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“おすすめ”されるがままに

冒頭の写真は「レモンと胡麻のたらこパスタ」である。
爽やかなのにコクがあって、夏が始まる少し前のような感じで、とても美味しかった。

少し前まで
外食に出ると、「自分が一番好きなメニュー」を頼むことが多かった。

イタリアンに行ったら、パスタ。中でもペペロンチーノ。

お蕎麦屋さんに行ったら、温かい蕎麦。できれば海老天入り。

しかし最近は
お店の「おすすめ」を選ぶことが多くなったような気がする。


「ぜひ!」という声


「本日の“オススメ”」
「当店の“イチオシ”」
「シェフの“気まぐれ”」

メニュー表から「ぜひ!」という声が聞こえてきて、
「私、勧められている…」と思う。

最近はそこで「じゃあそれを…」となることが多いな、と感じている。


気が弱くなったというよりも
「試してみようかな」という好奇心が勝ってきているのだ。

イタリアンに行ったら、誰がなんと言おうと絶対にペペロンチーノを選んでいた私が、いつの間にか、素直にオススメされるがままにメニューを決めている。
…このことに気づいたのは、本当に最近のことだ。


この間、お蕎麦屋さんに行った時のこと。
そのお店では、蕎麦と「梅しらす丼のセット」がオススメだった。

“6月限定!梅雨シーズンにスッキリと”

というようなサブタイトルがあったような気がする。

確かにジメジメとしていたし
梅もしらすも好きなので、頼んでみた。


細かく刻まれた“梅”に、ふわふわな“しらす”。
周りに“しそ”がたっぷりと乗せられ、醤油ベースの甘辛な胡麻のタレをかける。


冷たいお蕎麦とは別に、お腹も満たされ、色々な風味を味わえた。

…とても美味しかった。


今、お店が売りたいもの


以前、接客販売の仕事をしていた時に
その商品の“賞味期限”や“売れ行き”も考慮してのディスプレイをしたことがあったため、おすすめを見るたびに「ああ、これが今、お店の売りたいものなんだな」と思ったりしていた。

しかし

季節限定でも
新商品でも
賞味期限や売れ行きが気になる商品でも
…結局は、同じなんじゃないかと思うようになった。

その時の出会いが良いか悪いかは、試してから判断すれば良いのだ。

どちらにしても
“お店に置いてあるもの全て”が、“お店が売りたいもの”なのだから
消費者として「欲しいな」、「いいな」、「食べたいな」という気持ちだけを大切にしていれば、お店はそれに合ったものを提供してくれるはずだ。


ゼロから出会いまでの想像


メニューを新しく考案する人
それを作る人
それを売る人

それぞれを想像してみる…。

そうすると…
考えて、悩んで、色々と試行錯誤した上で、最後に「よし、これでいこう!」となった様子が目に浮かぶ。
自分がいいと思ったものを信じ、それを、誰かにも味わってほしい。

そこに、
賞味期限が近いものだからとか
売れ行きが良くないからとか
そんな理由で試さないのはもったいないと思った。

だって、「自分にはぴったりの商品だった」という可能性も秘めているのだから。


レストランだけでなく
雑貨にしても、洋服にしても、本にしても…何にしても。
オススメされたものを、素直に試してみると

そこには
“日頃の自分だったら決して選ばないようなもの”
“新しいもの”との出会いが待っている。


「大将、今日のおすすめはなんですか」

というドラマのワンシーンが頭に浮かぶ。

以前はよくわからなかったその気持ちが少し、わかるようになった。


もちろん、基本的にはその時の気分で選ぶ。
オススメだからといって、自分の気分ではないものを無理に選ぶ必要はない。


しかし最近は
新しいもの、自分の知らないものとの出会いを求めて

「季節限定!〜31日まで」
「残りわずか!数量限定」
「○曜はコレ!日替わりメニュー」

これらの言葉に、私はずいぶんと弱くなった。



こうしている今も「韓国フェア」コーナーの商品を手に取り、立ち尽くす私がいる。




2024.6.12

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