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福島原発「汚染水」を海に流すな(上)   ~ 海洋投棄の裏に隠された理由 ~

なぜ海に流すのか
 汚染水を海に流す理由を、政府と東京電力は「汚染水を貯めるタンクを置く場所がなく、また廃炉作業のための施設を設けるスペースが必要」という。
 だが、これはウソである。福島第一原発の敷地内にも近隣地域にも、汚染水を長期的に保管するための十分なスペースがある。それは政府も東電も認めている。陸上保管のためのスペースはあるのに「タンクを置く場所がないから海洋放出」は矛盾でしかない。この矛盾を突かれても、政府と東電は、詭弁を弄しながら、ウソの上塗りを重ねている。
 ではなぜ、ウソをついてまで政府と東電は海洋投棄を強行しようとするのか。理由は簡単だ。汚染水処理に金(コスト)をかけたくない、それだけである。東電が株式会社であり続ける限り、利益を出し、株主に配当しなければならない。国民の安全よりも利益を優先する。その体質は、あれほどの事故を引き起こしながら変わってはいないのである。

凍土壁の失敗
 利益優先の体質とそれが招いた失敗の前例がある。凍土壁だ。
 台地を削って建設した福島原発の敷地には、地下水や雨水が大量に流入する。それが事故によって建屋が破壊されて原子炉内に入り、汚染水となっている(図1)。

 原発に流れ込む水を止めるためには遮水壁が必要となる。だが、遮水壁を鉄とコンクリートで建設すると1000億円を超える。株主総会でそれは認められないと東電は遮水壁を作ろうとしなかった。
 ところが、安倍晋三元首相がオリンピック招致のために「フクシマはアンダーコントロール、汚染は完全にブロックしている」などと海外にまで大嘘をついたために、遮水壁を作らざるをえなくなった。
 東電は金をだしたくない。そこで、経産省は、凍土壁であれば研究開発という名目で国が金を出すことを提案。費用もコンクリートよりもはるかに安い。これが300億といわれる凍土壁が作られた理由だ。
 だが、凍土壁は地下水の流入を止めることができなかった。安いとはいえ300億円、私たちの税金である。その責任もとらず、政府は頬かむりをしたままだ。許されることではない。
 遮水壁を作り、地下水の流入を止めていれば、汚染水が増えることもなく、海に流す必要もない。自らの失策によって汚染水を防ぐことに失敗しながら、汚染水が増えたから海へ流すというのである。もはや倫理もなくまともな思考力さえ持ち合わせていないようだ。

再処理に固執する亡者
 汚染水の海洋投棄にしがみついているのは東電だけではない。戦争の抑止力として核兵器を持つことを妄想する「亡者」も同じだ。
 原発の技術は核爆弾の製造技術と結びついている。核を持つ「潜在能力」として原発は必要というのが岸信介元首相の持論だが、それを支持する者たちが亡霊のように生き続けている。
 長崎に落とされた原爆はプルトニウムだ。このプルトニウムを使用済み核燃料から取り出すのが再処理工場(六ケ所・写真)である。だが、この工場は1993年に着工したものの、トラブルが相次ぎ、30年が過ぎても一度も稼働せずに26回もの延期をくり返している。

六ケ所再処理工場(2022年:日本原燃のHPより)

 それでもまだ、この工場の稼働をあきらめていない。それだけも核への執念がわかる。
 この再処理工場が出す廃液は福島原発の汚染水と同じものだ。汚染水の海洋投棄ができなければ、再処理工場からの廃液も海に流すことができなくなる。
 これが、国民の反対を無視してまで海洋投棄も強行しようとする隠された理由である。


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