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妄想『階段逆走サラリーマン』

【現実世界】
東京の駅のホームの階段には、しばしば「下り」と「上り」でぶつからないように、矢印で分けてくれている。しかし、その矢印を無視して駆け下りてくるサラリーマンがいた。多分、その大きな矢印を彼は見えていないのだろう。
上りの人にぶつかりそうになりながら駆け下りていたが、結局電車に乗り遅れていた。
矢印通り下り側で降りていたら邪魔になる人はいなく電車にも間に合っていたと思う。
汗だくのサラリーマンは30代前半のメガネをかけていた。
僕が得れる情報はこれだけ。

【妄想世界】
「いってきます」
会社に行く時にいつも言っているけど、今日は言わない。というより言えない状況だ。
昨日、会社の付き合いで飲み会で帰りが遅くなった事から妻と大喧嘩をしたからだ。
無言で玄関を出て、いつもの電車に乗り、いつもの会社までの道を歩く。いつものように仕事をこなしていく。いつもと違うのは妻と喧嘩したことだ。

いつものように、もうすぐ退勤の時間がくる。
しかし、さらにいつもと違う出来事が起きた。

僕の携帯に着信がきたことだ。

その着信に出て30秒ほど相手と喋った僕は、会社に早退を申し出て会社を飛び出した。
1秒でも早く前へと進みたかった。
改札を通ってホームへと続く階段を下りるが、その時に限って前から上る人が来てうまく下れない。
迷惑そうにこちらを見る男性もいたが、こちらの身にもなって欲しい。

結局、来てた電車には乗れずに次の電車を待つことになった。
東京の電車は、地元と違って本数も多くて、2〜3分に1回は電車がくる。
しかし、今日は次の電車が長く感じた。

やっと来た電車は、特別な電車に見えた。

今日、妻に謝ろうと思う。
僕はもうお父さんなんだから。

【現実】
それなら許すけどね、

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