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2021年 映画鑑賞覚書

今年は映画をみよう、ということで、感想未満の覚書をつらねていきます。
こちらのページを随時更新。

好きな監督:中川龍太郎さん、西川美和さん、
沖田修一さん、石井裕也さん、是枝裕和さん、
橋口亮輔さん。

#21  火口のふたり

すごいなあ、お互いに感情を遡ってどんどん掘っていくロードムービーなんだな。冒頭から音楽の力がすごい。もはや背徳感とか悲劇のヒロインへの高揚感じゃないのよ。2人にとって交わることは、内観のための瞑想、みたいな感じ。荒井監督は「海を感じる時」の脚本書いてるのか。

#20  いちごの唄

キャスト贅沢だなあ。脇を固める方々が揃いも揃ってうまいひとたち。すごいな。石橋静河さんが好きなのですが、仕草とか、表情とか、うつくしいのよね、なんなんだろう。好き。そして峯田さんの声は優しいね。終始、横道世之介が頭をよぎっていた。

#19  そして、友よ静かに死ね

仏ノワール。久々に硬派なマフィアもの。冒頭はゴッドファーザーオマージュかしら。チェッキー・カリョというお名前どこかで聞いたような、と思ったら「キス・オブ・ザ・ドラゴン」の警官じゃん。それにしてもこの邦題の既視感は。ドニーさんの「SPL 狼よ静かに死ね」。

#18  ジョーカー

ジョーカーとして覚醒するほどに、ホアキンの色気がだだ漏れており胸がくるしい。この苦しさはなんだろう、狂気と色気のはざまに溺れそうな背徳感か。韓国映画にも通じる生活の匂いやじめっとした生ぬるさが漂うような画もすき。音楽も良かったな。

#17  緋牡丹博徒

富司純子さんに漂う緊張感の求心力みたいなものがすごいのと。高倉健さんがかっこよすぎてのけぞる。今まで健さんの魅力をいまひとつ理解してなかったわたし。夫と共に笑ってしまうほどしびれる。そうかそうなのか。。圧倒的なオーラ。健さんの任侠ものを漁ろう…。

#16  グリーンブック

黒人有名ピアニストとイタリア系アメリカ人の運転手がアメリカ南部のツアーへ。アイデンティティってなんだろう。裁けるひとなんているんだろうか。農場の黒人が不思議な目でドクを見る。クリスマスという日は、やっぱり特別なんだなあ。祈りであり赦しである。

#15  モリのいる場所

やさしいなあ、沖田作品はいつもやさしいけれど、これは輪をかけてやさしい。となりのトトロみたい。黒田大輔さんを探していたら、ついに気づけなかった。お肉屋さんだった。あらゆるキャスティングが花丸。光は、やわらかくも、あたたかくも、さすようにも、照らしてくれる。

#14 ザ・スクエア 思いやりの聖域

スウェーデンの風刺映画。美術館のキュレーターが巻きこまれる不条理。高みの見物のつもりが、明日は我が身に思えてくるから不思議。とにかくずっと不穏な空気が流れている。不穏さって個々人の意識がつくるんだな。意思疎通のとれなさ。痛々しさ。

#13 オールドボーイ

言わずと知れたパク・チャヌク作品。なぜかホラー寄りだと思い込んで構えていたら、そっちじゃなかった、そうだった、パク・チャヌクだった。グロい、ミステリー。わあ、つらいな。チャヌク作品は気力体力の消耗がすごい。しかしあらためて韓国作品はキリスト教の宗教観がにじむなあと。

#12 リトル・ミス・サンシャイン

すれちがいかみあわぬ家族が、車に乗って遠距離移動するロードムービー。今日友人と話していたことが、そのまま映画のメッセージだった。努力してもどうにもならないことはある。ならば、自分が楽しいかどうか。解放されていく様は気持ち良い。山田洋次監督の「家族」を思い出すシチュエーション。国が違えば。

#11 俳優亀岡拓次

おもしろかった〜。揶揄のようにみえてその実映画や舞台へのリスペクトの気持ちが溢れているというところがハッピーだよな。古今東西。それぞれのドラマ。明かりの使い方が魔法のようだった。意味のなさに意味をこめる。芸達者な方々がそろった逸品。

#10 葬式の名人
川端康成の原案で舞台を現代に、というのがユニークだな。舞台を見ているような掛け合い。奇しくも腕を貸すはなしは、先日観た「At the terrace テラスにて」にも出てきて、なんという偶然。川端作品のモチーフがたくさんあるようで、読んでいれば別の味わいもあっただろうな。

#9 幼な子われらに生まれ
重松清原作。本気でイライラしたし、絶望したし、見るのやめようかと思ったくらい苦しかったけど、そうさせる浅野忠信さんはやはりすごい。とりまく状況は違えど、妊娠中の噛み合わなさは逆にリアルだ。あのクドカン(役)に救われるとは。皮肉なものだ。寺島しのぶさんの色気。

#8 カフェ・ソサエティ
「カフェ・ソサエティ」鑑賞。ハッピーと切なさの入り混じるエンディングの余韻たるや。うれしくて涙が出るよ。音楽にのせて流れていった 95分の映画体験。最高。いくらで想像できる。音とファッションに酔うだけでも。どれも正解。いろいろあるが、やっぱり好きなんだよなあウディ・アレン作品。

# 7 よこがお
深田晃司監督作品、初鑑賞。髪って、物語るんだな。健康も、動揺も、疲れも、余裕も。自分の今がものすごく反映されるんだな。しみじみ。我が身におきかえる。不安になるほど丁寧な演出。池松壮亮さんの美容師姿は「誰かの木琴」でも拝んだけれどやはりとても良いな。

# 6 華麗なるリベンジ
ファン・ジョンミンといえばあの美脚が大好きなのですが、今作は登場せず。法廷でのああいう姿が様になるのは、ほんとうに国民的俳優なんだなあと。ちょっとドン・ヴィトオマージュあり。詐欺師バディものといえば、イングクさんの「38師機動隊」をひさびさに見たくなる。

# 5 At the terrace テラスにて
山内ケンジ監督作品は、劇場などで拝見する予告編が異彩を放っていたけれど鑑賞ははじめて。案の定、なんかすごい。舞台の映画化ということで、セリフの応酬、ワンシチュエーションのおもしろみ。橋本淳さんがとても好きなのでやたらとドキドキしてしまった。

# 4 きみはいい子
呉美保監督の雨や曇りの画がずっしりと。一度に向き合えるのはひとりなんだな。内田慈さん、高橋和也さんの存在って映画をギュッとする。そして池脇千鶴さんに脱帽する。抱きしめたいし、抱きしめてもらいたい。苦しくて泣いたし、救われたようで泣いた。

# 3 町田くんの世界
石井裕也監督の配役は意表をついてくる。(仲野)大賀さん、そうきたか。すごいな。いい味だなあ。あと、よく考えると全然高校生じゃない役者たちが全力で高校生をやっているのも、振り切っていていい。大正解。それでこそ、純な主役2人が透明で映えるんだ。

# 2 まくこ
鶴岡慧子監督の、絶妙な年齢の少女や少年の描き方ってすごいなあって思う。距離感に敬意がある。顔がよい。どこかで見たことがあるようなと思ったら、トッキュウジャーのヒカリくんだった。まじまじと草彅くんをみてハンサムだなあとおもった。色気がすごい。

# 1 ばるぼら
いわずもがなクリストファー・ドイルの映像美。ネオンもカラスも明け方のごみの山も。じっとりとした新宿のむさくるしさみたいなものが美しく映る。男女の絡みは多いが、双方が中性的。それは稲垣吾郎さんと二階堂ふみさんだったからこそなんだろうな。濃密なジャスト100分映画。

目に触れられず流れていく宙ぶらりんなローカル情報を囃し立てて、自分の住む地域ってなんかいいな、誇らしいな、暮らしやすいな、と感じられる循環を作り出したいと思っています。(team OHAYASHI細川敦子)