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ものを捨てる時は。

昨日、長い間お世話になった「もの」たちとお別れをした。

感謝の気持ちを込めて
思い出を振り返りながら、思いを綴ろう。


ふわふわのカーディガン

出会いは、春。

お気に入りすぎて春はなかなか着られず、頻繁に着るようになったのはその年の秋からだ。
最初は、秋や冬に、おしゃれ着で。
毛玉が目立ってくると、部屋着として家の中で。
それでもだいぶヨレてきて、最近はパジャマの上に、寒い時だけ着ていた。

この蒸し蒸しと暑い日々に、なかなか着る機会が減り
来年も着れるような雰囲気ではなかったため、この度、お別れを決意。

お気に入りだったな。
ふわふわの毛布に包まれているような触り心地で
大きめなボタンを留めるのが好きで
丈が短くて、おしゃれ着時代は大活躍だった。
…でも、部屋着に合わせるにはちょっと変なバランスだったな。ただ、着心地と触り心地は抜群だった。

…ありがとう、ふわふわのカーディガン。


黒のトートバッグ

思い出が多い、夏。

黒いスーツを見に纏った、就活の時期の相棒だ。

大きくて、シンプルな、無地で合皮の黒いトートバッグ。

就活以外の時も、面接時などの場面に使うバッグとして、10年以上使ったかもしれない。
あのバッグとは、色々な修羅場を乗り越えてきたような気がする。
汗と涙が染み込んでいるはずだ。

マチが広くて何でも入るから、つい余分なものまで多く入れて、重くなっていたっけ。
ポケットがなくて、鍵は必ず見失うし
ペットボトルはすぐに倒れてしまう。一歩歩くごとに水が「ポチャッポチャッ」と音がして、面接の時は少しだけ恥ずかしかった。

今回久しぶりにパキッとしたい場面でそのバッグを使った時、縁が大きく剥がれていて、日焼けした黒い皮膚が剥けるのようにボロボロと落ちてきた。

…ありがとう、黒のトートバッグ。


伸びた髪

私は、できるだけ髪を伸ばし、気分転換に思いきり切ることが多い。

今回も、15センチほどバッサリ。

…まるで別人に生まれ変わったかのような気分だ。

心なしか頭が軽くなり、心も軽やかだ。
髪を洗うのが楽なこと、濡れてもすぐに乾くこと、シャンプーが少なくて済むこと。

いいことがたくさん。

髪の毛は、1ヶ月に約1センチ伸びるようだ。
ということは、今回切った15センチは、“3年”ほど前の髪の毛たちかもしれない。

3年前か。
どんな日々を一緒に過ごしていただろうか。
たくさん汗をかいて申し訳なかった。
お風呂上がりにドライヤーを怠るし、ケアもあまりしていなくて、そのくせ「広がる」だの「癖っ毛」だのと文句ばかり言ってごめんよ。
それでも、一緒に頑張って生きてくれたことに感謝だ。

…ありがとう、髪の毛。


人とのお別れも辛いけれど
思い入れのあるものとのお別れも、時々結構寂しくなる。

古いものを手放して
軽やかになって
新しくなっていく。

思い出の多いものほど、別れは辛い。

私が本や家具、洋服などをなかなか手放せないのは、そのせいだ。
でも手放すと、思いの外スッキリする。

思えば最近は、
「ものを捨てる時」「思い出にする時」になっているかもしれない。

もの本体は無くなってしまっても、思い出は心にしっかりと残る。
思い出して、懐かしんで、胸に刻んで、手放す。
…そうすれば少しは寂しくないかな。


いい思い出はしっかり心に残して
よくない思い出は時間に任せて記憶が薄れていけばいい。


一応、すでに部屋着予備軍のカーディガンは待機している。
しかし、黒のトートバッグはまた何かの機会に必要かもしれない。…探しておかねば。
髪はまた、一日一日、思い出を重ねていこう。



2024.6.17

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