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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-123【衛生】論点:油脂 / 変質試験法

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油脂 / 変質試験法 
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で解説します。

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第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123

Q. 油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

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滝沢 幸穂

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今年の7月に matsunoya PROJECT というウェブサイトを新設しました。

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今回は、ビジュアルインフォグラフィクスのテンプレートとして、下記のFlourish.studio のチャートを使用しています。実際にバーをハイライトすると細かい数字や情報が見えて楽しいです。インフォグラフに触ってタップしたりハイライトしたりできます。

■TEMPLATE CREDITS
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■TEMPLATE CREDITS
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問103-123【衛生】
論点:油脂 / 変質試験法

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。

薬剤師国家試験の衛生から 油脂 / 変質試験法 を論点とした問題です。

第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123

Q. 油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

第93回薬剤師国家試験の問123(問103-123)は、食品の安全の中でも油脂の変質(変敗)が設問のテーマでした。

設問へのアプローチ|

第103回薬剤師国家試験問123(問103-123)は、選択肢の記述に、様々な不飽和脂肪酸の化合物名や油脂の品質指標がちりばめられています。

でも、ここで焦ってはいけません。

設問は以下の通りです。

Q. 油脂変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

この設問へのアプローチとしては、食品の安全の中から「油脂」、さらに「品質試験法」について知っている?と聞かれていると考えます。

油脂の変質(変敗)とその変質試験法に関する記述の正誤を問う問題です。

この問題へのアプローチ方法を一緒に考えてみましょう。

油脂の劣化の指標として一部の食品における規格基準が定められている酸価と過酸化物価に関する理解に加えて、不飽和脂肪酸自動酸化のしくみやビタミンEによる抗酸化作用、さらに、油脂の品質指標として、他の指標であるカルボニル価およびヨウ素価の理解が問われました。

問103-123を解説します。

※画像はタップすると拡大できます。
矢印を押すと ←□→ 画像のみのスライドショーになります。

類題として、第99回薬剤師国家試験問124(問99-124)があります。

この過去問題を学習すると、油脂の品質試験について、より理解が深まります。チャレンジしてみましょう。

■類題|

第99回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124

Q. 油脂の変質試験法に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. 滴定の終点では溶液が淡黄色から青紫色に変化する。
2. 主に油脂中のアルデヒド類が反応する。
3. 指標の値は、油脂 1kg あたりで表す。
4. 指標の値は、変質の進行に伴い減少する。
5. 指標の値は、変質の進行に伴い初めは増加するが、その後減少する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

選択肢の記述の特徴から前半(選択肢1 - 3)と後半(選択肢4 - 5)の2つのテーマに分けて解説しています。

こちらから eラーニング コンテンツを学習することができます。

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問99-124【衛生】論点:油脂の変質試験法 / 過酸化物価

https://note.com/matsunoya_note/n/n507344e9018a

また、不飽和脂肪酸を論点とした必須問題としては、第98回薬剤師国家試験問16(問98-16)があります。

この過去問題を学習すると、不飽和脂肪酸の二重結合の数や分類について、より理解が深まります。チャレンジしてみましょう。

■類題|

第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問16

Q. n-3系脂肪酸はどれか。

選択肢|

1. リノール酸
2. オレイン酸
3. アラキドン酸
4 . α-リノレン酸
5. γ-リノレン酸
(論点:不飽和脂肪酸)

YouTube|

走る!「衛生」Twitter Ver.不飽和脂肪酸
|薬剤師国家試験対策ノート
必須問題(衛生)問98-16の論点(不飽和脂肪酸)
https://youtu.be/fAA9wlrDRC0

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ここまでの復習は大丈夫ですか?

それでは、はじめましょう。

問103-123は、選択肢ごとにテーマ(不飽和脂肪酸の自動酸化、カルボニル価、ヨウ素価、過酸化物価、ビタミンE)が異なるので、別々に解説します。

苦手意識がある人も、この機会に、食品の安全の中の油脂の変質試験法 / 過酸化物価を一緒に完全攻略しよう!

目次|

選択肢1. 論点:不飽和脂肪酸の自動酸化
選択肢2. 論点:カルボニル価
選択肢3. 論点:ヨウ素価
選択肢4. 論点:過酸化物価
選択肢5. 論点:過酸化物価 / ビタミンEの抗酸化作用

論点解説|

選択肢1. 論点:不飽和脂肪酸の自動酸化
Q1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。A.【正|誤】|

不飽和脂肪酸の自動酸化について解説します。

第103回薬剤師国家試験問123、選択肢1(問103-123-1)は、論点「油脂の変質試験法」のうち、不飽和脂肪酸の自動酸化をテーマとした正誤問題でした。

不飽和脂肪酸の酸化のされやすさ、つまり、自動酸化速度の比較をオレイン酸とリノール酸を取り上げて問われた問題です。

不飽和脂肪酸の自動酸化について、比較的新しい科学的根拠が記載された参考資料としては、J-Stageのホームページ(HP)に掲載された科学文献「J-Stage|池田ら, 不飽和脂肪酸メチルエステルの自動酸化 (第2報)非共役化合物, 油化学, 27(1), 26-32 (1978) https://doi.org/10.5650/jos1956.27.26 」に、情報がわかり易く整理してありました。

詳細は、上記、J-Stage HPの科学文献をご参照ください。

不飽和脂肪酸の自動酸化|

最初に、不飽和脂肪酸の自動酸化について解説します。

上記文献(池田ら、1978)によれば、自動酸化は、活性メチレン基を有する不飽和脂肪酸の場合、活性メチレン基からの水素の脱離、それに伴う共役ジエンヒドロペルオキシドの形成を通して進行します。

オレフィンの自動酸化機構は一般に次のように報告されています。

RH+O2 → R・+・OOH …(1)

※酸素による、(活性)メチレン基の水素の引き抜き

R・+O2 → ROO・ …(2)

ROO・+RH → ROOH+R・ …(3)

※ペルオキシルラジカルによる、(活性)メチレン基の水素の引き抜き

ROOH → RO・+・OH …(4)

※脂質ヒドロペルオキシド(過酸化物)の形成

RO・+RH → ROH+R・ …(5)

※ただし、ROO・は、ペルオキシルラジカル。
ROOHは、脂質ヒドロペルオキシド(過酸化物)

活性メチレン基とは2個の電子求引基にはさまれたメチレン基 (−CH2−) を持つ一連の化合物群の化学構造です。

活性メチレン基は比較的高い酸性を示します。

不飽和脂肪酸においては、炭素鎖の二重結合二重結合との間に活性メチレン基(=CH−CH2−CH=)が存在します。

主な不飽和脂肪酸では、活性メチレン基の数 n は、

n=(二重結合の数)-1

で表されます。

オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の二重結合の数(および活性メチレン基の数n)は、それぞれ、1 (n=0)、2 (n=1)、3 (n=2)、5 (n=4)、6 (n=5)です。

上記文献(池田ら、1978)の知見および考察によれば、活性メチレン基を有する不飽和脂肪酸メチルエステルの酸化の容易さ、すなわち、自動酸化速度は、不飽和脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)または活性メチレン基の数に依存します。

リノール酸メチル、リノレン酸メチルおよびエイコサペンタエン酸メチル+ドコサヘキサエン酸メチルの自動酸化速度が基質の不飽和度に依存すると仮定した場合、その自動酸化速度の比は、2 : 3 : 5.5 となります。

一方、自動酸化速度が基質に含まれる活性メチレン基の数に依存すると仮定すると、その自動酸化速度の比は、1 : 2 : 4.5 になります。

実験の結果から得られた実測値によれば、酸化誘導期の相対酸化速度は、活性メチレン基数の比に近く、一方、酸化重量増加速度から見た相対酸化速度は、基質の不飽和度の比に一致したとのことです。

文献の Fig. 6 に、自動酸化速度の指標である酸化誘導期の逆数、酸化重量増加速度および極大重量増加量と、不飽和脂肪酸の不飽和度との相関が示されています。図1に文献のFig. 6を抜粋して示しました。

酸化しやすさ、すなわち自動酸化速度の実測値(および二重結合の数)が、オレイン酸メチル(1)<リノール酸メチル(2)<リノレン酸メチル(3)<エイコサペンタエン酸メチル(5)+ドコサヘキサエン酸メチル(6)の順で、不飽和度に相関して増大することが示された結果です。

比較のために、オレイン酸メチルおよびエライジン酸メチルの結果が付されていますが、誘導期の逆数の比較から見た相対酸化速度(実測値)は、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチルおよびエイコサペンタエン酸メチル+ドコサヘキサエン酸メチルで、1 : 8.0 : 21.7 : 39.0 でした。

誘導期の逆数と基質の不飽和度とは直線的に相関し、不飽和度に比例して誘導期の酸化しやすさ、すなわち、自動酸化速度が高まることが示されました。

一方、酸化重量増加速度(ヒドロペルオキシド形成速度も同様)の相対酸化速度は 1 : 11.0 : 16.0 : 28.8 でした。

モノエン化合物であるオレイン酸メチルの自動酸化速度は、酸化重量増加速度では、ジエン以上の化合物の自動酸化速度の直線性のある相関から逸脱して低い結果でしたが、この差は、ペルオキシルラジカルによる水素引き抜きが、活性メチレン基からと α-メチレン基からとの間で差があることを反映していると考察されました。

文献(池田ら、1978)の考察によれば、自動酸化は、酸化誘導期においては酸素による活性メチレン基からの水素引き抜きが律速であるため、活性メチレン基数の比に相関し、一方、ペルオキシルラジカル生成以降ではペルオキシルラジカルの拡散が律速となるため、二重結合の数に相関する、すなわち、二重結合とペルオキシルラジカルとの親和性にペルオキシルラジカルの拡散速度が依存することから、二重結合の数(不飽和度)に比例してペルオキシルラジカルは活性メチレン基に接近しやすくなると考察されました。

画像2

図1 不飽和脂肪酸メチルエステルの自動酸化における誘導期、重量増加速度および極大重量増加量と、不飽和脂肪酸の不飽和度との相関

オレイン酸メチル(c-MOD / オリーブ油由来)、エライジン酸メチル(t-MOD / オリーブ油由来)、リノール酸メチル(c、c-MODD / サフラワー油由来)、リノレン酸メチル(MODT / あまに油由来)、エイコサペンタエン酸メチル+ドコサヘキサエン酸メチル混合物(MEP+MDH / いか油由来)※自動酸化条件:試料(1.5000~1.5005g)を4.1cm径のビー カー に入れ、10^(-3)mmHg圧下(30℃、1h)微量揮発成分を除去後、ふ卵器中(36.5℃) 、油層厚さ1.03mmの条件下で自動酸化。
出典:J-Stage|池田ら,不飽和脂肪酸メチルエステルの自動酸化 (第2報)非共役化合物, 油化学, 27(1), 26-32 (1978) https://doi.org/10.5650/jos1956.27.26 Fig. 6

不飽和脂肪酸の分類|

不飽和脂肪酸の分類について復習しておきましょう。

画像3

α-リノレン酸 (ALA)|

18:3 (n-3)|all-cis-9,12,15-オクタデカトリエン酸

エイコサペンタエン酸 (EPA)|

20:5 (n-3)|all-cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸

ドコサヘキサエン酸 (DHA)|

22:6 (n-3)|all-cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸

リノール酸|

18:2 (n-6)|9,12-オクタデカジエン酸

γ-リノレン酸|

18:3 (n-6)|6,9,12-オクタデカトリエン酸

アラキドン酸|

20:4 (n-6)|5,8,11,14-エイコサテトラエン酸

オレイン酸|

18:1 (n-9)|9-オクタデセン酸

画像4

選択肢2につづく。。。

ポイント|

【A】を有する【B】の【C】は、【A】からの【D】、それに伴う【E】の形成を通して進行する。【F】、すなわち、【C】速度の大きさは、【B】の【G】か【A】の数に依存する。リノール酸メチル、リノレン酸メチルおよびエイコサペンタエン酸メチル+ドコサヘキサエン酸メチルの【C】速度が基質の【G】に依存すると仮定した場合、その【C】速度の比は、【H】となり、一方、基質に含まれる【A】数に依存すると仮定すると、その【C】速度の比は、【I】になる。【J】は、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチルおよびエイコサペンタエン酸メチル+ドコサヘキサエン酸メチルで、【K】で、【A】数の比に近い。重量増加速度におけるオレイン酸メチルの【C】速度は、ジエン以上の化合物の【C】速度と【G】との相関の直線性から【L】が、この差は、【M】による【D】が、【A】からと【N】からとの間で差があることを反映している。

A. 活性メチレン基
B. 不飽和脂肪酸
C. 自動酸化
D. 水素引き抜き
E. 共役ジエンヒドロペルオキシド
F. 酸化の容易さ
G. 不飽和度(二重結合の数)
H. 2 : 3 : 5.5
I. 1 : 2 : 4.5
J. 誘導期の逆数の比較から見た相対酸化速度(実測値)
K. 1 : 8.0 : 21.7 : 39.0
L. 逸脱して低い
M. ペルオキシルラジカル
N. α-メチレン基

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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123

Q. 油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

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選択肢2. 論点:カルボニル価
Q2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。A.【正|誤】|

カルボニル価について解説します。

第103回薬剤師国家試験問123、選択肢2(問103-123-2)は、論点「油脂の変質試験法」のうち、カルボニル価をテーマとした正誤問題でした。

油脂のカルボニル価について、比較的新しい科学的根拠が記載された参考資料としては、J-Stageのホームページ(HP)に掲載された科学文献「J-Stage|遠藤ら, ブタノール法による魚油および食品抽出油脂のカルボニル価の測定, 日本食品科学工学, 54(1), 54-58 (2007) https://doi.org/10.3136/nskkk.54.54 」および CiNii のHPに掲載された科学文献「CiNii|佐藤ら, カルボニル価(ブタノール法)による油脂食品の酸化劣化評価, 宮城県保健環境センター年報, 24, 136-138 (2005) https://ci.nii.ac.jp/naid/40015327902 PDF  https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/209936.pdf 」に、情報がわかり易く整理してありました。

詳細は、上記、科学文献をご参照ください。

カルボニル価の測定法|

最初に、カルボニル価の測定法の概要について解説します。

上記文献(遠藤ら、2007)によれば、油脂の主な劣化度測定法には、遊離脂肪酸の生成の指標である酸価(AV)、自動酸化の結果生成した過酸化物(脂質ヒドロペルオキシド)生成の指標である過酸化物価(PV)および過酸化物から分解して生成した二次生成物であるカルボニル化合物の指標であるカルボニル価(CV)があり、一般的に、PVとAVが多用されます。

一方、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸のような高度不飽和脂肪酸を多く含む場合、ヒドロペルオキシドが蓄積する以前に分解が進行するため、相対的に、PVが高くならず、CVが高くなりやすいとされます。

また、フライ食品は高温で加熱されるため分解が進み、PVは相対的に低く、他方、AVとCVが相対的に高くなります。

このような特性から、魚油およびフライ加熱調理された食品の劣化度を判断するにはCVが最も適するとされます。

また、カルボニル化合物は、ヒドロペルオキシドより毒性が強く、品質劣化の目安としての変敗臭(オフフレーバー)にも関係します。

従来用いられてきたCV測定法(ベンゼン法)は、カルボニル化合物が2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応して生成するヒドラゾンを、塩基性下で赤紫色のキノイドイオンにして、その呈色を測定するのですが、抽出溶剤に用いるベンゼン発がん性を有するため、著者らは1-ブタノールを溶剤に用いた方法(ブタノール法)を開発しました。

ブタノール法は、現在、基準油脂分析法(カルボニル価 / 基準油脂分析試験法2.5.4.2-2013)として採用されています。

文献では、イワシ油のPVとCV(ブタノール法)が相関した(R^2=0.990)ことが示されました。

この結果から、30℃で自動酸化したイワシ油はヒドロペルオキシドの上昇に従って、その分解が進み、PVとCVの相関が高かったものと考察されました。

一方、各種魚油のカルボニル価をベンゼン法とブタノール法で比較したとき、マグロ油以外の油脂では良好な相関(R^2=0.976)が認められました。

相関しなかったマグロ油は、冷凍保存中に緩やかに酸化が進行したため、PVが高かったものの、ブタノール法によるCVが低く、ベンゼン法ではCVに対してPVが影響を与えるため、高いCVを示したと考察されました。

このように、油脂の管理の仕方や、CV測定法の種類で、CVの値は変動します。

画像5

図1 カルボニル化合物と2, 4-ジニトロフェニルヒドラジンの反応

出典:CiNii|佐藤ら, カルボニル価(ブタノール法)による油脂食品の酸化劣化評価, 宮城県保健環境センター年報, 24, 136-138 (2005) https://ci.nii.ac.jp/naid/40015327902 PDF https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/209936.pdf 図1

上記文献(佐藤ら、2006)図1に、カルボニル化合物と2, 4-ジニトロフェニルヒドラジンの反応の流れが示されていました。図1に抜粋して示します。

リノレン酸の異性体|

次に、リノレン酸の異性体について、解説します。

上記、第98回薬剤師国家試験問16(問98-16)の論点解説動画(上記)で学んだように、リノレン酸には、n-3系(ω3)の α-リノレン酸、そして、n-6系(ω6)の γ-リノレン酸があります。

両者とも、二重結合の数は3つ、炭素数は18です。

一般には、油脂のリノレン酸という場合、α-リノレン酸を指します。

γ-リノレン酸はリノール酸から生合成されますが、ジホモ-γ-リノレン酸を経てプロスタグランジンとアラキドン酸に代謝される必須脂肪酸の一つです。

脂質の自動酸化速度(酸化のしやすさ)は、選択肢1の論点解説で学んだように、活性メチレン基の数、または二重結合の数と相関関係にあります。

したがって、リノレン酸の異性体の自動酸化速度は、近似する可能性が高いです。

また、上述のように、高度不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を多く含む油脂の魚油の場合、過酸化物価とカルボニル価は相関します。

したがって、リノレン酸の異性体に関しても、過酸化物価とカルボニル価は相関する可能性が示唆されます。

しかしながら、リノレン酸の異性体は、あくまで、別の化合物であって、過酸化物の構造ならびに、二次生成物の構造は、すべて同一ではなく、二次生成物の生成の機構が解明された科学文献等の根拠がない限り、カルボニル価が近似するか著しく異なるかは、確定されません。

正誤を問う場合は、根拠を示すべきです。

ここでは、とりあえず、未知の課題に取り組むつもりで既存の情報から可能性を考える過程では、両者の過酸化物価およびカルボニル価は、異性体の間でそれぞれ類似した値を示す可能性が推察されます。

(どこかで発表されているかもしれませんが、案外、見つからないです。)

選択肢3につづく。。。 

ポイント|

油脂の主な劣化度測定法には、【A】の生成の指標である【B】、自動酸化の結果生成した【C】生成の指標である【D】および過酸化物から分解して生成した【E】の指標である【F】があり、一般的に、【G】が多用される。一方、【H】のような【I】を多く含む場合、【J】が蓄積する以前に【K】するため、相対的に、【L】とされる。また、【M】は【N】されるため、相対的に【O】なる。このような特性から、【P】の劣化度を判断するには【Q】が最も適するとされる。また、【E】は、【C】より【R】する。

A. 遊離脂肪酸
B. 酸化(AV)
C. 過酸化物(脂質ヒドロペルオキシド)
D. 過酸化物価(PV)
E. 二次生成物であるカルボニル化合物
F. カルボニル価(CV)
G. PVとAV
H. エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸
I. 高度不飽和脂肪酸
J. ヒドロペルオキシド
K. 分解が進行
L. PVが高くならず、CVが高くなりやすい
M. フライ食品
N. 高温で加熱
O. PVは低く、他方、AVとCVが高く
P. 魚油およびフライ加熱調理された食品
Q. CV
R. 毒性が強く、変敗臭に関係

ポイント|

リノレン酸には、【S】のα-リノレン酸、そして、【T】のγ-リノレン酸があり、両者とも、二重結合の数は【U】、炭素数は【V】である。脂質の自動酸化速度(酸化のしやすさ)は、【W】と相関関係にあり、したがって、リノレン酸の異性体の自動酸化速度は、【X】可能性が高い。また、【H】を多く含む魚油の場合、【D】と【F】は相関することから、リノレン酸の異性体に関しても、【D】と【F】は相関する可能性が示唆される。可能性を考える過程では、リノレン酸の異性体の【D】および【F】は、それぞれ、【Y】ことが推察される。

S. n-3系
T. n-6系
U. 3つ
V. 18
W. 活性メチレン基の数、または二重結合の数
X. 近似する
Y. 類似する

_____

では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123

Q. 油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

楽しく!驚くほど効率的に。

https://note.com/matsunoya_note

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選択肢3. 論点:ヨウ素価
Q3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。A.【正|誤】|

ヨウ素価について解説します。

第103回薬剤師国家試験問123、選択肢3(問103-123-3)は、論点「油脂の変質試験法」のうち、ヨウ素価をテーマとした正誤問題でした。

ヨウ素価の定義から解説します。

テーマ1.
ヨウ素価の定義|

ヨウ素価は、第17改正日本薬局方の一般試験法において、油脂試験法の項目である油脂の融点、脂肪酸凝固点、比重、酸価、けん化価、エステル価、水酸基価、不けん化物およびヨウ素価の一つとして、試験法が規定されています。

参考資料:
PMDA|第十七改正日本薬局方
https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/standards-development/jp/0013.html

薬局方におけるヨウ素価の試験法の記載を確認しましょう。

以下、第17改正日本薬局方より引用|

一般試験法 1. 化学的試験法 1.10 ヨウ素価

ヨウ素価とは、次の条件で測定するとき、試料100 gと結合するハロゲンの量をヨウ素(Ⅰ)に換算したg数である。

10.1. 

試料のヨウ素価に応じて、表1.13-2の試料採取量を小ガラス容器に正確に量り、500 mLの共栓フラスコ中に容器と共に入れ、シクロヘキサン20 mLを加えて溶かし、正確にウィイス試液25 mLを加え、よく混和する。密栓して遮光し、20 ~ 30℃で30分間(ヨウ素価が100以上のときは1時間)時々振り混ぜて放置する。次にヨウ化カリウム溶液(1→10) 20 mLおよび水100 mLを加えて振り混ぜた後、遊離したヨウ素を0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定する(指示薬:デンプン試液1 mL)。同様の方法で空試験を行う。

ヨウ素価=((a - b) × 1.269) / (試料の量(g))

a:空試験における 0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液の消費量(mL)
b:試料を用いたときの 0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液の消費量(mL)
以上

テーマ2.
ヨウ素価(二重結合の数の指標)と自動酸化|

油脂のヨウ素価について、比較的新しい科学的根拠が記載された参考資料としては、農林水産省のホームページ(HP)「農林水産省|ヨウ素価 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/overseas/usa_i-value.html 」および「農林水産省|トランス脂肪酸に関する各国・地域の取組>米国 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/overseas/usa.html 」に、情報がわかり易く整理してありました。

詳細は、上記、農林水産省HPをご参照ください。

上記、農林水産省のHPによれば、ヨウ素価とは、油脂100 gに付加することのできるヨウ素(I2)のグラム数です。

この値が大きいほど試料中の脂肪酸の不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ことを示します。

選択肢3に記載の油脂の不飽和脂肪酸の酸化とは、すでに選択肢1の解説で学んだように、不飽和脂肪酸自動酸化を意味します。

油脂の酸化は、過酸化物価(脂質ペルオキシドの生成の指標)を指標とします。

自動酸化の基本の化学式を思い出しましょう。

R-HはR-OOHに変化します。

つまり、Rの二重結合の数に変化はなく、酸素量が増加しただけです。

したがって、ヨウ素価が、脂質の自動酸化の過程、脂質ペルオキシド生成に至る過程で上昇、すなわち、二重結合の数が増えることは、基本の自動酸化の化学式から否定されます。

ただし、自動酸化の進行に従って、分子間の重合や、分子内での5員環パーオキシド生成の可能性などがあると、二重結合は自動酸化によって減少する傾向があると推察されます。

少し古い科学文献になりますが、J-Stageの科学文献「J-Stage|宮川ら, 油脂の自動酸化, 油化学, 14(12), 662-671 (1965) https://doi.org/10.5650/jos1956.14.662 」に、化学式が詳細に掲載されていました。

図1に、文献の図4. 5員環パーオキシド生成スキムを抜粋して示しました。

ただし、ヨウ素価が、脂質ペルオキシド存在下で、数値として変動するかどうかは、実際に、経日的に酸化させた油脂で、ヨウ素価と過酸化物価とを同時に採取した試料から測定するなど検討を行ってみないと実際の現象としてはわかりません。

画像6

図1 トリエン以上の高度不飽和脂肪酸の5員環パーオキシド生成スキム

出典:J-Stage|宮川ら, 油脂の自動酸化, 油化学, 14(12), 662-671 (1965) https://doi.org/10.5650/jos1956.14.662 図4.

テーマ3.ヨウ素価に関連する最近の話題|

ヨウ素価に関連する最近の話題としては、米国におけるトランス脂肪酸の規制があります。上記、農林水産省HPによれば、米国の連邦政府は、トランス脂肪酸について加工食品の栄養表示を義務づけていますが、FDAは、部分水素添加油脂をGRAS(Generally Recognized As Safe / 一般的に安全と認められる)の対象から除外する規制を決定しました(2018年6月18日施行)。

※日本での規制に関しては、こちらのeラーニングを参照

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問101-123【衛生】
論点:食品に由来する有害物質2; トランス脂肪酸
https://note.com/matsunoya_note/n/n5ed874b2e2aa

FDAの定義によれば、部分水素添加油脂とは、ヨウ素価4超(ISO3961又はこれと同等の分析法で分析する必要)の、水素が添加された油脂です。

部分水素添加油脂はトランス脂肪酸を含むことが知られています。

決定に当たり、FDAは、部分水素添加油脂由来のトランス脂肪酸の摂取量推定や、リスクとベネフィットの計算を行っています。

参考資料:
農林水産省|食用の部分水素添加油脂の食品への使用規制にあたっての米国の摂取量推定やコスト・ベネフィット推計
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/overseas/usa_estimate.html

FDAは、2012年において、2歳以上の米国人は、部分水素添加油脂由来のトランス脂肪酸を、1人当たり1日当たり平均で1.0 g, 90パーセンタイル値(上位10%の人の値)で2.0 g摂取しており、これはそれぞれ一日当りの総エネルギー摂取量(2000 キロカロリーの食事として)の0.5%, 1.0%に相当すると推計しています。

なお、上記の規制において、完全水素添加油脂やほぼ完全に水素添加された油脂は対象外とされました。完全に水素を添加すると、二重結合がなくなり、油脂に含有される脂肪酸の種類は、すべて飽和脂肪酸になることは、わかりますよね。

米国での食用の部分水素添加油脂の食品への使用規制の流れを受け、日本のマーガリン製造業において、部分水素添加油脂を使用しないというマーガリンの処方変更の流れが起きています。

(株)明治のHP「(株)明治|当社マーガリン製品リニューアルの趣旨 背景としてのトランス脂肪酸問題について https://www.meiji.co.jp/dairies/transfat/document.html?id=about 」に、マーガリン類リニューアルに際し、その背景となるトランス脂肪酸の問題の概況と、トランス脂肪酸についての基本情報を整理した情報が掲載されていました。

食品の安全に関する社会的な話題の中での「ヨウ素価」の意味として、参考になる情報です。

選択肢4につづく。。。 

ポイント|

【A】とは、次の条件で測定するとき、【B】と結合する【C】した【D】であり、【A】が大きいほど試料中の【E】ことを示す。油脂試験法の項目である【F】および【A】の一つとして、試験法が【G】に規定される。
試験法:試料を小ガラス容器に正確に量り、【H】を加えて溶かし、正確に【I】を加え、よく混和する。密栓・遮光し、20 ~ 30℃で時々振り混ぜて放置する。次に【J】20 mLおよび水100 mLを加えて振り混ぜた後、遊離した【K】を【L】で滴定する(指示薬:【M】 1 mL)。同様の方法で空試験を行う。
【A】=(【N】)/(【O】)
a:空試験における【L】の消費量(mL)
b:試料を用いたときの【L】の消費量(mL)

A. ヨウ素価
B. 試料100 g
C. ハロゲンの量をヨウ素(Ⅰ)に換算
D. g数
E. 脂肪酸の不飽和度が高い(二重結合の数が多い)
F. 油脂の融点、脂肪酸凝固点、比重、酸価、けん化価、エステル価、水酸基価、不けん化物
G. 日本薬局方
H. シクロヘキサン
I. ウィイス試液
J. ヨウ化カリウム溶液(1→10)
K. ヨウ素
L. 0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム液
M. デンプン試液
N. (a - b)×1.269
O. 試料の量(g)

ポイント|

油脂の【P】は、【Q】を指標とし、【R】は【S】に変化する。Rの【T】に変化は【U】、【V】のみが増加する。【A】が、脂質の【W】の過程で、少なくとも【Q】生成に至る過程で上昇、すなわち、【T】が増えることは、基本の【W】の化学式から否定される。ただし、【W】の進行に従って、【X】の可能性などがあると、【T】は【P】によって【Y】する傾向があると推察される。

P. 酸化
Q. 過酸化物価(脂質ペルオキシドの生成の指標)
R. R-H
S. R-OOH
T. 二重結合の数
U. なく
V. 酸素量
W. 自動酸化
X. 分子間の重合や、分子内での5員環パーオキシド生成
Y. 減少

_____

では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123

Q. 油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

楽しく!驚くほど効率的に。

https://note.com/matsunoya_note

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選択肢4. 論点:過酸化物価
Q4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。A.【正|誤】|

過酸化物価について解説します。

第103回薬剤師国家試験問123、選択肢4(問103-123-4)は、論点「油脂の変質試験法」のうち、過酸化物価をテーマとした正誤問題でした。

過酸化物価をテーマとした過去問題としては、上述のように、松廼屋オリジナルのeラーニング(松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問99-124【衛生】論点:油脂の変質試験法)があります。

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問99-124【衛生】論点:油脂の変質試験法 / 過酸化物価
https://note.com/matsunoya_note/n/n507344e9018a

すでに、解説したように、厚生労働省のホームページ(HP)「厚生労働省|薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会資料(平成22年7月29日開催) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ip55.html 資料2 即席めん類の酸価・過酸化物価試験法について(案)PDF https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000ip55-att/2r9852000000ipot.pdf および 参考資料8 酸価・過酸化物価に関する規定等(PDF)https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000ip55-att/2r9852000000ipvm.pdf 」ならびに、「厚生労働省|2010年7月29日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会議事録 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000nghx.html 」に情報がわかり易く整理してありました。

詳細は、上記、厚生労働省HPをご参照ください。

上記HPの資料2「背景」によれば、酸価および過酸化物価は、食品に含まれる油脂の変敗による衛生上の危害発生の防止の観点から、油脂の劣化の指標として用いられます。

酸価は、油脂の古さ、使用歴等を示す指標であり、「油脂 1 g 中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウム量の mg 数(mg / g)」として表されます。

また、過酸化物価は、油脂の酸化変質の過程で生成する過酸化物の量を示す指標であり、「油脂 1 kg中の過酸化物によりヨウ化カリウムから遊離されるヨウ素量mg数(meq / kg)」として表されます。

油脂中の過酸化物は、ヨウ化カリウムと反応した結果、ヨウ素を遊離します。

遊離したヨウ素を、チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して、過酸化物価(meq / kg)を求めます。

過酸化物価は、油脂中の過酸化物(脂質ヒドロペルオキシド|L-OOH)の生成量の指標です(図1参照)。

L-OOH + KI → L-OH + I2 + K2O

ただし、LH:不飽和脂肪酸、L-OOH:脂質ヒドロペルオキシド

図1 油脂の過酸化物とヨウ化カリウムの反応

上記、改良試験法の最新の詳細な記載は、平成23年3月28日付け食安発0328第1号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/110328-1.pdf 」の別添2にあります。

これが試験法の原本に相当します。

試験法全てを覚える必要はありませんが、原本を一読して、滴定の種類や原理は覚えておくとよいです。

以下に、通知の別添2に示された過酸化物価の測定法を引用します。

以下、引用|
過酸化物価の測定法

油脂試料5gを共栓フラスコに精密に量り採り、イソオクタン・酢酸混液35mLを加えて溶解する。溶解液が均一にならない場合には、イソオクタン・酢酸混液を適宜加える。次いでフラスコ内の空気を窒素で置換した上で、窒素を通じながら飽和ヨウ化カリウム溶液1mLを加え、直ちに共栓をして1分間振り混ぜた後、室温・暗所の条件下で5分間静置する。これに水75mLを加え、激しく振り混ぜた後、デンプン溶液1mLを加え、これを指示薬として0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液により滴定する。滴定は十分に攪拌しながら行い、デンプンによる青色の消失時を終点とする。試験溶液とは別にブランク試験(油脂試料を用いない空試験)を実施し、測定値の補正を行う。過酸化物価は、滴定に要した0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液の液量から、下式により算出する。

過酸化物価=(a-b)×F×10/油脂試料量(g)

a:検体試験区の滴定に要した0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)
b:ブランク試験区の滴定に要した0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)
F:0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウムの力価

正誤問題文をもう一度読み、何が問われているかアプローチしてみましょう。

選択肢4.
酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。【正/誤】

落ち着いて読むと、3つのパラメーター、
(i) 脂質ヒドロペルオキシドと
(ii) 過酸化物価と
(iii) チオ硫酸ナトリウムの量の
関係を問われていることがわかります。

ここは、2つずつに分けて、関係を考察します。

まず、脂質ペルオキシドの生成量と過酸化物価が相関するかどうかについて考えます。

図1の油脂の過酸化物とヨウ化カリウムの反応から、脂質ペルオキシドが増加すると遊離したヨウ素(I2)が増加します。過酸化物価は、定義として「油脂 1 kg中の過酸化物によりヨウ化カリウムから遊離されるヨウ素量の mg数(meq / kg)」として表されますから、ヨウ素量です。

つまり、脂質ペルオキシドが増加するとヨウ素量である過酸化物価は増加します。

次に、過酸化物価と滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量との関係を、上記の過酸化物価の測定法の最後に記載のある式から考察してみましょう。

過酸化物価=(a-b)×F×10/油脂試料量(g)

式から、過酸化物価が、チオ硫酸ナトリウムの消費量(油脂検体試料 – ブランク試料|a-b mL)と比例することは明らかです。

よって、不飽和脂肪酸の自動酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、過酸化物価は増加し、ヨウ素を滴定するのに要するチオ硫酸ナトリウムの量は増加します。

選択肢5につづく。。。

ポイント|

【A】の【B】と【C】の反応から、【B】が増加すると遊離した【D】が増加する。【E】は、定義として「【A】 1 kg中の【B】により【C】から遊離される【D】量の mg数(meq / kg)」として表される。つまり、【B】が増加すると、【D】量である【E】は増加する。
【E】の測定法の式から、【E】は、【F】の消費量(【A】検体試料 – ブランク試料|mL)と比例する。よって、【G】により【A】中の【B】が増加すると、【E】の測定において、【E】は増加し、滴定に要する【F】の量は増加する。

A. 油脂
B. 過酸化物(脂質ヒドロペルオキシド)
C. ヨウ化カリウム(KI)
D. ヨウ素(I2)
E. 過酸化物価
F. チオ硫酸ナトリウム
G. 不飽和脂肪酸の自動酸化

_____

では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123

Q. 油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

楽しく!驚くほど効率的に。

https://note.com/matsunoya_note

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コーヒーブレイク☕🍰🍊( ^^) _U~~

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選択肢5. 論点:過酸化物価 / ビタミンEの抗酸化作用
Q5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。A.【正|誤】|

過酸化物価 / ビタミンEの抗酸化作用について解説します。

第103回薬剤師国家試験問123、選択肢5(問103-123-5)では、論点「油脂の変質試験法」のうち、過酸化物価をテーマとして、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を、ビタミンEが抑制するか問われました。

トコフェロールの抗酸化作用について、比較的新しい科学的根拠が記載された参考資料としては、J-Stageのホームページ(HP)に掲載された科学文献「J-Stage|池田ら, リノール酸メチルの自動酸化におけるトコフェロールの抗酸化効果 (第1報)抗酸化活性及び停止機構, 油化学, 26(6), 343-349 (1977) https://doi.org/10.5650/jos1956.26.343 」に、情報がわかり易く整理してありました。

詳細は、上記、J-Stage HPの科学文献をご参照ください。

最初に、ビタミンEについて解説します。

厚生労働省|「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書 > II 各論/ビタミン(脂溶性ビタミン)/ビタミンE http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html によれば、ビタミンE脂溶性ビタミンに分類され、化学構造の異なる4種のトコフェロールおよび4種のトコトリエノールの合計8種類の同族体が知られています。

クロマノール環のメチル基の数(n)により、α-(n=4)、β-(n=3)、γ-(n=3)及びδ-(n=2)体に区別されます。 

血液及び組織中に存在するビタミンE同族体の大部分は、α-トコフェロールです。このことから、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」ではα-トコフェロールのみを指標にビタミンEの食事摂取基準を策定し、α-トコフェロールとして表すこととしています。

画像7

図1 α-トコフェロールの構造式
(C29H50O2、分子量=430.7)

※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第103回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より 出典:厚生労働省|「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 > II 各論  ビタミン(脂溶性ビタミン)ビタミンE http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html

次に、抗酸化活性の発現機序について解説します。

上記の科学文献(池田ら、1977)によれば、トコフェロールは、不飽和脂肪酸の自動酸化の過程で生成したペルオキシルラジカルに水素を供与して(式1)、トコフェロキシルラジカルとなります。

トコフェロキシルラジカルは、さらに、ペルオキシルラジカルとカップリングして抗酸化活性を発現します(式2)。

ROO・ + AH → (A…H…OOR) → ROOH + A・ …(1)

ROO・ + A・ → ROOA …(2) 

※ペルオキシルラジカルとトコフェロキシルラジカルとのカップリング / 抗酸化活性の発現

2A・ → A - A …(3)

ただし、
AH:トコフェロール、
A・:トコフェロキシルラジカル、
ROO・:ペルオキシルラジカル、
ROOH:過酸化物(脂質ヒドロペルオキシド)

上記、科学文献(池田ら、1977)のFig. 1に、リノール酸メチルに各種トコフェロール(α-T、γ-T、δ-T)を添加した際の、コントロール(トコフェロール無添加)に対する、それぞれ、酸化重量増加(A|mg)、ヨウ素滴定による過酸化物価(B|10^3 meq / kg)およびIRスペクトルにより得られた過酸化物価(C|10^3 meq / kg)の比較が示されています。

図2に、文献のFig. 1を抜粋して示しました。

過酸化物価(POV)の増加曲線において急速な上昇が認められる直前の点(誘導期の終点)は、コントロール(無添加)に対し、各種トコフェロールの抗酸化活性に応じて、延長されました。

これは、トコフェロールが不飽和脂肪酸(リノール酸メチル)の自動酸化を抑制したことを示しています。

文献では、トコフェロールの抗酸化活性を、誘導期の終点とみなすことが可能な指標の実測値、すなわち、酸化重量増加では16mg、POVでは0.70×10^3 meq / kgを得るのに要する時間で比較し、α-T、γ-T、δ-Tの相対抗酸化活性は、コントロールに対して 3.2 : 11.7 : 19.6 であり、α-Tに対しては 1 : 3.7:6.2であると結論しています。この抗酸化活性の順番は、多くの報告と一致しました。

画像8

図2 リノール酸メチルの自動酸化におけるトコフェロールの影響

酸化重量増加(A|mg)、ヨウ素滴定による過酸化物価(POV;B|10^3 meq / kg)およびIRスペクトルにより得られた過酸化物価(POV;C|10^3 meq / kg);コントロール(無添加:d)および各種トコフェロール添加(α-T:a、γ-T:b、δ-T:c)
※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第103回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より
出典:J-Stage|池田ら, リノール酸メチルの自動酸化におけるトコフェロールの抗酸化効果 (第1報)抗酸化活性及び停止機構, 油化学, 26(6), 343-349 (1977) https://doi.org/10.5650/jos1956.26.343 Fig. 1

ここまでの学習した内容を、論点解説動画で確認します(図3参照)。

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https://youtu.be/wTix3a-XdSU

図3 過酸化物価 / ビタミンEの抗酸化作用 抜粋

※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第98回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より
出典:厚生労働省|「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 > II 各論  ビタミン(脂溶性ビタミン)ビタミンE http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html、J-Stage|池田ら, リノール酸メチルの自動酸化におけるトコフェロールの抗酸化効果 (第1報)抗酸化活性及び停止機構, 油化学, 26(6), 343-349 (1977) https://doi.org/10.5650/jos1956.26.343

一方、文献で著者らは、トコフェロールの水素供与能は、そのクロマノール環のメチル基の数による置換基効果に応じて、α-T>γ-T>δ-Tであり、また、同様の順番でトコフェロールがそれ自体、空気酸化(式4)されること示しました。

AH + O2 → (A…H…O2) → A・ + ・OOH …(4)

トコフェロールの不飽和脂肪酸の自動酸化に対する抗酸化活性は、抗酸化作用の最初の段階の反応に関連する水素供与能と逆の順番を示します。この点に関して、著者らは、考察において、不飽和脂肪酸と同様に、トコフェロール自体が自動酸化されることを要因として挙げています。実際の不飽和脂肪酸の自動酸化反応が長期保存において起こることを考慮すると、添加剤であるトコフェロールの空気酸化に基づく抗酸化能の低下は重要な課題です。トコフェロールに対して知られている相乗剤はヒドロキシル基等を有し、トコフェロールと水素結合することによって、水素供与をある程度妨害する可能性が考えられますが、著者らは、それ以上に、空気酸化からトコフェロールを保護しうると考察しています。

(完)

ポイント|

【A】は、【B】の【C】の過程で生成した【D】に水素を供与し【E】となる。【E】は、さらに、【D】とカップリングして【F】活性を発現する。一方、【A】自体が【C】されることが、【F】能の低下をもたらす。【A】に対する相乗剤はヒドロキシル基等を有し、【A】と水素結合することによって、【D】への水素供与をある程度妨害するが、空気酸化から【A】を保護しうる。

A. トコフェロール
B. 不飽和脂肪酸
C. 自動酸化
D. ペルオキシルラジカル
E. トコフェロキシルラジカル
F. 抗酸化

_____

では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123

Q. 油脂の変敗に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢|

1. オレイン酸のみを含む油脂より、リノール酸のみを含む油脂の方が酸化されやすい。
2. 同じ条件で酸化したとき、γ-リノレン酸のみを含む油脂より、α-リノレン酸のみを含む油脂の方が、カルボニル価は著しく速く上昇する。
3. 不飽和脂肪酸を含む油脂のヨウ素価は、酸化により上昇する。
4. 酸化により油脂中の脂質ヒドロペルオキシドが増加すると、過酸化物価の測定において、滴定に要するチオ硫酸ナトリウムの量は減少する。
5. 食品添加物として添加したビタミンEは、不飽和脂肪酸を含む油脂の過酸化物価の上昇を抑制する。
(論点:油脂 / 変質試験法)

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