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東南アジア放浪記

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リュック1つで旅に出た。 バックパッカー
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東南アジア放浪記 ~猛者~

東南アジア放浪記 ~猛者~

ラオスにて。長距離バスで次の町へ。寝台バスだが2人でひとベットのため、他人と添い寝をすることになった。スペースがほとんどなく体を真っ直ぐにしていなければならないうえに足も完全に伸ばせない。バス内は欧米のバックパッカー達と現地の人々が混在している。停車する度に乗客は増えていき、ベッドの数が足りなくなった今では通路で人がひしめき合っている。

すると、バスが山道の真ん中で停車した。何も知らされてないが

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東南アジア放浪記~告白~

東南アジア放浪記~告白~

カンボジア、プノンペンにて。

あの日も特に何も無かった。特に何もなく一日を終えようとしていた頃、偶然みかけた良さげなBARに入ってみた。

BARカウンターに座ると、隣に1人で赤ワインを飲んでいる美しい女性がいた。彼女は正統派な美人で少し近寄り難かったが、俺は勇気を出し、たわいも無い会話を始めた。

彼女は人と違うオーラを纏っていて、不思議な魅力を感じた。酔いが回れば回るほど打ち解けていき、お互

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東南アジア放浪記~宿の少年~

東南アジア放浪記~宿の少年~

部屋で休んでテレビを見ているとテレビ台の前を黒い影が横切った。あまりの速さにはっきりとは見えなかったが俺はすぐに勘づいた。ゴキブリだという事を。俺はほっとかずに駆除することにした。早めに駆除しなければ奴に自由を与えてしまい、俺の靴やリュックの中などに入り込んでしまうかもしれない。そうなるとゴキブリ嫌いな俺はたまったもんじゃない。ただ自分一人で戦う勇気はなく仲間が欲しかった。そこで閃いた。宿の主人に

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東南アジア放浪記~こだわり~

東南アジア放浪記~こだわり~

旅をしていると、自分と同じ旅人に多く出会う。目的も旅のスタイルも人それぞれで見ていて面白い。皆に共通するのは旅が好きだということ。そして自然や人間を心から愛する人が多い気がする。

カンボジアの川沿いを1人歩いていると、白人の男が行き交う車の間をすり抜け、道路を渡りながら、大きな声で俺を呼びかけた。男が旅人なのは一目瞭然だった。同じ旅人を見つけて声をかけてきたのだろう。「写真を撮ってくれないか?」

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東南アジア放浪記~ミャオミャオ~

東南アジア放浪記~ミャオミャオ~

低予算で旅をするバックパッカーの俺にとっていかに節約するのかが鍵である。かといって常に支払いを渋る訳ではなく、価値のある物や体験などには出し惜しみがないが、食には興味がないため、俺は基本ローカルな安い飯を食っている。
観光地にあるような観光客向けのレストランは物価が安い国でも驚くほど高い。俺がよく食べているのはローカルなレストランのチャーハンだ。チャーハンは安くてハズレがない。料理をしない俺にはわ

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東南アジア放浪記〜二重決済〜

東南アジア放浪記〜二重決済〜

タイのとある島。この日もスコールが凄かった。俺が宿に着いた瞬間に突風が吹き荒れ、大雨が島を包む。

ブッキングドットコムで予約した宿。フロントで宿泊代を支払い、チェックインを済ませ、部屋でスコールが過ぎ去るのを待っていた。

頭の中は既に今夜のナイトライフのことでいっぱいで、出会った女性といい感じになってしまう妄想であっという間に時間は過ぎていく。念の為、部屋を綺麗にし、貴重品をベッドの下へ隠して

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東南アジア放浪記~そして次の国へ~

東南アジア放浪記~そして次の国へ~

そろそろVISAが切れるため、隣国のカンボジアにでも行こうかと思っていた矢先、トラブルに見舞われてしまう。ATM で現金を引き出せなくなってしまったのだ。カード会社に問い合わせ、話を聞き、色々試した結果どうやら数字4桁のパスコードが間違っている可能性が最も高いという考えに行き着いた。ここ1ヶ月以上ATMを使っていないため、数字の溢れる日常のせいで、間違ったパスコードを脳に上書きで記憶してしまったよ

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東南アジア放浪記~淡い死の香り~

東南アジア放浪記~淡い死の香り~

亡き中国人達が眠る墓地。
奥へ進んでいくと、1匹の野野犬が前から吠えながら全速力で向かってきた。しかし、俺は奴らの対処法を知っている。背を向けて走って逃げようもんなら奴らは狩猟本能で追いかけてくる。そして嚙まれてしまう恐れがある。こんな時の対処法は、恐れを見せず、背を向けず、ゆっくりと遠ざかること。野生の勘で自分より弱いものだと認識されてしまうと襲い掛かってくる。日本のペットショップで見かける犬や

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東南アジア放浪記~容赦なく撃つ人々〜

東南アジア放浪記~容赦なく撃つ人々〜

タイでは旧正月にあたる、四月のある時期に行われるソンクランというイベントがある。ソンクランは水かけ祭りとして世界に知られていて、この期間は見ず知らずの人にいくらでも水をかけていいとされている。水をかける行為には敬意を払うという意味があるらしいが、俺はこのイベントが好きではない。何故ならこの水のかけ合いに参加する参加しないの選択肢はなく、望んでいなくても強制的に水をかけられてしまうからだ。

町の至

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東南アジア放浪記〜フットボーラー〜

東南アジア放浪記〜フットボーラー〜

近所のスーパーマーケットへ。海外のスーパーでも日本同様、夜になるとタイムセールで食品が安くなってたりする。8時過ぎに来た俺は割引きになっている弁当とコリアンチキン、フルーツをカゴに入れ、店内を見て回っていた。

そして、冷凍食品が入っているショーケースの前を通り過ぎようとすると、足元で何かが動いた。パッと目線をやると、そこにはそこそこデカめのネズミがいたのである。

ドラえもん程パニックにはならな

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東南アジア放浪記~微笑みの国タイランド~

東南アジア放浪記~微笑みの国タイランド~

夫婦で経営している宿。旅人が多く泊まる宿らしく、主人は気さくでフレンドリーだ。

「君は日本人か?大麻はどうだ?」

これが彼から言われた最初の言葉だ。

フロントではいつも主人が優しい表情で大麻を売っている。客との会話を見る限り、主人はフレンドリーを通り越してお節介が過ぎていると日本人の俺は常に思っている。

日が暮れ、夜の街へ出かけようとフロントの前を通ると、案の定主人が俺に話しかけてきた。

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東南アジア放浪記~アニメイベント~

東南アジア放浪記~アニメイベント~

タイのバンコクにて。友人がFacebookでアニメのイベントを見つけた。日本のアニメがタイ人にどう愛されているかをこの目で見るために、俺はさっそく会場へと足を運ぶ。入場、参加の条件はFacebookでこのアニメイベントのページをフォローすることだと受付のスタッフは言う。なんとなく友人や知り合いにアニメイベントのページをフォローしている事と居場所が知られたくなかったため、フォローした画面を受付のスタ

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東南アジア放浪記~路地裏の屋台にて~

東南アジア放浪記~路地裏の屋台にて~

夜10時。俺は一人、街へと繰り出した。路地裏にある汚い屋台でローカルな料理を頼み、テーブルについて飯を頬張ると、隣のテーブルで同じく一人で飯を頬張っていた白人の男に話しかけられた。

話を聞くと、彼も俺と同じく東南アジアを旅していた旅人だったのだが、ここタイの魅力に翻弄され、始めは数週間を予定していた滞在も今月で4か月目に突入するらしい。羨ましいことにキレイなタイ人の彼女もでき、タイを離れづらくな

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東南アジア放浪記~羊が一匹~

東南アジア放浪記~羊が一匹~

安宿には世界各国のバックパッカー達が多く宿泊している。

日差しが強かったとある昼。俺は夜の街に近い場所で、安宿を見つけた。さっそく宿に入り、チェックインを済ますとスタッフの若い男が部屋まで案内してくれる。角を曲がり、部屋へ向かうと、廊下に響き渡る喘ぎ声。気付いたら俺は真顔で耳を澄ましていた。

部屋のドアが開いてるんじゃないかと思うほどの大きな音で、もはや耳を澄ますまでもない。

「うるさいだろ

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