脚本29「殺すつもりはなかったんです」

《つもりはなかった、でもしちゃった》

●登場人物
◯羽地（はじ）
◯武市（たけいち）
◯虫亀（むしがめ）

●羽地は舞台上。横たわる武市。

羽地「友達の部屋に遊びに来ただけで、殺すつもりはなかった、ほんのちょっと言い争いをしていただけなんだ。トイレットペーパーを切らしてただけで、俺はあんなにキレなくてもよかった。まさか殴った衝撃で首の骨が折れて死んじまうなんて……」

●武市を背負い込み、椅子に座らせる。

羽地「よぉ、武市ぃ、元気だったか？　久しぶりだなぁ。……やっぱ死んでんじゃんかよぉ！　サイコパスかよ俺はよぉ答えてくれよぉ！　元気出せよぉ！」

●ピンポーン

羽地「やっべぇぇ、誰だよちくしょう誰だよぉ！　はーい、今行きまーす」

●ドアを開く羽地。

虫亀「こんにちは。この部屋の方ですか？　警察ですが」
羽地「えぇー！　ごめんなさい僕じゃないんです！　すいませんでしたぁ……あぁ」
虫亀「いや、そこまで……はぁ家主の方は？」
羽地「や、やぬし！？　あぁあ…僕です！」
虫亀「どっちだよ！」
羽地「僕が家主です！」
虫亀「そうですか。私警察ですが」
羽地「うわぁぁ僕じゃないんですぅぅ！」
虫亀「だからどっちだよ！」
羽地「生きてます！」
虫亀「見りゃわかるわ！」
羽地「トイレットペーパーがなかったんですぅ」
虫亀「買いに行きなさいよ」

●虫亀と羽地の会話中に武市が動き出す。

武市「うぅん、ねむ」
虫亀「この辺で殺人事件がありましてね」
羽地「わぁーー！　トイレットペーパーが無かったんですぅ」
虫亀「買いに行け！」
武市「頭がクラクラするな」

●武市少し歩くが、頭がクラクラして転ぶ。頭をぶつけて死亡。床に横たわる。

虫亀「まぁ、何か気づいた事がありましたら連絡ください」
羽地「えぇえっ！？」
虫亀「なんか怪しいな」
羽地「あっはっは、怪しい怪しいあやしたいぃ。はっはっは」
虫亀「情緒！　なにその情緒！」

●ドアを閉める。虫亀は部屋を張り込む。

虫亀「変な奴だな……念のため張り込んどくか」
羽地「やべぇよぉやべぇよぉ……やべぇよぉ」

●うろうろする羽地。武市を座らせた場所に座る。

羽地「……し、死んでるぅぅ！？　最初からーーー！　それ最初から！　え、なんで移動してんの！？」

●ピンポーン

虫亀「どうしました！？　叫び声が聞こえましたが！　どうしました！？」
羽地「ん、いやぁ。なんでもないっすよ、ええ」
虫亀「何その落ち着きよう、死んでるーとか聞こえましたけど」
羽地「え？　あ、あぁ！　シャーペン！　シャーペンの芯が出てきてさ！　芯でるぅー快感～～ん！　って」
虫亀「気持ちわりぃな」
羽地「死んでるぅ～死んでるぅ～快感～♪」
虫亀「……何か匂いますね」
羽地「あ……拭いてなくて」
虫亀「その匂いじゃなくて！」
羽地「じゃあ」

●ドアを閉める。このやり取り中に武市はまた起き上がる。頭をさすりながら水を取りに行く。

羽地「き、消えた！？　やったぁ！」
武市「おうどうした羽地、頭痛くてさぁ」（肩ぽんってする）
羽地「おばけーーー！」（ふっとぶ）
武市「そんな強くやってねぇよ！？」

●羽地気絶。頭打って死亡。

武市「お、おい羽地！　どうした！？　羽地！　し、死んでるっ！」
虫亀「ダンダンダン！　どうしました！？　叫び声が聞こえましたが！」
武市「誰だよぉ、やべぇよぉ、はーい！　どうすんだよぉ」

●ドアを開く武市

虫亀「どうしました、だれ！？」
武市「あんたこそ誰だよ！」
虫亀「私警察の虫亀という者なんですが」
武市「うわぁぁぁぁ！」
虫亀「うわぁぁぁぁ！　びっくりするぅ！　急に叫ばれるとー！　びっくりするぅ！　わかるぅ！？」
武市「わかるぅ！」
虫亀「さっきの方はいますか？」
武市「んうぇっへ！？　僕しかいませんが」
虫亀「いや、さっきまで違う人と話してたんですが」
武市「いや生きてる人は僕しかいませんよ？」
虫亀「おばけーーー！？」

●虫亀気絶。頭打って死亡。

おわり

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