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物語 〜愛子の日常〜

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『愛子の日常』という物語を書いています〜 是非覗いていってください。近々、書籍化もしますので、そちらも宜しくお願いします。
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2022年7月の記事一覧

小説『愛子の日常』 本編5.

小説『愛子の日常』 本編5.

〜セントの青春 Ⅰ.〜

次の日。

セントは朝起きて母親に挨拶するも、母親は「彼女と結婚する事は許しません」の一点張りだった。

「それは日本人だからかい?」「お母さんは差別しているだけじゃないのかい?」とセントは反発するも母親は聞かなかった。

そんな会話を一時間もした後、セントは会社に間に合わないと思い話を切り上げ職場に向かった。

職場に着くとさやかの姿は無かった。いつもならもうとっくに着

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小説『愛子の日常』 本編4.

小説『愛子の日常』 本編4.

〜陶器のコップ〜

時間というものはすぐに過ぎ去ってしまうもので、来週の火曜日はすぐにやってきた。

2人は15時に仕事を終えるとセントの家へと向かった。セントの家はロンドンの中心街からは離れていてバスに乗って行かなければならない。

2人がセントの家に着いた頃には16時をまわっていた。ただ、アフタヌーンティーには丁度いい時間にも思えた。

セントはさやかを自分の部屋に案内した。

さやかが部屋に

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小説『愛子の日常』 本編3.

小説『愛子の日常』 本編3.

〜運命〜

グリニッジ天文台に行った次の週の金曜日。
この日もセントはイライラしていた。

なんでも、さやかがアメを配ったことが原因だったらしい。
さやかは袋いっぱいにアメを持ってきていた。そのアメを職場のみんなに配って歩いていた。

セントはそれを見て、アメなんかいらないと思った。どうせ配るなら、チョコレートやお菓子を配ればいいのに。アメなんかもらって喜ぶのは子供だけだと、さげすんだ。

さやか

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小説『愛子の日常』 本編2.

小説『愛子の日常』 本編2.

〜セントの記憶 Ⅱ.〜

実は、さやかとセントは同じ会社の同じ部署で働いていたのだが、セントがそれに気づくまでには長い長い時間がかかった。

時を知らせるハト時計までもが黙りきるほどの長い長い時間だった。

きっとこの話を聞いた人々は、セントは馬鹿なのだと思うことだろう。

まさか自分の席の右隣りに座っていた女性が大西さやかだとは、セント自身も気づいた時にはものすごい驚きようだったのだから。

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