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福島原発「汚染水」を海に流すな(下)  ~ 原子炉倒壊・差し迫る日本の消滅 ~

原子炉倒壊の現実性
 いま日本が消滅するほどの大きな危機が迫っている。それは、この瞬間にも起こりうる危機である。

 爆発を起こした福島第一原発の炉内の動画が公開された(写真上)。格納容器(PCV)の中で圧力容器(RPV)を支えているペデスタル(台座)の鉄筋がむき出しになっていたのだ。事故時に圧力容器から溶け落ちた核燃料(デブリ)の熱でコンクリートが溶けた可能性が高い。
 ペデスタルは、重さ500トンもある圧力容器を支えている。このペデスタルが崩れたならば、圧力容器は倒れ、原子炉内の放射能がそのまま放出されてしまうかもしれないのだ。
 それだけではない。原子炉建屋には原子炉に近接して使用済み燃料プールがあり、その中には392体の燃料棒がある。事故の時にそれを取り出すクレーンが落下し、取り出せずにそのままになっている。原子炉が倒壊すれば、この燃料プールも破損し冷却水が漏れ出て燃料棒の溶解も免れない。(写真下・森重晴雄さんのFBから転載)

 3・11をはるかに超える放射能が拡散し、制御することもできずに日本は消滅する。
 こう警鐘を鳴らしているのは森重晴雄さんだ。三菱重工の技術者として原子力の耐震構造を研究し設計にも携わってきた方だ。伊方原発3号機の建設責任者でもある。
 公開された圧力容器を支えるペデスタルの損傷は深刻で、震度6強の地震で倒壊すると森重さんは試算している。

無責任を露呈した政府
 森重さんの警告を基に川田龍平参議院議員は質問主意書を政府に提出した。だが、政府の回答は「格納容器内の放射線量が高いため、倒壊防止策を講じることは困難であると考えている」という無責任極まるものだった。
 森重さんは東電にも質問書を送っているが、倒れても被害は軽微と、根拠も示さず無責任な回答を返している。
 川田議員は再び質問主意書を送り、森重案として、倒壊を防ぐために、線量の低い原子炉の上部の周りにコンクリートを流し込むことを提案している。だが政府の回答は東電の回答と変わりのないものだった。

今だけ金だけ自分だけ
 地震学者で原子力規制委員会の委員長代理を務めた島崎邦彦さんが今年3月『3.11 大津波の対策を邪魔した男たち』を著した。この中には、原子力ムラの官僚や御用学者たちが東電とグルになって「大津波の対策を邪魔した」事実が記されている。島崎さんはこう嘆く。
 「(原子力ムラの根底に存在するもの)それは、原発を推進しなくてはいけない、という空気、組織としての慣性。『今だけカネだけ自分の会社だけ』という意識です。」

機能不全の岸田政権
 不思議なことに、日本が消滅するかもしれないのに、政府に危機意識もなく対策をとろうともしない。どうなっているのだろうか。
 岸田文雄首相は、「どうして総理大臣になったのか」と子どもからの質問に、「日本社会の中で権限が一番大きいから」と答えた。
 では、彼は「一番大きな権限」で何をしたか。
 原発の再稼働を決め、防衛費の増大を決めている。これだけでも、前者は原子力ムラ、後者は安保ムラの言いなりであることがわかる。なぜ言いなりになるのか。そうすることで「一番大きな権限」の座、つまり「権力」につけるからだ。
 首相たる者の使命は、この国の平和と国民の生活を守ることにある。だが、岸田首相がやることは逆である。それは、岸田首相にとって「権力につくこと」「権力を維持すること」だけが目的になっているからだ。
 子供の質問の答えに、それが現れている。他にもそれを示す例は多い。一つはマイナ保険証。これを強行する背後にはデジタル化を進めたい財界の圧力がある。 
 統一教会もそうだ。信者から資産を巻き上げ、安倍元首相殺害事件を引き起こした。解散しようにも統一教会と関係が深い最大派閥・安倍派を恐れて手がだせない。
 これらの事例が示しているのは、権力の維持のために、力のある者や組織の顔色を伺うだけの姿である。
 国や国民に目を向けず、すべきこともしていない。機能不全を起こすのも当然である。そこに、原子炉倒壊とこの国の消滅が現実となる。
 それを前にして、それでもあなたは、声も上げす行動もせず、無関心のまま滅びの時を迎えるつもりなのだろうか。


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