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《フランス「ワ旅」最終回》帰国、そしてフランス「ワ旅」とはなんだったのか

さて、ついにフランスを旅立つ日がやってまいりました。
帰りたい、でも帰りたくない。ちょっと切ない朝です。

静かなボーヌの朝

▶いそがしい人は、こちらをどうぞ。フランス「ワ旅」ダイジェスト版。

フランス「ワ旅」いちにちめ
フランス「ワ旅」ふつかめ
フランス「ワ旅」みっかめ
フランス「ワ旅」よっかめ
フランス「ワ旅」いつかめ

朝の風景とPCRの結末

まずはTGVに乗って、パリへと戻ります。

ディジョンで乗り換えます
朝ごはん

これが、フランスワ旅最後の移動です。

さあ、車窓に流れる景色でも優雅に眺めながら行きますか………
などと思いながら席に向かったら、そこには先客のにぎやかなフランス6人ファミリーがいらっしゃいました。思ってたんと違う。

しかもなんていうの、あっちは家族だからこう、席を向かい合わせにしてるわけです。日本の新幹線を思い浮かべてください。あの状態です。その窓側の席に、わたしたちが座ります。つまりこれ、わたしたちも、強制的に向かい合うことになるわけですね。

ということで、この移動が、この旅いちばんの賑やかな移動となりました。こどもたちがまじで賑やか。めちゃくちゃ楽しそう。あー、そのカードゲームわかる、盛り上がるよね〜…!

箸が転がってもおかしい年ごろの娘さんの笑い声とともに、TGVはパリに向かってどんどん進んでいきます。

なんていうかほんと…期待の斜め上を行き続ける旅だなおい?!


あ、そうそう。気になるPCRの結果がどうなったかといいますと。

Negative(陰性)!

無事に、陰性のお知らせを受け取ることができました。よ、よかった~~~~!!

ちなみに、やっぱり最後まで連絡は来ませんでした。
で、我々がどうしたかといいますと。

「たぶん……サイトにアクセスできるようになってる気がする

と、昨日まで入れなかったサイトに、試しにアクセスしてみました。行けた

はいはいはい…なるほどわかってきた…わかって来たぞフランス…
これ、「はーい、正しいアドレスに直したから、OK~☆」って思っておしまいにしたでしょうあなたたち…!

日本だったら「アドレス入れ直しましたよ」って、メールの1本でも送ってくると思うんですよね。なんだったらそちら側のミスですからね。いつ直ってるかもこっちはわからないし、そもそも本当に入れるかどうかもわからないわけじゃないですか。こっちは。

でも、やらない。だってちゃんと仕事はしたから。
やるべき仕事はする、でも、余計なことはしない。

なるほど。この国、こうやってまわってるのか…!と、だんだん身を持って理解してきました。
は〜、なるほどなー!フランス、いいよいいよ。いいと思うよ、わたしは。うん、文化、感じてる~!!

無事に空港検疫のための証明書も発行できましたし、全然もう、いいんですよ。許すですよ。
完全に解決したんだから、問題なんて1個もなかったのと同じなんですよ!(あった)

これで日本に入国できる!

あとはこのまま無事に、そして、元気に空港に向かうだけです。


パリで3時間ほど時間があったので、最後にさくっと美術館に立ち寄ることに。

美術館は大きな荷物を預かってくれないとの事前情報を得たので、こちらを利用しました。その名も、CITY-LOCKER(シティロッカー)。

写真は公式ホームページからお借りしました

ふつうにコインロッカーなんですが、事前に予約ができること、クレジットカード払いができること、行きたい美術館の近くにあってピックアップしやすいこと、あたりでこちらを選びました。

いわゆる「拠点型」の旅じゃないときって、この荷物の管理がけっこう引っ掛かりになるんですよね。
今回まじでずっとスーツケース引っ張りまわして歩いていたので、正直、体力勝負でした。(走ったりとか)
ちょっと荷物が置ける場所があることを知ってると、心に平和が訪れます。特にワ旅は、どんどんスーツケースが重くなりますので。

ワインのお守り、よろしくお願いします

ちなみにこのコインロッカー、玄関にも暗証番号がついてて安心だったのですが、まさにその暗証番号をプッシュするボタンの、当たり判定がめちゃくちゃ繊細で思わぬトラップでした。

玄関がなかなか開かなかったんですよ。何回押しても、開かない。入れない。
番号は合ってるはずなのにおかしいな~?と思ってたんですが、ふと『待てよ……?』と直感が働きます。ここまで来ると、だいぶフランスの考えてることがわかってきてます。

耳を近づけ、よーーーーく音を聞いてみると、ボタンの反応が良すぎて「ピピッ」って2回鳴ってることが判明しました。そりゃ開かないわ。

いやもうこの、ほんとこの…フランスのリアル脱出ゲーム感、一体なんなんだ。日本の生活で絶対に使わないちからが鍛えられるぜフランス…!


というわけで駆け足ですが、オルセー美術館に出向き、印象派の描く18世紀の後半のフランスを堪能してきました。

推し絵

モンマルトルで見たあの風景!っていう。これを描いたひとがまさにあの場所にいたんだ!っていう。すんごい贅沢な体験でした。

10年前に東京に引っ越して来たとき、『踊る大捜査線』を映画館で見たんですよ。
で、外に出たらさっき見た映像とおなじ世界がそこに広がっていて、一瞬「え?!もしや、青島刑事、来る?!」って思った、あのリアリティをここでも感じました。(違う)

というわけで、ワ旅の最後はアートで締める。うむ、よき旅じゃった!

ついにCDG空港へ

そして、帰国へ

ところで、シャルルドゴール空港にて、最後のダメ押しとばかりまたワインを探していたんですが、

ロマネ・コンティ。

以外もすごい。

いや確かにアタシ、「I want to drink this wine!」ゆうたけども…

バッカス 「用意しといたよ☆」

買えるかーーーい!

ということで、今ならシャルルドゴール空港で、ロマネ・コンティ(1991)が、34519ユーロで買えます。(日本円にして約480万円)

適正価格…………なのか???(もうなにもわからない)


帰り道は、大陸のうえをひたすら飛んでいきます。
政治的な理由で飛ぶことができない国のうえは、「ちょっと」避けていきます。なるほど、空にも秩序があるんですねぇ。

夜が訪れる直前のドイツ。右手に蛇行しているのがライン川。

空の上ではうとうとしながら、ポッドキャストを聞いたり、機内ワインを楽しんだりなどしつつ、無事に日本上空へとたどり着きました。

は〜〜〜ついに帰ってきた、懐かしのわが祖国、ジャパーン!

日本上空に到達!湿度たかそ~~~!!

ワ旅最後のクエストは、空港の関税です。
課税対象のワインを計上して、お国に税をおさめます。

ワインはひとり3本(750ml/本)まではノータックス、それを超えると税金が課されます。我々は今回8本お持ち帰りしているので、2本分が課税対象となりました。
その額、1本あたり、200円。え、安…思ったより安くて拍子抜け。
なんだそうか、もっと買うべきだったかあ…!(頭のなかにロマネ・コンティを思い浮かべながら)

全身の疲れは、旅が終わりゆくきざし。
重いスーツケースは、楽しかった旅の証明。

最後のちからを振り絞り、見慣れた我が家へと向かいます。

あー、楽しかった!

フランス「ワ旅」とはなんだったのか

初めて足を踏み入れたパリの街は、思っていた以上に古くて、汚れていて、猥雑で、混沌としていました。

治安の悪さは格差社会の現れですし、人種の混ざり合いはかつての植民地支配の記憶を呼び起こします。

壊れたものは、壊れっぱなし。古いものは、古いまま。
車のサイドミラーが壊れたら、ガムテープで張り直して使い続ける国、フランス。

古いものを大事にする姿勢は、もちろん素晴らしいものです。
一方で、それはただ「とりあえず」を積み重ねただけなのではないかと、まったく来ないバスを待ちながら、思ったことを思い出します。

憧れの街、花の都パリ。

しかし実際そこにあったのは、ただ積み重ねられてきた「日常」でした。

フランスから帰って来たあとで、毎年パリを旅する友達と話しました。
「パリって、思ったほどお洒落じゃなかったです」そうわたしが言ったら、友達は不思議そうな顔をして言いました。「あたりまえだよ」。

「でも、それがいいんじゃん」

もしかするとパリの、そしてフランスの魅力のひとつは、この「日常性」にあるのかもしれません。

気取らず、気負わず、無理をしない。できる範囲で、できることをする。
なるべく環境に優しくして、おなじくらい自分にも優しく生きる。
ひとに対する親切は惜しまず、自分も助けて欲しくなったら、遠慮なくひとを頼る――


わたしたちはフランスの中にいると、名も知らぬ「アジア人」でした。
違う言語でしゃべり、違うアイコンタクトを取り、違う見た目で、違う世界を生きているように見えていたはずです。

でも、話しかけてくるんですよね、普通に。あのひとたち。
「ねぇ、写真撮ってくれる?!」とか。
「ちょっとこのベビーカー、階段の上まで一緒に持って!」とか。
そして、爽やかに「Merci!!」って去っていく。なんの驚きも、忌避も、てらいもなく。

自由。

わたしがフランスで感じたのは、これでした。自由。
わたしが、わたしでいることを、ただ普通に許されている。

「フランスのワイン」という響きは、わたしにとっては「シャネルのバッグ」と同じでした。
ブランド化されていて、そのブランド価値にこそお金が必要で、そして現に値段も高騰する一方で……

でも、こうして現地に行ってみると、そこでは普通の日常が営まれていることに気づきます。
うちの隣の家のおじさんが、秋になったら庭先にさつまいもを届けてくれる。それと同じくらいの日常感で、ただワインが造られている。

そうかワインって、「こんなもの」だったのか。
そして、それをずっと、ずっとずっと何百年も、ひたすらに繰り返してきたのか、この国は。
そう思うとちょっとだけ、フランスワインが身近に感じられる気がします。

次にワインを飲むとき、きっとわたしは思い出す。
ガイドのおじさんのゆるさを、ボルドーの美女の優しさを、パリのソムリエのはにかんだ後ろ姿を、そして、ニュイサンジョルジュのマダムの笑顔を………

そこにあるのがわたしの「日常」で、そして、そんな日々を送れることが、「幸福」、なのかもしれません。


さあてお次は、どこに旅立ちましょうかねぇ!😋

それでは、ここまで長らく旅をともに見守っていただいて、ありがとうございました!

これからも地道な3000円ワイン活動を続けつつ(おもに飲む)、ときどきふらっとワインのある街に、出かけに行きたいと思います^^

みなさんも、人生という名のよき旅を!
ボン・ボヤージュ!

(うまいこと言った…!)

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■ ますたやとは:

関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得、現在はWSETLevel2を英語で挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!

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