で、人的資本開示は何を基準にすればいいの?
この記事を書いているのが2023年5月ですが、そろそろ3月期決算の会社の有価証券報告書が出てくるタイミングとなり、日本においても各企業の人的資本開示が本格的に動き始めます。
こうした動きの中で、人事担当者や人的資本開示をご担当されている方はよくご存じかと思いますが、一口に「人的資本開示」と言っても、実はスタンダードになりうるようなフレームワークやガイドラインがいくつか乱立(?)していて、素人にはまずもってわかりづらい状況にあります。
詳しく知りたい方は、経産省の「人的資本可視化指針」のオリジナルをご参照頂ければと思いますが、https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf
このあたりを詳しく掘り出すとドツボにはまりそうなので、あえてざっくりと整理すると、
という観点で整理しておくと、少なくとも狭義の意味での人的資本開示の大きな動きは押さえられるかと思います。
とはいえ、「で、要はどのデータを収集/準備すればいいの?」という点ついては、あくまでも推奨だったり、開示例だったりするので、これまた余計にわかりづらかったりします。
もちろん、ド正論を申し上げれば、各社独自の経営戦略や人材戦略に基づいて開示方針を定めて進めていけばよいだけの話なのですが、いざHR担当者が経営層や社内の関係部署にこうした動きを説明し協力を仰ごうとすれば「似たような動きがいくつかあるけど、要はどれをやればいいの?」という最初の自分たちが感じたような反応が返ってくれることは火を見るよりも明らかです。
ということで、人的資本開示の項目がかなりごちゃついている(と感じている)ので私なりに整理してみました。
それぞれ同一、同種の項目を並べてみたのですが、どこに該当するかは微妙に違うものもありそうなので、あくまでも個人的な分類ということで理解ください。
こうして見ると色々と特徴も見えてきますが、私のなりの結論としては、ISO30414に則って進めてればほぼほぼカバーできるのでは、と感じました。(もちろん各社の人的資本開示方針にもよりますが)
なお、いくつか気づいた点としては、
・ISO30414の項目になっている「生産性」や「労働力」という観点が
他の二つには入っていない。
→いずれもより経営的視点での観点かなと思いますが、労働力は単に
頭数というだけではなく、FTE(Full time employee)当量というパート
タイムをフルタイム換算したり、業務委託や派遣労働者等外部リソース
も把握する点は、正社員かつ自前主義に寄りがちな日本の捉え方とは
やや異なり、実質的な労働力を正しく把握し、組織のケイパビリティ
の比較可能性を担保する上ではこうした観点があるのは納得です。
・一方で、人的資本可視化指針には「労働慣行」や育児休暇等、ISO30414
には直接該当しない項目も規定されています。
(有価証券報告書には従業員数の直接雇用のリソースは開示されています)
ちなみに算出式(定義)については、ISO30414はかなり細かく規定されていますが、その他の2つはさほど厳密には定義されていないものがほとんどだと思いますので、その点でも後々、同じようなデータを別の算出式で準備する、といった2度手間は避けられるので、ISO30414を基準に進めていくことが良さそうです。
人的資本開示への対応は、まだまだ試行錯誤が続くと思いますが、引き続き大きな動きは掴みつつ、地道にひとつひとつクリアして事が重要だと感じます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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