ONODERA Masayuki

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最近の記事

新しい日本を生み出すために

矢部宏冶『知ってはいけない2』 日本の主権はこうして失われた 「あとがき―歴史の法則は繰り返す」(要略)  評論家の立花隆さんはその著『文明の逆説』の中で、ローマ帝国はその中で蔓延する「罪と悪徳」によって滅亡すると予言した聖ヒエロニムスの言葉を引用し、さらにこう述べています。 「しかし、考えてみると、ヒエロニムスが「罪と悪徳」ととらえたものこそ、ローマ帝国の成立・成長過程にあっては、その成功を保証した条件だった。ローマ帝国は権力、富、快楽に対するあくなき追及をよしとするこ

    • 「うけたもう」

      「うけたもう」  『中島デコのサステナブルライフ』の最終章(Scene 7 これからの生と死)の末尾を、中島さんは「うけたもう」という言葉で締めくくっている。  「うけたもう」というのは「受け賜る」ということ。山伏が修行中に唯一発することを許された言葉で、どんな無理難題でも、修行者はすべて「うけたもう」と答えなければならない。何が起きても、すべてを受け入れる。  中島さんはこの言葉について、 「 辛いことも大変なことも、できそうにないことも、「うけたもう」してみたら、

      • 紛争の二重構造(山崎雅弘『[新版]中東戦争全史』)

        「一般的に、戦争や紛争は「A国対B国」や「C民族対D民族」「E教徒対F教徒」など、特定の属性を持つ集団と集団の対立図式で理解されることが多い。 本書のテーマである中東戦争も、多くの場合「イスラエル対パレスチナ」や「ユダヤ人対アラブ人」「ユダヤ 教徒対イスラム教徒」といった対立の構図で説明されてきた。 次の図は戦争や紛争の対立構造を図式したものだが、上のシンプルな「A国対B国」の図式とは別に、双方の国内にいる「a集団」と「b集団」の間でも、意見の対立が存在する事実はあまり議論

        • 母、永眠

          2月26日の夜に母が永眠。3月1日に葬儀を行いました。以下は、喪主として葬儀で述べた挨拶です。  本日はお忙しいところを亡き母の葬儀にお集まりいただき、まことにありがとうございました。いくぶん長い挨拶になりますが、これが母について話す最後の機会になりますので、お付き合いください。  母は、病気療養中の市立病院にて、2月26日午後8時54分に95年の天寿を全ういたしました。  母は、一昨年の5月に介護施設「春圃苑」に入所し暮らしておりましたが、昨年10月11日、血液中の酸

        新しい日本を生み出すために

          なぜ日本は原発を止められないのか?

          青木美希さんの『なぜ日本は原発を止められないのか?』を読む。 福島原発事故から、原発廃止に踏み切った国もある。だが、原発事故の当事国であるにもかかわらず、この国は原発を止めることさえできずにいる。 それはなぜか。本書は、原子力ムラに巣食っている政・官・業・学、そしてマスコミの実態を、明確に解き明かしている。 その実態とは、それぞれが自らが所属する組織にしがみつき、その防衛・維持にのみ固執している。「今だけ、カネだけ、自分の組織だけ(※)」という退廃した姿と意識でしかない

          なぜ日本は原発を止められないのか?

          大阪地裁裁判長「徳地淳」という恥知らず

          赤木雅子さんが、財務省から大阪地検特捜部に提出された関連文書を不開示とした同省の決定取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪地裁(徳地淳裁判長)は14日、請求を棄却した。 徳地裁判長は判決理由で、文書を開示すれば「事件の捜査における手法や対象などが推知される恐れがあり、今後の似たような刑事事件の捜査に支障が生じかねないとする国側の判断は妥当」と判断し、不開示決定を適法とした。 国側の主張だけをそのまま認めただけの判決である。原告が求めていた「改竄の経緯」に該当する箇所の開示さえ

          大阪地裁裁判長「徳地淳」という恥知らず

          福島原発「汚染水」を海に流すな(下)  ~ 原子炉倒壊・差し迫る日本の消滅 ~

          原子炉倒壊の現実性  いま日本が消滅するほどの大きな危機が迫っている。それは、この瞬間にも起こりうる危機である。  爆発を起こした福島第一原発の炉内の動画が公開された(写真上)。格納容器(PCV)の中で圧力容器(RPV)を支えているペデスタル(台座)の鉄筋がむき出しになっていたのだ。事故時に圧力容器から溶け落ちた核燃料(デブリ)の熱でコンクリートが溶けた可能性が高い。  ペデスタルは、重さ500トンもある圧力容器を支えている。このペデスタルが崩れたならば、圧力容器は倒れ、原

          福島原発「汚染水」を海に流すな(下)  ~ 原子炉倒壊・差し迫る日本の消滅 ~

          福島原発「汚染水」を海に流すな(中)  ~ この国を滅ぼす無責任の連鎖 ~ 

          トリチウムを流すは誰か  トリチウムの人体への影響をめぐって、二つの相反する主張が交錯している。図上は経産省、図下は国際環NGOグリーンピースである。  どちらが正しいか。これを判断するのは、実は簡単である。「科学的」な論争に巻き込まれないこと。そして重視すべきは「誰がトリチウムを流そうとしているか」だ。  前回示したように、「汚染水」を流そうとしているのは、汚染水処理に金をかけたくない東電と責任を取りたくない政府、そして再処理工場を動かしたい「亡者」たちである。  「汚染

          福島原発「汚染水」を海に流すな(中)  ~ この国を滅ぼす無責任の連鎖 ~ 

          福島原発「汚染水」を海に流すな(上)   ~ 海洋投棄の裏に隠された理由 ~

          なぜ海に流すのか  汚染水を海に流す理由を、政府と東京電力は「汚染水を貯めるタンクを置く場所がなく、また廃炉作業のための施設を設けるスペースが必要」という。  だが、これはウソである。福島第一原発の敷地内にも近隣地域にも、汚染水を長期的に保管するための十分なスペースがある。それは政府も東電も認めている。陸上保管のためのスペースはあるのに「タンクを置く場所がないから海洋放出」は矛盾でしかない。この矛盾を突かれても、政府と東電は、詭弁を弄しながら、ウソの上塗りを重ねている。  で

          福島原発「汚染水」を海に流すな(上)   ~ 海洋投棄の裏に隠された理由 ~

          沼尻海岸図録(4. 地層と堤防)

           2011年3月11日、三陸沿岸を大津波が襲った。大谷にある沼尻海岸は、この津波によって表土を削り取られて年代の異なる古い地層が現れた。もっとも古い地層は6千年前の地層と推察されている。  上図の「H 津波地層」を発見されたのは、平川一臣北大教授(自然地理学)である。震災直後にこの地を調査、「6000年間の巨大津波の痕跡が一目で分かる海食崖は三陸中探してもほかにないだろう」と語るほど貴重な地層だっだ。 (参照:平川一臣「地形,表層土壌(泥炭質土壌,湿性黒土)形成環境と古津波

          沼尻海岸図録(4. 地層と堤防)

          沼尻海岸図録(3. 磯焼けとウニ)      

           大谷の海は、前回の「海藻」で紹介したように豊かな海藻に恵まれている。海藻はまた海中林として、海の環境や生態系を支える大切な役割を果たしている。   2000年に入る頃から、環境汚染や温暖化、酸性雨などで環境に異変が現れ始めた。大谷でも、陸では「松枯れ」が発生して、海岸の松が次々と枯れ、海中では海藻が枯れてなくなるという「磯焼け」が起こっていた。  磯焼けで海藻が消えたにもかかわらず、写真のようにウニだけが大量に発生している。そこから、磯焼けの原因はウニではないかと考えら

          沼尻海岸図録(3. 磯焼けとウニ)      

          沼尻海岸図録(2. 海藻)

           海の春は早い。2月にはワカメやフノリ、マツモ、ヒジキなどの磯草(海藻)が伸び、磯草採り(開口)が始まる。  沼尻海岸は遠浅の磯場で、大潮の時は沖の岩場まで歩いて渡ることができた。この岩場は海藻の宝庫ともいうべき場所だった。  だが、2011年3月11日の震災で地盤が沈下し、この岩場のほとんどは水中に沈んでしまった。  それでも、沼尻海岸は、震災後も変わらずに海藻が豊かに生い茂っている。海は、時には牙をむいて襲い掛かり、多くの命を奪っていく。けれど、私たちの暮らしに豊かな

          沼尻海岸図録(2. 海藻)

          沼尻海岸図録(1. 空から見た沼尻海岸)

           沼尻海岸の全容を知っていただくために、海岸の上空から撮影した写真をご覧いただこう。震災(2011年)をはさんで前後2枚づつ掲載した。震災の前後で、この海岸の姿がどのように変化したかがお分りになるだろう。  こうして年代ごとに写真を並べてみると、堤防がいかに無機質で味気ないものであるかがよくわかる。景観と海岸の生態を壊し、震災後に回復した陸と海のつながりを断ち切ってしまった。  この堤防は、「続・次の一万年を生きる人々のために」でも述べたように、作る必要のなかった堤防である

          沼尻海岸図録(1. 空から見た沼尻海岸)

          中尾彰裁判長の「バカの壁」

           自分の考えていることが「思い込み」や「思い違い」であっても、それにしがみつき、それが壁となって、物事の本質を受け入れることができない。養老孟司さんはそれを「バカの壁」と名づけた。  11月25日に大阪地裁で森友学園公文書改竄(ざん)裁判の判決があった。赤木俊夫さん(享年54)は、森友学園に関する公文書の改竄を強要され、それを苦に自殺した。妻・雅子さんは、改竄を主導したとされる当時の財務省理財局長・佐川宣寿氏に損害賠償を求めて裁判を起こした。  注目された判決だが、大阪地

          中尾彰裁判長の「バカの壁」

          続・次の一万年を生きる人々のために 3-3 磯浜を復元した住民の強い想い

          磯浜復元ー青森県大畑町の挑戦  二〇〇五年に放映されたETV特集「長ぐつの旅・菅原文太~もう一つの日本は可能か~」で、 青森県むつ市大畑町の磯浜復元の取り組みが紹介されていました。  イカ漁が盛んな下北半島随一の漁師町も、ご多分にもれず、量を求めて大型船を次々と導入し、その係留のために、豊かな海の幸をもたらしてくれた磯浜をつぶしてコンクリートで固めてしまいます。  ところが皮肉にも、漁港が整備されるにつれて、乱獲からイカの漁獲量も激減してしまい、町が立ち行かなくなるという、い

          続・次の一万年を生きる人々のために 3-3 磯浜を復元した住民の強い想い

          続・次の一万年を生きる人々のために 3-2 堤防に破壊された歴史遺産

          歴史を刻む地層  沼尻は、津波によって表土が深く削られたことから、かつての沼地だけではなく、津波の歴史をきざむ貴重な地層も現れました。  この地層を北海道大学の平川一臣教授(自然地理学)が調査に訪れ、この地層は「縄文時代にさかのぼる過去六千年間の巨大津波の歴史が一度に分かる地層」であることを明らかにしたのです。  平川教授によると、津波で運ばれて堆積した砂や石の層が六層あり、層の間隔や堆積物に含まれる土器片の様式などから、上から順に慶長三陸地震(一六一一年)、貞観地震(八六九

          続・次の一万年を生きる人々のために 3-2 堤防に破壊された歴史遺産