Masaya.Mori 森正弥 / AI Institute 所長
世界のスマート農業・AgTech:AI、ロボティクス、IoT、バイオサイエンス活用
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世界のスマート農業・AgTech:AI、ロボティクス、IoT、バイオサイエンス活用

Masaya.Mori 森正弥 / AI Institute 所長

産業領域別の適用

AIやロボティクス、IoT技術を組み合わせ、様々な領域で活用していこうという試みが増えてきています。汎用的なソリューションという位置付けから、産業領域、ドメインを特定して特有の課題を解決していこうとするプレイヤーも増えてきています。ドメインにフォーカスすることで、専門家の知識も有効に活用し、それをテクノロジーの力でレバレッジし、スケールさせていくということが狙えます。

以前、このようなモデルのことを、E&Eモデル(探索と活用モデル)と名付け、解説記事を書きました。

AIとロボティクス、IoT技術の組み合わせというところでは、例えば、製造業におけるスマートファクトリー、物流や流通での適用、医療での活用、等です。農業分野での適用、スマート農業やAgTechといわれるものも、そのうちの一つです。


農業の領域におけるチャレンジ

FAO(国連食糧農業機関)によると、世界の人口は2050年までに90億人に増加すると予想されており、大規模な飢饉を防ぐためには、世界の食糧生産量を70%増加させる必要があります。同時に、農業の領域においては、様々な課題に直面しています。労働力の減少と不足、生産コストの増加、土地管理の非効率性、持続可能な生産方法の開発、フードロス(食品廃棄物)、そして食品の原産地に対する透明性を求めるトレーサビリティ等です。世界中の企業・スタートアップがこれらの課題に取り組み、AIやロボティクス、IoT技術、さらにはバイオサイエンスを組み合わせ、未来に革命を起こすイノベーションにチャレンジしています。今回は、健全な食糧生産に貢献するための創造的なソリューションを提供する企業やスタートアップを紹介します。 


Kakaxi

トレーサビリティは、農業・食糧の領域における、品質と安全と安心に関わる長年のテーマです。農場における生産性の向上と、食卓までの透明性を実現していくというコンセプトに基づいて創業したKakax社iは、農業の生産性向上に寄与する各種データを安価に取得できる農地モニタリングIoTデバイス「KAKAXI」の研究開発・販売を行っています。

KAKAXIは、太陽光稼働で内蔵されたカメラが定期的に農場を撮影し、同時に温度・湿度・日射量・雨量を測定します。このデバイスを活用することで、農家は作物の成長や気象データをモニターし、また、農作物の生育状況を倍速の動画で確認することで時系列での変化を見ることができるので、よりスマートな農業の意思決定を行うことができます。また、消費者にはトレーサビリティを保証していくことで、食の安心をサポートしています。


Big Wheelbarrow

Big Wheelbarrowは、農業における生産者とバイヤーの取引を効率化するソフトウェアを提供するテキサスのスタートアップです。生産者とバイヤーを結びつけるプラットフォーム、ダッシュボードを提供しています。Big Wheelbarrowのソリューションにより、規模の大小にかかわらず、バイヤーは小規模な独立した生産者と連携することがよりスピーディーかつ容易になります。同社の技術は、顧客が従来のように時間と労力をかけずに地元の製品を顧客に提供することを可能にします。

また、Big Wheelbarrow社は昨年、新しいDSD(Direct-Store-Deliver)製品を発表しています。これにより、同社のユーザーは、畑から店舗までの食品の移動距離を80%削減していることが発表されています。また、同社は今後、農産物だけでなく、食料品店で販売されるすべての生鮮品のサプライチェーンも大きく改善していくソリューションを検討しています。


Biome Makers

Biome Makers社は、グローバルに展開しているAgTech企業で、土壌品質管理ソリューションとプラットフォーム「BeCrop」を提供しています。

BeCropは、様々な農場の土壌の生物学的品質を測定し、農場経営をより最適化するためのデータとインサイトを農家に提供します。

このプラットフォームと技術により、顧客と農家の双方に、データに基づく状態の判断と意思決定というアプローチを可能にし、品質と信頼性の高い農作物の管理と消費を実現することができます。


Connecterra

2015年に設立されたConnecterraは、アムステルダムを拠点とするテクノロジー企業です。酪農家と協力して問題を特定し、解決策を提案し、オペレーションを効率化することで、最も効率的な酪農場の運営を支援することを目指しています。彼らは、農家とバリューチェーンをつなぐ、機械学習を利用した予測インテリジェンスプラットフォームIDAを開発。Danone社、Bayer社、食品安全の専門企業であるKersia社など、業界の大手企業に採用されています。この技術は、ホルモン剤の使用を廃止し、抗生物質の使用量を最大50%削減し、農場の効率を高めた持続可能な農業モデルの構築に活用されています。また、このプラットフォームは、再生可能な農業の実践を目的とした、Danone社が主導するFarming for Generations(F4G)コンソーシアムの一員でもあります。


EarthSense

EarthSenseは、自律型ロボット「TerraSentia」を開発しています。この小型のロボットは、フロントとバックの両方に備え付けられたLiDARと、内蔵されたComputer Visionと、あとからの学習が可能な機械学習モジュールによる画像解析により、農作物の状態の分析や農地の3DMap構築を実現します。TerraSentiaはまたROSに対応した標準のアーキテクチャで開発されおり、アーム等を設置して拡張していくことも可能で、農場の規模の大小を問わずに、データ解析やロボティクスのソリューションを手軽に、迅速に導入できるところがポイントです。


OPTiM

AI、IoT、ビッグデータを活用した様々なソリューションを提供しているオプティム社は、各種技術を駆使したスマート農業ソリューション群を発表し、農業のデジタル化をサポートしています。動画にある、OPTiM AGRI DRONEは、農家の負荷を減らす自律飛行機能を搭載したドローンです。上空から農地をデジタルスキャニングしてデータの蓄積を行い、そのビックデータを解析して病害虫の早期発見や生育管理、またピンポイントでの農薬散布等を手軽に行うことが可能です。

加えて、同様に高度な自律運転を行い、本体内で画像認識を行うことができる陸上走行型ロボット「OPTiM Crawler」も提供しています。


Gamaya

2015年に設立されたGamayaは、ドローンや衛星画像をもとに、独自の農学ソリューションを提供しています。Gamayaは、エッジカメラによる高精細の画像解析と機械学習を組み合わせた技術を保有しており、農地の状態・使われ方を分析し、水、化学薬品、燃料、人手にかかるコストの最適化を行い、環境への影響を抑え、作物の生産性と品質の向上に貢献します


Kray Technologies

Kray Technologies社は、完全無人のUAVによる高い効率性をもった作物散布機を開発しています。このソリューションは、従来の機器による散布に比べて、燃料、メンテナンス、スタッフの数が少なくて済み、農家のコストを大幅に削減します。Kray Technologies社のドローンは、EPA(米国環境保護庁)の安全基準を満たしながら、1日あたり最大1200エーカーの処理が可能です。


Kiwi Technologies

2017年に設立されたKiwi Technologiesもドローンソリューションの企業です。彼らは大規模な農場で必要とされる最適な量の農薬の散布したり、種子を撒くためにデザインされた地上支援プラットフォームと対になったUAVを開発しています。この無人航空機は、GPS技術を使用したフライトプランナーを搭載しており、農場を均一かつ包括的にカバーし、最適な量での安全で正確な散布を実現します。


Vibe Imaging Analytics

Vibe Imaging Analytics社は、収穫後の穀物・種子市場向けの検査機器「Vibe QM」を開発しています。    Vibe QMは、Computer Visionと機械学習により、穀物のサイズ、形状、色、品質を識別し、カウントし、分類します。Vibeのソリューションは、様々な規制や基準に対応するために、多くの目視・人手でのレーティングや関連作業が必要とされる穀物・種子の品質プロセスのデジタル化に貢献します。


Terramera

2010年に設立されたTerrameraは、生物由来のバイオ農薬や種子処理剤を開発しているベンチャー企業です。彼らはバイオ農薬の開発に加えて、Actigateというソリューションを開発。Actigateは、農薬の効果を飛躍的に高める結果、そもそもの化学農薬の量の削減や、バイオ農薬へのシフトに貢献すると期待されています。これにより、農業はより健康的で、より持続可能で、より生産的なものになります。その技術は、Fast Company誌で「世界を変えるアイデア」として評価され、2030年までに世界の合成農薬の使用量を80%削減すると予測されています。


Trapview

Trapviewは、病害虫モニタリングデータの信頼性の高い収集を可能にする自動病害虫モニタリングキットおよび予測プラットフォームです。有害生物の発生をほぼリアルタイムで補足し、生産者が現場での状況にうまく対応できるようにします。


BioFiltro

BioFiltro社は、ミミズや微生物の消化力を利用して、排水中の汚染物質を99%まで除去する特許取得済みのろ過システムを用いて、排水処理ソリューションを提供しています。35カ国以上で特許をライセンスして事業を展開している、BioFiltro社の目標は、廃棄物の流れを再生可能な流れに、そしてビジネスの新たな源泉に変えることです。


Livestock Water Recycling

Livestock Water Recycling社は、糞尿処理技術の世界的なリーディングカンパニーと言われています。

同社は、独自のシステムを用いて、家畜の糞尿から固形物を何段買い物ステップにわけて除去していくことで、より質の高い、栄養分のある肥料を作るとともに、これら肥やしから水を取り出すことも可能にします。糞尿を水源にも変え、それもまた農業・酪農に再利用するとができるというのが売りです。

同社の技術により、農家・酪農家や様々な農業関連企業は、よりクリーンで環境に優しい糞尿管理システムを実現することができ、約20~30%の投資収益率を得ることができます。


AgDraft

オーストラリアのスタートアップであるAgDraf社tは、農業従事者と農家をつなぐオンラインプラットフォームです。

農家は、現在進行中の様々な農業活動に対する求人情報を掲載することができます。また、農業従事者は、スキルや経験値を記載したプロフィールを作成することで、仕事を見つけることができます。また、農家の方々は、農業従事者のレビューを投稿することもできます。

農業のためのLinkedInと称されるこのオンラインプラットフォームは、これらの機能により、数多くの農家と各種スキルを持った農業従事者を結びつけ、就業機会の損失を低減させています。


Cambridge Crops

Cambridge Crops 社は、様々な生鮮食品の賞味期限を延ばすために、自然で食用に適した、タンパク質でできてるコーティングスプレーを開発しています。このコーティングは、無味無臭で、水分を主体とした絹の繊維状タンパク質が含有されており、空気中の水蒸気や気体に触れにくくさせ、酸化や水分の消失を防ぎます。それにより細菌の成長を遅らせる効果があり、バナナ、アボカドやほうれん草、肉や魚介類など、数多くの食品の賞味期限を約2倍に伸ばすことができます。食品だけでなく花にも適用可能。Cambridge Cropsの技術は、既存の包装・加工ラインに比較的容易に組み込むことができ、サプライチェーンの変更や高額な導入費用の必要性を最小限に抑えることができるところが売りです。


Motorleaf

2016年創業の、バイオサイエンスとデータサイエンスを組み合わせたMotorleafは、データに基づいた農業における意思決定をサポートしています。彼らは機械学習を用いて、水耕栽培の温室の収穫量を正確かつ自動的に予測するソリューションを開発。このソリューションは、生産者が収穫物の将来の収量を予測し、状態をモニタリングし、適切に温度や環境をコントロールするためのソフトウェアツールを備えています。


Verdical

Verdicalは、スマートフォン上でスワイプをするだけで誰でも簡単に野菜やハーブを育てることができる、自動化された室内園芸システムおよびプラットフォームです。Verdicalを使用することで、レストランは上記の動画にあるように、屋内を生命力にあふれた空間に変えつつ、自前で食材を生産し、消費者に直接提供することで新しい体験を提案することができます。これは食料のサプライチェーンに対する問いかけでもあります。


Smallhold

Smallhold社は、小売店やレストラン向けに、最小限の労力で大量のマッシュルームやハーブ、葉物野菜を生産できる、環境に配慮した垂直型農場ユニットを提供しています。現在、同社が提供しているのはオンサイトでのマッシュルーム生産で、本棚ほどのスペースで1週間に120ポンド(約2.5kg)のマッシュルームを生産することができます。マッシュルームは有機認証を取得しており、従来の栽培方法と比較しても遜色ありません。


Back to the Roots

Back to the Roots社は、自分で育てることの素晴らしさを体験してもらうことで、人々と食の関係を取り戻すことをミッションとしてプロダクトを世に出しています。同社ですが、家庭で簡単にミニ菜園を行うことができる、キノコ栽培キットや、水耕栽培キット等を開発しています。


終わりに

以上、将来の農業、食糧生産に貢献する革新的なソリューションを提供している企業やスタートアップを紹介しました。

農業の生産性やエネルギー効率を向上させ、また品質や安全を保証していくことは、世界における喫緊の課題です。今回ご紹介してきた様々な企業やスタートアップのソリューションは、それぞれが創造的なものであり、我々が住んでいる社会をよくしていくポテンシャルに満ちています。AI、ロボティクス、IoT、バイオサイエンス、各種技術を活用しながら、よりよい未来を作っていくことは重要な方向性の一つです。各取り組みの進展を期待しつつも、サポーターとして、消費者として我々にできることも、考えていきたいと思います。

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Masaya.Mori 森正弥 / AI Institute 所長
ハーバードビジネスレビュー連載中 / デロイトデジタル 執行役員、Deloitte AI Institute 所長。東京大学 IPC顧問。東北大学 特任教授。メルカリR4D・日本ディープラーニング協会 顧問。元楽天 執行役員 https://twitter.com/emasha