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マイペースな息子が望むのは、仲間と一緒に答えを探す未来だった

週末、志望校決めの一助にするべく、イベントに参加してきた。

学校説明会の予約が取れずに嘆いていたミライコンパスで、ついにゲットした予約。

定員1500名が8枠も用意されていたので、とある1校の「定員100名1枠だけ」の説明会より予約は容易である。でも、難攻不落かと思われたミライコンパスで、初の「勝ち」を得たのはガッツポーズもの。

その後、緊急事態宣言による開催の有無が気がかりだったが、無事に開催の運びとなった。

会場までは、電車で40分ほどの道のり。久しぶりの電車。乗り換えは2つもある。乗り鉄の兄は大層よろこんだ。

ホームに電車が到着すると、電車の扉に貼ってあるQRコードを見て目が輝いた。「これさ、なんだか知ってる?」と、聞いてくる声が得意気。

はいはい、知らんよ。わたしゃこの1年、ほとんど電車乗ってないしね。

ホームドア開閉の制御システムなのだそうだ。車掌さんの扉の開閉操作にホームドアの動作を連動させたり、列車の長さやドアの数・位置を記憶させて、車種や編成に応じて開閉するドアを変更させたりもできるらしい。すごいな、QRコード。

最寄り駅はホーム幅が広いせいか、未だホームドアは設置されていない。だが、沿線でも着実に増えている。安全に向けた取り組みは、今後、通学で長らくお世話になるであろう我が家には大変ありがたい。

コロナ以降、乗り鉄活動を堪能できなくなった兄は、ユーチューブやらネット検索やらで、ホットな鉄道情報を掘り起こすのを楽しんでいる。今も「電車」と入力したら、自動検索で「QRコード」と出てきた。どんだけよ。

電車に乗ると、やれ音がいいだの、表示が変わっただの、シートが新しいだの、アナウンスが違うだの、駅舎がきれいになっただの。食の体験はなかったけど、行く先々で五感を研ぎ澄ませていた兄。

いやいや、今日の目的は、電車に乗ることではないのですよ。どんな学校に行きたいか、期待に胸を膨らませてほしいのですよね。

前夜、「明日、中学の先生にどんなこと聞きたい?」と兄に尋ねたら、答えは「うーん」。そりゃそうだ、いきなり言われてもね。

明日までに考えておいて、と伝えてあった。電車に興奮する気持ちは少々抑えていただき、「何か思い浮かんだ?」と、改めて聞いてみた。

「うん。あのさ、先生が勝手に意見を決めるんじゃなくて、あの子の意見も納得できるし、この子の意見もおもしろいしって、いろんな話がいいねってなるような授業なのか、って聞きたいな」

え?

「お母さんはてっきり、ひとり一台タブレット配布がありますか?とか、実験はたくさんありますか?とかを聞きたいのかと思ってたよ」

「それも聞きたいけど、みんなと一緒に活動する授業があるのか知りたい」

今、授業でたびたび、グループで意見をひとつにまとめて発表する機会があるらしい。ひとりで黙々と問題を解くより、クラスメイトと話し合いながら答えを探していくのが楽しいとのことだった。

兄はマイペースで、集団の中では孤立しがちなタイプだ。

意見が合わない子とは口げんかもしてくるから、人気者でもなければ、友だちも多くない。兄のコミュニケーションに課題を感じるとき、常にチームワークに欠けるところがあると思ってきた。

思慮深いが、慮るポイントがちょっとズレるというか、相手の気持ちを想像するのが苦手なのだろうな、という印象を持っていた。人と対話しているときより、機械仕掛けのものと向き合い、没頭しているときの方が、私の目にはいきいきとしているように映った。

だから、兄の口から「みんなと一緒に」という言葉が飛び出したのには驚いた。

自分と異なる意見に耳を傾け、時には反論、時には妥協しながら、チームの意見を作るのが楽しいと言う。兄の意見が賞賛され、そのまま採用されることもあるそうだ。

しかも、兄は自分の意見を押し通したり、先生の鶴の一声で物事が決まったりする場面を嫌がっているようだった。テーマはひとつでも、多彩な答えがあるのを知っているし、その中で多数になった意見を最適解とすることも理解しているのだ。

おいおいおい、なんたる成長なんだ!母さん感動だよ!

これは、絶対に質問させてあげたい。

会場入りすると、有名校のブースは既に混雑していた。ゆっくり話をするのは難しそう。目星をつけていた中で、まだブースに人がたどり着いていない、正直、人気度は最上位とは言えない学校で、兄に質問をさせた。

「ひとりでずっと黙って勉強してるのも嫌だよなぁ」と言って、男性の先生は、兄の質問に懇切丁寧に答えてくれた。

共感してもらえたのが嬉しかったようだ。兄はその学校を気に入った。私も真摯に答えてくれた姿勢に好感を持った。学校選びは、こうしたさりげない交流がきっかけになるのかもしれない。人気ランキングやパンフレットからでは気づけない魅力に触れた気がした。

その後もいくつかブースを巡り、足が棒になるまで歩き回った。兄は積極的に話を聞いて回り、いくつか気になる学校も見つけてきて、私立中学に進学したい気持ちがグッと強くなったようだ。

一方、母は兄への感動に気を取られ、ちょっと上の空になっていたような気もする。でも、終始浮ついてしまうくらい、彼の進化がうれしかったのだ。イベントに参加できて、心からよかったと思った。

兄が気に入った学校に訪問したいので、ミライコンパスとの格闘を続けようと固く心に誓った母。たかが予約、されど予約。よっしゃ、がんばるぞ。

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