同じ事が言えますが、ボノボ社会はヒッピー文化でお馴染みの「Love&Peace(ラブアンドピース)」を実践した社会であり、フリーセックスを何万年も実践しているのです。
そしてヒト科の猿をはじめとした社会は
男性が性的に満たされていると平和であるという事です。
ボノボの性的コミュニケーション術
ボノボ・チンパンジーをはじめとしたパン族や初期人類、そして人間も性欲が強く妊娠し難い
というのは先に説明したとおりですが、ボノボはこの性的なコミュニケーションを率先して行っています。
挨拶、娯楽、交流、和解、緊張の緩和など、様々な場面で交尾を利用しています。
このようなボノボのコミニケションをともなう交尾をホカホカと言います。
オスメス同様にある程度の快楽を伴い、また愛や群れの結束を確認したり挨拶として行われますが、そもそも1回の発情期に600回近い膨大な数の交尾をするのですから、挨拶がわりに交尾をしても大丈夫ですし、ボノボやチンパンジーの交尾は
ボノボ 15秒
チンパンジー 7秒 [6]
と、交尾から射精に至る時間がとても早いのです。
ボノボやチンパンジーの性事情を見る限り
「そんなに交尾をして、オス・メス共に色々と大丈夫なの?」
と心配になりますが、ペニスサイズや挿入時間を見る限り、そこまで体に負担は掛からないのでしょう。
さて、この「ホカホカ」ですが、男女間だけではなく子供同士でも遊びの一環として性器の触り合いや交尾の真似事が行われますし、オス同士、メス同士でも性器をこすり合わせるなどの形で行われます。
こうしたコミニケション=気持ちがいいと結びつける事で、ボノボは他者との交流をや平和を好く性質をより高め、平和を維持しているのでしょう。
男性から見れば一見、いつでも交尾ができるハーレムのような世界ですし、女性から見ても、食べ物にも不自由せず子育てもしやすいので、素晴らしい社会ですが……。
ボノボ社会にも欠点はあります。
させない女とヤリ手ババア
ボノボの社会というのは、一見して平和な社会ですし実際に争いも少ないです。
以前にもヒト科の猿の男女比を紹介してきましたが、哺乳類の男女出生率は基本的には1:1で、動物によって少しだけ男女差がある場合もありますが
男同士の争いが無く平和な社会ほど男女比が同等になります。
しかし、この便利なニセ発情というシステムには欠点もあるのです。
ニセ発情中のメスは、自分が今ニセ発情中だという事を知っています。
ですから、
好みではないオスや子孫を残したくないオスとは
妊娠可能な期間には絶対に交尾をしません。
そして、断られたオスはとぼとぼと帰ります。
遊びの交尾はしても、本番(妊娠)はお断りという事です。
どこか人間味すら感じますし、オスからすれば上手くあしらわれているようなモヤモヤした感情が残りますが
メスに気に入られない限りボノボは子孫を残せません。
そのため、ボノボのオスは常に尻に敷かれる事になります。
一般的にカカア天下の家は平和だと言われますが、ボノボがそれを証明しているようです。
ボノボの体格差を見て頂ければわかるとおり、オスの方が若干大きく
体重差も小柄なメスと比較した場合、倍の差があります。
体重差は筋力の差でもありますから、ボノボの男女が1:1の喧嘩をすれば当然オスが勝ちます。
しかし、実際にボノボが喧嘩をした場合
メスの勝率は、ほぼ100%です。
子育ての邪魔やレイプ等、メスの気に入らない行為を働いたオスは、メスの集団からボコボコに殴られます。
ボノボの群れのボスはオスですが、このオスさえも強い母親の息子であり、母親の言いなりです。
完全に女性が支配し、治安までをも統治しているのです。
ボノボの社会は、一見してオスにとって天国のようなハーレムに見えて、実の所は常勝ヤリ手ババアの集団による監視社会であり、オスは確実にランク付けをされているという事です。
確かにハーレムではあれど
男性にとっては大奥のような居心地の悪さでしょう。
「平和」という腰抜け製造機
女性に優しく(女性上位であり)、平和を保つという事は現代の人間社会でも理想的とされている形態ではないでしょうか?
現代社会では理想の「平和」ですが、平和は弊害ももたらすのです。
弊害1 オスの弱体化
チンパンジーのオス達が大人になるまで生き残る比率は約1/2です。
いずれチンパンジーの解説で詳しくご紹介しますが、チンパンジーのオスというのは暴力や残忍性でメスを支配する、ボノボとは真逆の世界で生きています。
同じパン族でも、チンパンジーの生き方は一言で言えばギャングです。
現地の方がチンパンジーの生息域で彼らに遭遇した場合、日本で言えばヒグマに遭遇したようなリアクションをとりますが、それほどまでにチンパンジーは残忍で人間からも恐れられている存在なのです。
そのため、チンパンジーは成獣になってからもかなりの数のオスが同族同士の戦いで死にます。
それに比べてボノボのオス達は戦いで死ぬような事もなく、平和に暮らしていますが、コンゴ川を挟んだチンパンジーの生息域にボノボは存在していません。
太古の昔、ボノボ・チンパンジー・初期人類達は(もしくはもっと多くの人類がいた可能性も高いですが)干上がったコンゴ川を渡り交流や交雑をしていた形跡が見られます。
しかし、水嵩が元に戻ったコンゴ川のチンパンジーの生息域に、ボノボは生息していません。
つまり、長い年月の間にチンパンジーの生息域に入ったボノボはメスを奪われ、チンパンジーに狩られ尽くしたと考えるのが妥当でしょう。
ボノボは日頃からあまり狩りをしませんし、同族同士で争うという事が無いためチンパンジーと比較して単純な戦闘力(筋力)も弱いのです。
彼らの体がチンパンジーよりも少し小さく体重が軽いというのも、単純にその弱さを象徴しています。
また、ボノボは小動物を狩る事はあっても、チンパンジー達のように明確な狩りの技術を持っていません。
平和を重視し、オスが弱体化する事で同族やそれに近い外敵が侵略してきた場合、極端に弱いという事になります。
弊害2 精神的な弱さ
ボノボを語る上で絶対に外せないのが、コミニュケーションとして、ホカホカと呼ばれる挨拶や交流を主体とした交尾を行う事です。
そのため、ボノボのオスはチンパンジーはおろか人間よりも余程充実した性生活を送っています。
そして、このホカホカは
ケンカになりそうな緊張状態をはじめとしたストレスを紛らわせるための行為としても行われています。
もっと分かり易く言えば、ボノボ達は
ストレスが掛かった場合現実逃避に性行為をしているという事です。
群で生活している場合、ボノボ達は四六時中、些細なストレスをこうした現実逃避を行う事で紛らわせています。
そのため、ボノボはチンパンジーと比較してストレスには極端に弱く、オスメスを問わず輸送に耐えられず死んでしまいますし、飼育環境下では自慢の横分けもハゲてしまいます。
このストレス耐性の無さこそが、かつてはピグミーチンパンジーと呼ばれていたボノボが、日本の動物園では展示されておらず、国内でも研究飼育しかされていないという理由です。
チンパンジーも人間も、さらわれて檻に入れられ輸送された位では
気がおかしくなる事はあっても、精神的なショックで死ぬ事は殆どありません。
これは人間にも言える事でしょうが、過度な異性とのコミニュケーションや現実逃避としての交尾が必ずしも良い結果をもたらすとは限りませんし、精神を強くするためには現実逃避ではなく目の前の問題と向き合うべきだという事です。
弊害3 平和が続くという事は、進化をしない社会が続く
ボノボとチンパンジーの違いとして、よく挙げられるのが
「平和的」か「暴力社会」であるかという点です。
人間の進化にも言える事ですが、進化というのは「不便」を克服して得るものです。
そして、このボノボのオスには生きてゆく上で殆ど不便さを持ち合わせていません。
チンパンジーのオスは上記したとおり、激しいオス同士の争いや狩り、そしてメスの取り合いという不便さを克服するために日々緊張感(命の危機)のある暮らしをしていますし、人間に至ってもいつ発情しているのかわらない上に妊娠し難いメスと何度も交尾をしなければ子供を成すことが出来ませんから、メスを囲う、常に一緒に暮らす、狩り(仕事)をする必要があります。
このような不便さを克服するために、知恵や道具を使ったり、集団の中で共闘するという文化が産まれ、私達人類は初期人類へと進化しました。
ボノボという猿がチンパンジーや初期人類に知能的が劣るかと言えば、そういう訳ではありません。
脳の容量はほとんど同じですし、飼育下においては簡単なゲームや言葉を理解する素晴らしい知能を持っています。
しかし、常に平和的に過ごせているボノボにとって、ある程度生活の知恵さえあれば(食べられる果実や草木、社会性)満たされた生活をしているため、知恵を使う必要があまりありません。
そのため、他のヒト科と同じく木の枝等を使用したアリ釣り等は行いますが、チンパンジーのように、それ以上は道具を利用しないのです。
メスが育児で忙しい中、暇であるオスが狩りをはじめとした様々な仕事を獲得する事で私達人類は急速に知恵を身に付けてゆきました。
ヒト科にとって、知恵の獲得を進化とするならば、オスがあまりにも満たされている場合、交尾と生命維持に関わる事以外は何もしないため進化の速度がかなり遅くなるという事です。
まとめ
愛や平和の象徴ともされる「ボノボ」の生態は非常に人間に近く、面白いものです。
その生き方は、愛と平和、フリーセックスなどをモットーとし1960年代後半に誕生したヒッピーカルチャーにとても酷似しています。
現代の価値観としても新く革新的な生き方を、
ボノボは何百万年も前から実践しているのです。
1960年代当時、最新の生き方をしていると思っていた彼らが、ボノボの生態を知ったら、どのように思うのかは興味深いところです。
ボノボの生態自体はとても平和ですし、ホカホカをはじめとした挨拶やコミニュケーションも、人間とは少々倫理観が合わないとはいえ素晴らしいものです。
他者を好み、受け入れ、助け、交流し、そして愛する。
ボノボは私達人類の祖先である初期人類と確実に交雑している事が確認されていますから、私達人間にも
他者を好み、受け入れ、助け、交流し、そして愛する
という、愛と優しさに満ちた素晴らしい原始本能が受け継がれています。
しかし、ボノボの世界がもたらす平和のデメリットでもある
肉体的な弱さと精神的な弱さも同時に原始本能として受け継がれているのです。
ボノボ達の社会は女性社会ですが、対をなすチンパンジーの社会は男性社会です。
これらのパン族は性質が真逆ですが、知恵の獲得を進化と過程した場合、
極端に振り切れた女性社会、男性社会どちらもダメだという事です。
男女平等や女性の社会進出をはじめとしたジェンダー論が叫ばれる昨今ですが、これは人間にも言える事で
ボノボやチンパンジーのように、どちらを極端に優先しても人類が立ち行かなくなりますし、原始本能を見るに男女にはどうしても社会の前に種の保存という動物としての役割というものがありますから、このような男女の差までをも無視して平等を唱えれば社会は衰退します。
進化の過程を見るに、私達人類は男女が協力する事で進化をしてきた事は明確なのですから、私達人類もどちらが優れているなどの議論に明け暮れるよりも、男女が手を取り合って進化をして生きてゆきたいものです。
最後に
チンパンジーとボノボ、正直なところ、どちらを先に書くかと随分悩みました。
次回は一通りのラストとなるチンパンジーについてご紹介します。
ヒト科の猿の性行動はクロスオーバーをしている部分も多く、人間に至ってはその特徴や形質が少しずつ受け継がれたまま進化をしているので、その考察もかなり複雑なものになってゆきます。
考えや理解が及ばないまま、もしくは生態を完全には理解しないままに解釈をしてしまう事もあるかと思います。
もしも気になる点や疑問があれば、お気軽にコメントを頂ければ幸いです。
【参考資料・出典】
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