【美術展2024#100】そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠@東京都庭園美術館
会期:2024年11月30日(土)〜2025年2月16日(日)
会期終了が早い順に記事にしているため時系列的に前後するが、東京都写真美術館(#95,#96)と同日に訪れた東京都庭園美術館。
実は先にこちらを見た後、天気が良かったのでここから写真美術館まで歩いた。
国の重要文化財でもある旧朝香宮邸を引き継いで美術館としている東京都庭園美術館。
ホワイトキューブとは全く違う展示空間の中で二人の作品はどのように展示されているのだろうか。
入口すぐ脇の部屋。
占いの館感がすごい。
入場して最初の部屋は三嶋氏のガラス作品が並ぶ。
1990年代からヴェネチアの工房でガラス職人と協働しながら作品制作をしているという。
置かれる形は一つとして同じものはない。
偶然性が大きく作用しているのだろう。
ガラスという性質上単体での大きさはある程度制限されるので大きさの自由度は低いが、道具としての機能美が必要ないため形の自由度は高い。
ガラスも鉄もその成形時、熱は光となり「そこに光が降りてくる」。
そしてその光を受けて作品が誕生する。
特徴的な形の空間に球体が置かれる。
窓から入る光を受けて影が伸びる。
扉や窓よりも大きな作品。
このままでは絶対に部屋に入れられない大きさ。
細部を見たら連結用のボルトが付いてた。
仕方ないけれど本当はこういうの無くしたいだろうな、きっと。
石けんが積まれる。
透明感のあるものは光を通してきらきらと輝いている。きれい。
チベットの積み石を思い出した。
圧倒的占いの館感。
三嶋氏は作品が完成するとサイズや重量を記すとともにスケッチをするのだそう。
なんだか謎の植物図鑑のようにも見えてくる。
こちらは青木氏のスケッチ。
会場で流れていたものと同じインタビュー動画がYouTubeにもあった。
「10日あったら9日半くらいは切ってる感じ」と述べる青木氏。
切り出す鉄輪の数は年間で万を超すとのこと。
オラファー・エリアソン感あふれる照明。
本館3階。
光を全面に浴びて育つ植物のようにも見える。
直線基調の部屋において、その形状は小さいながらも個性的な壁や窓に負けないくらいの存在感がある。
会場は新館へと続く。
こんなところにも青木氏の作品が?
と、多分ここを通る人みんな同じこと考えたと思う。
だがこれは普通に市販しているただの鎖樋のようだ。
これ作品でやっちゃえば面白いのに。
ついでに市販しちゃえばいいのに。
もし出るなら価格次第では買う。
そしてなんならこのガラス窓も三嶋氏の作品に見えてくる。
実はこのガラス窓、新館の監修を手がけた杉本博司氏がこだわった部分とのこと。
本館入口のルネ・ラリック作品へのオマージュのようだ。
相変わらず芸が細かい。
新館ではギャラリーを一室丸々使って青木氏の作品が展開されていた。
この部屋には自然光がほとんど入ってこないので、いわゆる通常の美術館での展示状態なのだが、直前まで明るい自然光を通した作品を本館で見てきたのでなんだか逆に異質に見えてくる。
異世界のジャングルに迷い込んでしまったような感覚。
光が欲しい。
影が欲しい。
そんなことを思った。
とにかく天気の良い日だった。
そして陽の光を受けて作品から影が伸び、その空間まで含んでの作品に思えた。
曇りや雨の日、そして夜間にはどう見えるのだろう。
今日ほど影は伸びない。
だが、その明るさは違うかもしれないが、やはり「そこに光が降りてくる」のだろう。
その光を受けた作品は、きっと今日とはまた違った魅力を感じさせてくれるに違いない。
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