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《フランス「ワ旅」みっかめ》ボルドーワイナリーツアー ~城と、畑と、それから爆走~

▶いそがしい人は、こちらをどうぞ。フランス「ワ旅」ダイジェスト版。

フランス「ワ旅」いちにちめ
フランス「ワ旅」ふつかめ

ボルドーの朝は、カヌレからはじまります。

ブーランジェリーは、7時オープン
おはようございます

今日はこの旅のひとつめのハイライト、ボルドーワイナリーツアーにお出かけです。今回は、日本人ガイドさんによる日本語ツアーに参加します。

ホテルにバンが止まると、中から優しそうな女性ガイドさんが降りていらっしゃいました。

「おはようございます!」

は~、ひさしぶりの日本語…!(ほっ)お名前を、みちよさんというそうです。1日、どうぞよろしくお願いします。

途中、イギリスからやってきた女の子ふたり組と合流して、5人での小さなバンの旅がはじまりました。…やだこれ、「あいのり」みある。(世代)

修道士の住んだ洞窟の町、サンテミリオンへ

さてわたしたち5人はまず、「右岸」であるサンテミリオンの町に向かいます。その後、サンテミリオンでランチを挟んで、午後は「左岸」のメドック地区へと足を伸ばします。

ボルドー市街地からサンテミリオンまでは、車で40分ほど。
このあいだ、みちよさんがこれから向かうサンテミリオンの町について、お話を聞かせてくださいました。

これ、とっても興味深かったんですよ。初めて知る話題も多くて。
ということで、よかったら窓の外を流れる景色でも見ながら、ドライブ気分でお付き合いください🚙

この跳ね橋を渡って「右岸」へ

サンテミリオンの町は、7世紀から8世紀頃にはすでに、赤ワインが作られていたと言い伝えられています。

「サンテミリオン」の語源となったのは、当時この地にいたという、「エミリオン」という修道士の名前から。

エミリオンは洞窟に住んでおり、さまざまな奇跡を起こしたと言われています。
それはたとえば、目の見えないひとを見えるようにしたりとか、石を窯で焼いてパンにしたりとか。それで町の人々を救っていたのです。

「エミリオン」は聖人ですから、「セイント」つまり、「セイント・エミリオン」。
これが「サンテミリオン」という、土地の名前の語源となったそうです。

ワインのボトルを製造する会社。ワインにまつわる企業が軒を連ねています。

さて、現在もサンテミリオンの町に残る「モノリス教会」ですが、これはエミリオンが亡くなった際に、弟子たちが地下の一枚岩をくりぬいて作った、珍しい「一枚岩(=モノリス)」の教会です。

実はサンテミリオンでは、採石がおもな産業となっていました。地下にある岩を採石して、家を建てたり、フランス国内に輸出していたりしたのです。
そうそう。オペラ座の片側の壁は、ここサンテミリオンから採掘された石を使って、造られてるんですよ。

ドルドーニュ川を渡ります。水が茶色いのは、底の粘土質土壌が削れているためだそう。

現在もサンテミリオンの町の下は、空洞になっています。張り巡らされていた地下道が、そのまま残っているんですね。
実はこれは結構問題になっていて、地盤沈下が起きてしまうところもあるんです。

ところがこれに目を付けたのが、ワイナリーでした。地下は温度や湿度がたもたれていて、ワインの保存にはぴったりなんです。だから、地下に熟成庫を持つワイナリーが出て来ました。
これ、訪問するとおもしろいですよ。熟成庫の天井から、ブドウの根っこが見えていたりするんです。

いよいよブドウ畑が見えてきました

サンテミリオンで栽培されているブドウ品種は、メルローが7~8割と多く、次がカベルネ・フランです。石灰質と粘土質が混ざった土壌になっていて、丘の上にのぼるほど石灰質の層が厚くなります。

そして、この丘の上に張り付くように、グランクリュが並んでいるのです。

これから、その丘に向かいます。

丘のうえに見える三角屋根が、プリミエ・グランクリュクラッセA、シャトー・オーゾンヌです。

みちよさんからの「へ~~~~ッ!」なお話の連続に、時差ぼけのねむみが吹っ飛びます。
だって、サンテミリオンの町が地下の空洞のうえに建ってるって、みなさん知ってました?わたしは知らなかった…!

「知ってる?サンテミリオンといえば、町の地下にワインセラーがあって…」

なんて言えたら、そんなもん、ワイン通ぶれること請け合いじゃないですか!(※女子ウケの責任は持てません)

そんなわけで、興味津々でお話を聞いているうちに、いつのまにかサンテミリオン村に到着しました。いやあ、濃い時間。


サンテミリオン村は、ボルドーに流れるジロンド川の「右岸」に位置する村です。
グランクリュの並ぶ丘をてっぺんまでのぼったところにある、小さな集落。

村のシンボル、モノリス教会
眼下にサンテミリオンの村を一望。遠くにブドウ畑がのぞめます。
坂の町、サンテミリオン

そこにあったのは、まるでおとぎ話のような、メルヘンな町でした。

いや~~…キュート。なにこれめっちゃカワイイ。右見てもカワイイ。左見てもカワイイ。サンテミリオンがこんなカワイイ村だって、あたし、全然知りませんでした。

世界には知らないことが、まだまだたくさんあるんだなぁ…!

▶サンテミリオンの町をただ歩くだけの動画(ますたや撮影)

そんなカワイイ村で、ランチタイムです。
今回のランチはモノリス教会からもほど近い、『L'Envers du Decor』さんにうかがいます。

サンテミリオン、というか、フランスは全般的に、ランチは12時からしか開いていません。
次の集合時間が13時ということで、手近なところで見つけたレストランにさくっと立ち寄った形です。が………

美ン味(うンま)…………

「ビーフ」という情報だけで選んだ料理。これが衝撃的にサンテミリオンの赤に合う。おったまげブラボー。
「シャトー・オーセゴット」のサンテミリオン赤。今回のフランス旅でいただいたワインで、3本の指に入る美味しさ。

この、適当に入ったレストランの美味しさよ、フランス……なんなのほんと……もう、好きになっちゃうじゃん、馬鹿……っ

実は「マカロン」発祥の地、サンテミリオン。レストランのシェフが自家製で焼いたマカロンを、帰りにいただく。「ドモ・アリガト」だって!こちらこそ、ドモ・アリガトでした!

さ、お腹も心も満腹になったところで、ようやくひとつめのワイナリー、行ってみましょう!

なだらかな丘をくだっていきます

【たぶん】グランクリュクラッセ【祝内定】、シャトー・ヨン・フィジャック

さて、サンテミリオンで訪れたのは、サンテミリオン・グランクリュクラッセBである「シャトー・フィジャック」のお隣の畑、『シャトー・ヨン・フィジャック』です。

お邪魔しまーす!
駐車場の現代アートもカワイイ

シャトー・ヨン・フィジャックは現在、四代目の当主が経営をおこなっているそうです。現当主はもともと、製紙工だったんですって。

サンテミリオン地区のブドウ畑は、平均が7~8ヘクタール。フランスの中では比較的小規模なワイナリーが多いこの地区にあって、ヨン・フィジャックは24ヘクタールもの畑を所有しています。


さて、10年に1度見直されるサンテミリオンの格付けですが、今年はちょうど、その10年目にあたります。

先般、「プルミエ・グランクリュクラッセA」のワイナリーがこぞってグランクリュから降りた(申請を出さなかった)ことで、波乱を巻き起こしているサンテミリオンですが、ヨン・フィジャックは今年、グランクリュへの申請をおこなったそうです。

※ シャトー・ヨン・フィジャックはすでにグランクリュクラッセなので、「再度申請した」形ではないかと思います。が、万が一もしクラッセBに上がるなんてことがあれば、あらためて拍手喝采を送りましょう。

必ずドアを開けて待っていてくださいます。紳士。

ところで、サンテミリオンの格付けって、どのような審査項目があるか、ご存知ですか。

実はサンテミリオンの格付けは、純粋な「味」だけによらず、多角的な評価によってなされているんそうなんです。

それはたとえば、「自然な造りをしているか」ということであったり、「社会的な評価はどうか」だったり、「値付けが適正か」「安すぎたり、高すぎたりしないか」「ワイナリーの質がどうか」といった、ワイン「以外」の部分の評価が、約半分を占めているんだそう。

ブドウ栽培からワイン醸造まで、ひとつひとつ丁寧に教えてくださいます。

ここでワイナリーの方がおっしゃっていたひとことが、とても心に残っています。
それは、「サンテミリオンでは、過去の10年が、未来の10年を決める」という言葉。

「今、ここにあるワイン」の評価だけではないところは、ワイナリーとしては当然納得がいかないところもあるのだろうと想像します。
純粋なワインだけの評価とはいえない審査項目に、疑問を抱く生産者がいても不思議ではありません。

グランクリュクラッセAのワイナリーが次々と降りたことは、そういった葛藤を物語っているのではないでしょか。

スチームパンク感のあるステンレスタンクの森

それでも、自信を持ってグランクリュへの申請をおこなったという、ヨン・フィジャックの姿勢には、わたしは心からの拍手を送りたいです。
それでも表舞台に立つ、という、覚悟と矜持を感じる気がするからです。

「ところで、うちはほぼグランクリュクラッセへの格上げは、決まっているようなものなんだ」と話すワイナリースタッフ。

どうしてだと思う?と目配せした彼は、いたずらっこのように笑いました。
「申請が却下されるときは、追試があるんだよ。うちにはそれが来てない、っていうことは……ね?」

東側だけ剪定された畑。ヨーロッパ全土を襲う熱波からブドウを守るため、そしてますますのワインの質の向上のため、日々さまざまな工夫を凝らしているそうです。グランクリュクラッセ内定(たぶん)、おめでとうございます!

樽の使い方にも、ワイナリーの個性が現れます。

ヨン・フィジャックでは、さまざまなメーカーや内部の焼き具合の違った樽が使用されているそうです。その数、実に16種類。

『・・・さすがに多いな?』と思っていたら、どうやら現在は、使用する樽を限定するための実験中とのこと。
ワイナリーも「・・・さすがに多いな?」と思ったに違いない。ヨン・フィジャック、気が合うじゃん。

16種類の異なる樽。これらを飲んで、最終的に残す樽を決めるそうです。樽ひとつ決めるのにも、いちいち時間がかかるワイン造り!

なお、ヨン・フィジャックでは、「樽熟の前に」アッサンブラージュをしているんですって。つまり、違う品種のワインを先に混ぜたうえで、樽熟によって全体の味を調えているということ。

樽熟のあとにアッサンブラージュをおこなうワイナリーもあり、ワイナリーとしての考えや信念の違いが、こうして少しずつワイン造りの違いとなって現れていきます。

「ブドウをつぶして放って置いたら酒になる」はずのワイン造りの、果てしない「変数」の組み合わせ。

ワインを飲んで、ワイナリーの想いを読み解いていくのは、われわれ飲み手が背負った使命なんじゃないだろうか…(急に使命感)

もちろん最後は試飲で乾杯!美味しいワイン、ありがとうございました(買った)

さ、美味しいワインも飲みましたし、サンテミリオン、堪能しました。
ここからさらにわれわれは、メドック地区へと運ばれていきます🐄

メドック、ワイン街道をゆく

サンテミリオン地区からメドックまでは、ふたたび車で40分ほど。
なだらかな丘を下り、いくつかの小さな村を抜けると、いきなり目の前に広大なぶどう畑が広がります。

まるでブドウの海

ジロンド川、左岸。

偉大なるボルドー格付けワインをいくつも生み出すメドック地区には、「D2通り」、通称「メドックワイン街道」が走っています。

この道の両脇にはブドウ畑が広がっており、その中にまるで中世のお城のような「シャトー」が、堂々と点在しているのです。

格付け3級、シャトー・デスミライユ
格付け2級、シャトー・ラスコンブ

メドックは海抜が低く、もともとブドウが育ちにくい土地でした。

サンテミリオン地区が8世紀頃にはワインを造っていたのに対して、ボルドーのワインづくりのはじまりは、なんと16世紀。オランダ人が干拓の技術を持ち込むまで、ブドウの栽培はおこなうことができませんでした。

メドック地区のワイナリーは売買が激しく、その競争には大手企業も参入しています。
たとえば、保険会社であるアクサダイレクトや、日本企業であるサントリー、金融系企業も多く進出しており、「お金持ち」のシャトーが多いのも特徴です。

だからこそ、メドックの小さな生産者たちは、こんな風に言うのだそうです。

「われわれは常に、銀行や保険会社と、戦わなければならない」――


それにしても、右を見ても有名シャトー、左を見ても有名シャトー。
出てくる看板出てくる看板、どれもこれも「聞いたことがある」「けど、飲んだことはない」シャトーばかり。

こうも有名シャトーばかりが続くと、だんだん脳がバグってきます。

わ〜!レオヴィル・バルトン!聞いたことある〜!2級だってー!
こっちはレオヴィル・ポワフェレ、こっちも2級か〜!
ふーんこっちは、シャトー・パルメ!3級?へ〜…
あ〜、はいはい、シャトー・マルゴーか〜、ふーん……

・・・いやいや、シャトー・マルゴーは驚こう、わたしの脳!(1級)

というわけで、さすがにシャトー・マルゴーは別格ですので、みんなで現地に降りたちます。ここが…マルゴー…!

シャトー・マルゴーの畑!
シャトー・マルゴーのブドウ!!
シャトー・マルゴーの、土!!!

は~、でもこうして見ると、すごいなぁ。
あのパルメだって、あのシャトー・マルゴーだって、みんなこんな「普通の」ブドウから、作られてるんだなぁ…!

目の前にある見慣れたブドウたちから、あの偉大なワインができあがるのかと思うと、広大な畑を吹き抜ける風に、心なしかセレブリティを感じた気がします。(気のせい)


まだまだ続く、メドックワイン街道。

シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン(2級)
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド(2級)
シャトー・ラトゥール!(1級)
テンションがあがって中に入りすぎ、管理人さんにちょっと怒られる。ごめんなさい。
せめてブドウだけでも食べてみたい(無理)

畑は続くよ、どこまでも。

ボルドー格付け級なのにビオディナミ、シャトー・オーバージュ・リベラル

さてそんなメドック街道をひた走り、わたしたちが見学に向かったのは、格付け5級の『シャトー・オーバージュ・リベラル』です。
畑は、シャトー・ラトゥールのすぐお隣。向こうにコンテス・ド・ラランドも見えています。

晴天が続く旅

シャトー・オーバージュ・リベラルは、メドック地区の中では小さい30ヘクタールの畑を持つワイナリー。
2011年から本格的に「ビオディナミ」農法によるブドウ栽培をおこなっている、ちょっと珍しいワイナリーです。

「水牛のツノにいろいろつめて土に埋めるヤツ」を、初めて生で見ました

なぜ珍しいかというと、ビオディナミ農法には手間がかかるから。

機械化されていない、あるいはしてはいけない厳密な決まりがあること、月の暦によって畑作業が左右されること、などの理由から、特にボルドーのような大規模生産者の多い地域では導入が難しいのです。

それだけでなく、一見すると呪術的、おまじない的にも見えるビオディナミ農法における決まりごとの数々は、導入当時周囲のワイナリーからは笑われていた、といいます。

オーバージュ・リベラルでは、コンクリートタンクによる熟成がおこなわれています。

しかしオーバージュ・リベラルは、美味しいワインは環境から、という信念を決して曲げませんでした。

「今となっては周りにも、ビオディナミ農法を取り入れたワイン造りが広がっています。それは我々のやり方が、正しかったという証明です」と語るワイナリーの方のお話からは、まっすぐな誇りと自信が感じられます。

オーバージュ・リベラルが開発した「たまごがた」の熟成庫。ワインが中で流動するので、熟成がはやくなるのだそう。

なお、2014年からは、アンフォラによる熟成もおこなっているそう。
ファーストラベルのワインにアッサンブラージュされているんだそうですよ。

「いつからアンフォラ使ってるんですか?」って質問したら、「とてもいい質問ですね」って言われて鼻高々のますたや。(定型文)

さらには、「でも…アンフォラってさぁ、イタリアから運んでくるときに、CO2排出するんじゃね?」っていう発言があったかどうかはわかりませんが、輸送時にかかる環境コストのことを考えて、だんだんと地元産の土を使ったアンフォラに切り替えているんだそうです。徹底しとるな、オーバージュ・リベラル…!

色白なアンフォラちゃん

たとえ大手メゾンといえど、常に研究を怠らない真剣な姿。
これはボルドーのワイナリーに通底する、一種の共通理念であるように感じました。

同じ気候、同じブドウ、同じ作り方など、二度とない。常に進化し続ける、王者・ボルドー。
その王者からは、ワインに対する真摯な姿勢と、泥臭い日々の努力を感じます。

一流と呼ばれるワイナリーでも、いや、一流と呼ばれるワイナリーだからこそ、こんな風に小さな研究と変化を日々重ねているのかと思うと、ボルドーワインに対してあらためて尊敬の念を抱きました。かっこいいなぁボルドー…!


さて、というわけで、そんなこだわりの詰まりまくったワインが、美味しくないはずがなかろうて!

いえーい!5級だ5級だー!(尊敬どこいった)
ワインができた畑を見ながらワインを飲む。最高の贅沢!

試飲では、ファーストラベルとセカンドラベルを飲ませていただきました。同じヴィンテージで比べてみてください、とのこと。お、おぉ…これはグレートヴィンテージの2015年じゃないですか…!

いただいたワインはいずれも、メドックの鮮やかな酸と複雑さを感じる、質の高い味わい。ふーむこれが、格付けワインかぁ…!

美味しくいただいていた我々に、ワイナリーの方から「どちらがお好きでしたか?」と質問が投げかけられます。

一番に、迷いなく、指をさすわたし。

もちろんこっちの、ファーストラベルです!(えっへん!)

帰りの車内では、長旅とワインの疲れでみんなスヤスヤ……なんだけど、なぜかひとり元気なますたや。
ワインのこともフランスのことにもお詳しいみちよさんから、帰る道すがらにもたくさんのお話を聞かせていただきました。すごい情報量だ…!

果ては、「ボルドーのワイナリーって、どういう経路を通って就職したらいいんですか?!」などと、まさかの就職相談に発展。もちろんみなさん、ちゃんと醸造学を学んで来られたプロばかりなので、残念ながらますたやが明日から働くわけには行かなそう………

ただし。
収穫の時期になるとこのあたり一面は、お手伝いの人たちでお祭りのようになるんですって!大学生や季節労働者たちがアルバイトのためにやってきて、とっても賑わうとのこと。学生たちは、夏休みを利用していくつものワイナリーをめぐり、収穫をするそうですよ。
「その時期は、駐車場に入るだけでワインの香りが漂ってくるんです」とみちよさん。
ぜひ今度は収獲の季節にボルドーを訪れたいと、俄然再訪を誓いました🍇

ボルドーの大地、ありがとう。ボルドーのワイン、ありがとう
そしてガイドのみちよさん、楽しい旅をありがとうございました!

ワインと、牡蠣と、セルフ・メドック・マラソン

それでは、ボルドーを立つ前に、ガイドのみちよさんからうかがったオススメ、「アントル・ドゥー・メールの白ワインと牡蠣」、という最高マリアージュを完成させに行きましょう!

うかがったのはこちら。ボルドー旧市街地のシーフード料理『L'Embarcadère』。

いっただっきまーす!

ボルドーから1時間ほど車を走らせたところに、アルカションという海沿いの町があります。この町は牡蠣が特産で、ボルドー産の白ワインが抜群にあうそうなんです。

フランスの魚介類は日本のそれと比べて小ぶりで、日本のイメージよりもシンプルな味わいでした。だからこそむしろ、シンプルでカジュアルなワインがとってもよく合いました。

うん、美味しい!バターの風味ともよくマッチしています。

そうか~これがボルドーの味か~!などと舌つづみを打っていると、夫がなにやらぼそぼそ言っているのが聞こえました。
「トラム動いてるっぽいよ。さっき、なんかで見た。トラムで駅まで戻ろうか」
はいはーい。じゃ、このワインもうひとくち、いっただっきまーす…………


「ねえあなたたち、このトラム、今日は動いてないのよ!」

静まり返ったトラムの駅にたたずむわたしたちに、親切な美女が走り寄って声をかけてくれます。
うっとりとボルドーの余韻に浸っていた我々は、ここではっと我に返ります。

「今日はバスしか動いてないの、駅に行きたいなら向こうの道路を渡って!」

トラムが… 動いて… ない… だと………?

一体いつから―――この工事が終わると錯覚していた?(フラグ回収)

ここから駅までのバスの直通便はなく、乗り継いでいると帰りのTGVに間に合いません。
見たところ、タクシーも走っていない。どうする。どうしようもない。

おい、なんかで見たって、なにで見たんだ夫氏…!などと今さら言っても、仕方ありません。時間が巻き戻るわけでもない。えーん、どらえもーん!

予約していたTGVは、本日の最終便でした。これに間に合わなければ、今日中にパリに戻ることができません。
しかもなんと悪いことに、明日は朝からPCR検査の予約を入れています。このPCRを受けなければ、日本に帰国することができません。

詰んだ…………

絶望に打ちひしがれるわたしの横で、夫が決意を込めてつぶやきます。

「――走ろう

そうしてここから、約45分間のメドックマラソン(セルフ)がはじまったのです。

石畳の続くボルドー旧市街を、でかいスーツケースとワインを抱えて、全力で爆走するアジア人のふたり組。ますますにぎわう街のなか、ひたすらガラガラと音を立てて走り続けます。

駅に向かう道は狭く、硬く、荒れていて、もはや途中から言葉がありません。

したたる汗、痛む足。

なんか途中でちょっと治安が悪そうなエリアがあった気がしますが、そんなものを気にしてる余裕もない。
だって、今そこに時計があったけど、長針がTGVの出発時間をさしてるんですけど……!!

ああ、わたし、パリのセーヌ川沿いを優雅にランニングするのに憧れてたはずなのに…どうして今、ボルドーの町中を、スーツケースとワインを抱えて、必死に爆走しているのか……!

人生って、生きるって、まじ超難易度高ぇ……!!!!

「え、駅だ……!!」

猛ダッシュで駅に滑り込むと、駅員がスタッフ用の通用口を開けてくれました。な、なんと、まだ、電車がある……!!?

ホームを駆け抜ける間、駅員たちから「おいおまえら、何号車だ!」「それはあっちだ!」などと口々にサポートが入ります。

途中、のんきに腕をぐるぐるまわしながら「いそげ~」ってやってる駅員も見かけました。
な、なんだよその、洋画のはしっこに映ってるモブみたいな大事な役割はよ…!!!

ということで、TGVの遅延により、無事に乗れました

ひたいの汗、どころか全身汗だくのわたしを乗せて、TGVはパリへとひた走ります。

ほっとしながら眺める車窓の景色が、だんだん宵闇に落ちていきます――


よっかめは、ちょっぴり閑話休題。
パリの街と、パリでの「ワ活」についてです🍷

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■ ますたやとは:

関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得、現在はWSETLevel2を英語で挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!

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