【美術展2024#54】ポケモン×工芸展 美とわざの大発見@MOA美術館
会期:・MOA美術館
2024年7月6日(土) 〜9月9日(月)
巡回:・麻布台ヒルズ ギャラリー
2024年11月1日(金) ~ 2025年2月2日(日)
・松坂屋美術館 / 愛知県名古屋市
2025年4月26日(土) ~ 6月15日(日)
・八戸市美術館 / 青森県八戸市
2025年6月28日(土) ~ 8月31日(日)
・長崎歴史文化博物館 / 長崎県長崎市
2025年9月12日(金) ~ 11月30日(日)
半年ぶりのMOA美術館。
ちょっと遠いから温泉とセットじゃないとなかなか来れないな。
しかしいつ来ても美しい神殿のような美術館だ。素晴らしい。
エントランスの杉本作品はほとんどの人がスルーしていた。
めちゃくちゃ有名なシリーズなのよこれ。
さて、肝心のポケモンなのだが世代ではないので実は全く知らない。
かろうじてピカチューの名前だけ知ってるくらい。
(藤子不二雄とかなら詳しいのだけど…)
だからそんな私にとってポケモンはあくまでおまけで、展覧会自体は昨年三井記念美術館で見た「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」展の延長として捉えている。
娘たちはもちろんポケモンメインなのだが。
・福田 亨 【木工】
昨年の「超絶技巧展」にも出品していた作家。
モチーフが変わってもその技術は変わらない。
・今井 完眞 【陶磁】
3代続く陶芸家の家に生まれ、本人も東京藝大大学院陶芸専攻修了という陶芸エリート。
ポケモン関係なく陶芸作品としてみてもやっぱり超絶すごい。
・吉田 泰一郎 【金工】
この作家も「超絶技巧展」に出品していた。
あの時の作品も会場で一際目立っていたが、今回のポケモン作品も超絶技巧が異彩を放っていた。
本当にこういう生物がいてそれをそのまま剥製にしたかのようなのリアリティ。
・植葉 香澄 【陶磁】
圧倒的文様パワー。
友禅染の絵師だった祖父の影響で小さな頃から様々な文様や意匠に親しんでいたとのこと。
ポケモン関係なく色々なものに落とし込める汎用性の高さも強みだ。
・桝本 佳子 【陶磁】
作家の言葉通りこういう形のポケモンなのかとも見紛うくらいに器と装飾の均衡が取れている。
「ほのおタイプ」「ひこうタイプ」等のポケモンの文脈を知っていればより深く楽しめそうだったのだが私はそこまでわからず。
・桂 盛仁 【金工】
今回の出品作家最年長80歳、「彫金」の人間国宝である桂氏の作品。
伊勢神宮の式年遷宮に参加して御神宝を制作したり、奈良薬師寺国宝東塔の舎利容器を制作したりしているすごいお方。
この仕事よく引き受けてくれたな。
私はそれぞれのキャラクターはやはり全く知らないのだが金銀の対比が風神雷神図のようにも見えた。
・葉山 有樹 【陶磁】
有田出身、15歳で窯元に就職し夜学に通いながら腕を磨き10年後に独立、というまさにザ・職人。
執拗なまでに細部まで描写されるポケモンの世界観。
ポケモンを知らない私でも引き込まれる圧倒的なオーラ。
・池本 十三 【ガラス】
今回初めてゲームというものを体験したとのこと。
作品制作のためにリクエストすれば細かい資料も提供してもらえたとのことだがそれでは納得せずに自らゲームを徹底的にやり込みその世界観を自身にインストールしたそうだ。
御年70にしてその柔軟な適応力は素晴らしい。
長らく多摩美工芸科で教授をされていた(2023年度末退官)ので、若い子達との交流のおかげで思考もだいぶ若いのかもしれない。
・池田 晃将 【漆工】
この作家も「超絶技巧展」に出品していた。
作品の形が変われどその圧倒的個性はあ、あの人だ!と瞬時に浮かぶ。
レーザーカッターで極小パーツを切り出し、漆と螺鈿を駆使して作品に落とし込む。
光の加減で複雑な奥行きが生まれるその独自の世界観は、古典技法を駆使しているにもかかわらず未来の(未知の)オーパーツのように見えるのも面白い。
・城間 栄市 【染色】
紅型三宗家の一つ城間家16代。
自らの旅の経験も作品に落とし込みポケモンの世界観を重ねる。
ただの模様ではなくデザインにしっかりと意味があるのだ。
・須藤 玲子 【染織】
今回一の映えスポット。
若い子達が撮影の列をなしていたが作家ご本人は70歳。
広い世代の興味関心を惹きつける作品を作れるってすごいなあ。
・新實 広記 【ガラス】
シャープなエッジは緊張感がある。
透明半透明の表面の差異や、そこから見える泡が閉じ込められていて時間のような概念も感じるのが面白い。
ポケモン全く知らなくとも全体的にやっぱり超絶すごかった。
若手から中堅どころの作品は世代だからかノリノリで作ったような感情が見て取れるし、重鎮どころは初めてポケモンに触れた人も多いだろうに真摯にポケモンに向き合っており、若い柔軟な思考力発想力が素晴らしいと思った。
人間国宝やガチの職人、凄腕作家たちが真面目に全力で遊んだ感じの空気感が心地よかった。
作品や作家の背景や文脈を何も知らなくても、まず作品そのものの素晴らしさで素直に感動でき、その背景や文脈を知ることでさらに深く作品やテーマを考えることができる。
先日の村上隆展でも思ったのだが、これってやっぱり現代美術界隈でももっと重要視されるべき大切なことなのではないかな。
ということで大人も子供も楽しめた展覧会だった。
私も頭を柔らかくして少しはポケモンの知識を入れてみるかと思って重い腰をあげ、子供と一緒にポケモンを見てみようとしたところ、最近彼女たちは「アイプリ」なるものに夢中なためポケモンは見せてもらえなかった。
バズリウムチェ~~ンジ!!!!⭐️😭
だがピカチューはしっかり買わされた。
さて、この展覧会、次の巡回先は何と麻布台ヒルズギャラリー。
さして広くないあのスペースにこのなかなかな量の作品群をどのように展示するのだろうか。
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