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壮絶な自叙伝小説 『レッドベルベットドレスのお葬式 改稿版』

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パニック障害や複雑性PTSDを乗り越え再生しようとする青年の姿を描いた、自伝的小説です。交通事故やパニック障害・複雑性PTSDの発症、心身の治療描写は事実を描いたノンフィクション…
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2021年10月の記事一覧

父の帰宅 02

父親はマサが一一歳のときに、二〇〇〇万円ほどの借金を作って突然蒸発した。その後手紙ひとつ…

新田将貴
2年前
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父親の帰宅 01

季節は一〇月に入っていたが、ごく最近に大きな手術を二度受けて体力を消耗しているマサにはま…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 10

手術当日まずマサに意識をぼんやりさせるように筋肉注射が打たれた。 「筋肉注射ですか、恐ろ…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 09

手術から時間が経ち、意識がはっきりし始めた頃からマサは左眼に幻覚が見えていることを認識し…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 08

ICUから個室に移り、マサの入院生活に幾分か生活のリズムが生まれてきた頃、ヒサコさんはマ…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 07

「ヒサちゃん、このまま帰ってしまったら僕は何するか分からないよ」 ヒサコさんは怖かった。…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 06

この頃からマサは頭に、特に左眼の奥に激痛を訴えるようになっていた。ヒサコさんが見舞いに来ているときに左眼の激痛を訴え始めた。普段からいつも苦痛に顔を歪めていたがこのときは痛がり方が尋常ではなかった。恐らく左の眼窩を骨折しているせいだろう。 ナースコールして鎮痛剤をすぐに投与してもらった。しかしいっこうに痛みは引かない。今度は座薬を入れた。しかしマサは顔は激痛に歪んだままだ。ヒサコさんはもう自分の想像を完全超えてしまっている痛みなので客観的に見ることしかできなかった。痛いのだ

急性硬膜外血腫 05

マサは急性硬膜外血腫で搬送されてきたわけで、里見先生の話ではあと一時間搬送が遅ければ脳死…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 04

ベッドに横たわるマサを見てヒサコさんが一番驚いたのは、マサの頭から管が出ていることだった…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 03

わたしはちょうど夏休みに入っていたので帰国していた。わたしとレオが病院にお見舞いに行った…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 02

以下はマサの執刀にあたった児島総合病院の里見先生が書いた診断書だ。 診断書 傷病名 ① 症…

新田将貴
2年前
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急性硬膜外血腫 01

マサは来週の同じ時間に谷口病院に行くことはなかった。交通事故を起こしたのだ。 朝通学のた…

新田将貴
2年前
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パニック発作 13

「どうされましか」 またいつものようにこれまでの経緯を説明して、今はパニック発作よりもう…

新田将貴
2年前
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パニック発作 12

このときマサはコンピューターグラフィックスの専門学校に通っていた。この専門学校は基本的に社会人の転職用にカリキュラムが組まれていてマサは週二回だけこの学校に通っていた。 授業以外の平日は授業の復習や作品制作にあて、週末と祝日のバイトをこなしていた。しかし朝起きるとどうしてもバイトに行きたくない、働きたくない、働くところを想像すると気分がいっそう落ち込む。でも休むわけにはいかない。そんな状態が続いていた。そして森川神経医院に相談した。 「今日はどうしました、かなりしんどそう