常盤成紀 / Masanori TOKIWA

コンサート・ワークショップの企画制作。投稿内容は所属する組織の見解とは必ずしも一致しま…

常盤成紀 / Masanori TOKIWA

コンサート・ワークショップの企画制作。投稿内容は所属する組織の見解とは必ずしも一致しません。【About】https://researchmap.jp/masanoritokiwa |【Contact】masanoritokiwa0127@gmail.com

マガジン

  • アミーキティア管弦楽団について

    プロジェクト型オーケストラ〈アミーキティア管弦楽団〉の団体紹介・公演情報・関連記事をまとめています。演奏者募集はFB/Twitterでご確認ください。企画運営メンバーは随時募集中です。お問い合わせはこちら(orchestra.amicitia@gmail.com)。

最近の記事

アマチュアオーケストラにおける自治と社会

誰かが決めたルールに従って生きることは「統治」であり、自分たちが決めたルールを自分たちで守って生きることは「自治」であるといえる。これまで多くの場面において、オーケストラは指揮者を中心とする統治のモデルで語られてきた。この「統治」と「自治」は、現実世界では必ずしも一方のみで存在するものではない。また近年、オーケストラにおける指揮者に限らず、演劇における演出家の役割などにおいても、いわゆる「脱権力」の志向が、とりわけ若い世代に見られている。なのでオーケストラにおける統治を素朴に

    • 文化としての酒とクラシック音楽を思う――アミーキティア管弦楽団酒蔵コンサートプログラムノート

      灘の男酒、伏見の女酒という言葉を聞いたことがあるかもしれない。「一麹、二酛、三造り」と言われる酒造りだが、それを支えるのは水だ。灘五郷に流れる水は「宮水」とも呼ばれるミネラル分の多い硬水で、しっかりとした味の酒になる。他方で伏見に流れる水はマグネシウムやカリウムなどが程よく含まれる軟水で、なめらかな淡い味の酒になる。ここ奥丹波は、現在の行政区分では兵庫県に当たるが、かつての丹波国はむしろ現在の京都府に大きくまたがっていた。そして実は、奥丹波は女酒だという。この地域は、瀬戸内海

      • 踊ること、繰り返すこと、生きること——新解釈ボレロ!- きょうもいちにち -

        2017年から続く、釜ヶ崎芸術大学×アミーキティア管弦楽団「音楽とことばの庭」シリーズ。この6年目となる2022年11月に、《新解釈ボレロ!- きょうもいちにち -》を上演しました(以下、新解釈ボレロ)。この新解釈ボレロは、モーリス・ラヴェル(1875~1937)の言わずと知れた名曲『ボレロ』(1928)を、盆踊りと連歌の方向から再解釈して構成したパフォーマンスです。本番では、(後でご紹介する)特殊なルールに従って演奏される『ボレロ』に合わせて、盆踊りが踊られたり、短歌が読み

        • 【アーカイブ】トーク:合作俳句・合作楽譜——音楽とことばをめぐる実験

          <話し手> 上田假奈代:詩人・NPO法人こえとことばとこころの部屋代表 常盤成紀:アミーキティア管弦楽団主宰 小川歩人:哲学研究者・かまぷ〜(釜ヶ崎芸術大学サポートメンバー) 【小川】 このワークショップ「合作俳句×合作楽譜」は、2017年から釜ヶ崎芸術大学(釜芸)とアミーキティア管弦楽団(アミオケ)の取り組みとして続いている「音楽とことばの庭」というコンサート・ワークショップにおける5年目の企画として、昨年の12月に実施されたものです。今日の前半では、会場にお集まりの皆さ

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        • アミーキティア管弦楽団について
          16本

        記事

          【開催予定】酒蔵コンサート - 酒とクラシック音楽の交差 - 於:山名酒造

          山名酒造株式会社について 概要 期日2023年(令和5年)3月26日(日) 会場:山名酒蔵内「旧ロック製作所」 (JR福知山線市島駅より徒歩10分) 13時 開場 13時10分~20分…プレトーク 13時30分 開演 15時   終演予定  入場料・観覧料:1,000円  (要申込/中学生以下無料) →お申込はこちら プログラム ・G. ヴェルディ   歌劇『椿姫』より、乾杯の歌   ※歌はなしで音楽のみ ・C. サン=サーンス   歌劇『サムソンとデリラ』より「バッ

          【開催予定】酒蔵コンサート - 酒とクラシック音楽の交差 - 於:山名酒造

          【掲載報告】オーケストラにおける「アマチュア」をめぐる問題系——表現・制度・パフォーマティビティ(『アレ』Vol.11所収)

          2022年5月に、ジャンル不定カルチャー誌『アレ』第11号に、「オーケストラにおける『アマチュア』をめぐる問題系——表現・制度・パフォーマティビティ」が掲載されました。本誌への寄稿はこれで三度目。第5号「僕の仕事とは、僕であること」、第8号「誰のための地方創生か――参加と地域メンバーシップの変容をめぐる「地方」の課題」と続き、その時々で深く関わってきた仕事・学業を自分自身の目線から考察する、エッセイ的な論考として書きました。 今作は、昨年に刊行した研究ノート「アマチュアオー

          【掲載報告】オーケストラにおける「アマチュア」をめぐる問題系——表現・制度・パフォーマティビティ(『アレ』Vol.11所収)

          釜ヶ崎でアミオケが見つけた、オーケストラのもうひとつの形【再掲】

            アミーキティア管弦楽団、通称アミオケは、ずいぶんと「変な」オーケストラだと思う。はじめのうちはまだ一般的なコンサートも開催してはいたが、近ごろではこの釜ヶ崎を始め様々な場所に出向き、演奏だけでなく、創作やワークショップを行い、時に詩や演劇が加わる。行政の行事や学校の授業として開催することもあった。「企画モノ」という異端扱いぎりぎりのラインでコンサートを制作してきたアミオケは、2021年2月で設立から丸6年になる。 このアミオケが出自としているアマチュアオーケストラのほと

          釜ヶ崎でアミオケが見つけた、オーケストラのもうひとつの形【再掲】

          コンサートの企画をするうえで改めて考えていること#01

          ずいぶんと前になりますが、「コンサートの企画をするうえで考えていること」というタイトルで3回に分けて、アミーキティア管弦楽団(アミオケ)でコンサートを考える際の方向性について書いたことがあります。その時の内容から大きく変わったわけではありませんが、それほど大事だと思わなくなったことがあったり、反対に今一番興味があることがあったりするので、ここで一度整理しておきたいと思います。 これまでの方向性これまでの方向性は、短い間に何回か表現の変更はありましたが以下の通りです。 これ

          コンサートの企画をするうえで改めて考えていること#01

          合作俳句×合作楽譜——作曲とは何か、作品とは何かをめぐる実験について

          2021年12月19日(日)、アミーキティア管弦楽団(アミオケ)による5年目にして4回目の釜ヶ崎芸術大学コンサート「音楽とことばの庭」を開催いたしました。 このコンサートは、僕たちアミオケにとっては、コロナの影響による休止期間が明けた一発目に当たり、情勢が読めない中ようやく開催できたコンサートでした。そのこともあって、早い段階から編成を9名に絞ってアンサンブルと室内楽を中心に企画を立てることにしました。もともとこの釜ヶ崎芸術大学のコンサートではスペースの都合上、管楽器はすべ

          合作俳句×合作楽譜——作曲とは何か、作品とは何かをめぐる実験について

          「〈社会包摂〉をめざす〈アウトリーチ〉」の理念と実践を理解するための補助線:2010年代以降の文化施策が踏まえている二つの文脈

          この文章では、2010年代以降、文化芸術の現場でキーワードとなっている「〈社会包摂〉をめざす〈アウトリーチ〉」という概念について、主に文化施策史や美術史などの歴史的な経緯を振り返りながら、順を追って整理していこうとしています。なお参考文献一覧は末尾をご確認ください。 〈社会包摂〉をめざす〈アウトリーチ〉? 2017年、「文化芸術振興基本法」が「文化芸術基本法」と改まりました。この改正の主眼を端的に示す新設の第二条第10項では、「文化芸術に関する施策の推進に当たっては、文化芸

          「〈社会包摂〉をめざす〈アウトリーチ〉」の理念と実践を理解するための補助線:2010年代以降の文化施策が踏まえている二つの文脈

          【掲載報告】アマチュアオーケストラの音楽表現が持つ意義を捉え直すための序論(『アートマネジメント研究』第21号所収)

          2021年3月31日付で日本アートマネジメント学会から発行された機関誌『アートマネジメント研究』第21号に、研究ノート「アマチュアオーケストラの音楽表現が持つ意義を捉え直すための序論」が掲載されました。 本稿では、わが国のアマチュアオーケストラ(アマオケ)について、それが戦前からの歴史的な厚み、あるいは現在における注目に値する多くの活動があるにもかかわらず、専門的・体系的な関心が向けられてこなかったことへの問題提起を行っています。そしてそれを、クラシック音楽やオーケストラの

          【掲載報告】アマチュアオーケストラの音楽表現が持つ意義を捉え直すための序論(『アートマネジメント研究』第21号所収)

          「強い女オケ」を応援しながら考えていたこと――オーケストラと第三波フェミニズムについてのメモ

          まだ終わってもいない、まだ聴いてもいないコンサートのことを書くなんて普通はあり得ない。これは、L'orchestre de femme fatale(通称「強い女オケ」)をめぐるここ数日(3月1~2日)のTwitterにおける盛り上がり(と言えばいいのか、何と言えばいいのか、少なくとも「論争」というようなものではないが、「盛り上がり」に含まれる楽しげなニュアンスもどこか違う、が、とりあえずこう書いて措く)を横目で見ながら考えていたことを、リアルタイムでは整理できず後日思い至っ

          「強い女オケ」を応援しながら考えていたこと――オーケストラと第三波フェミニズムについてのメモ

          アミーキティア管弦楽団:活動経歴(2024.04.01更新)

          組織概要 楽団コンセプト 《音楽で、いろんな世界に出会おう。》 コンサートごとに演奏者を募る「プロジェクト型オーケストラ」として、関西を中心に活動する音楽団体。通称アミオケ。地域や人びとの歴史・生活・記憶・文化と音楽表現とを結びつけながら、社会の中でのオーケストラのあり方を問い続けてきました。演奏することだけでなく、コンサートを作ること自体も芸術パフォーマンスだと考えて活動しています。 2017年からはNPO法人こえとことばとこころの部屋(通称:ココルーム)と共に、釜

          アミーキティア管弦楽団:活動経歴(2024.04.01更新)

          【掲載報告】「誰のための地方創生か:参加と地域メンバーシップの変容をめぐる『地方』の課題」(『アレ』Vol.8所収)

          このところ、ためていたネタを投稿し続けています。今回は、時期的には遅くなりましたが、2020年9月に無事(無事!)刊行されたジャンル不定カルチャー誌『アレ』Vol.8に収めていただいている自作「誰のための地方創生か:参加と地域メンバーシップの変容をめぐる「地方」の課題」について、簡単に解題をしたいと思います。 本稿は、2014年から始まった地方創生という言葉に括られる一連の地域活性化に関する取り組みについて、その動向を整理するとともに、政治思想史的、地域学的、カルチュラルス

          【掲載報告】「誰のための地方創生か:参加と地域メンバーシップの変容をめぐる『地方』の課題」(『アレ』Vol.8所収)

          『羅小黒戦記』に見られる現代中国における政治的リアリズム

          先月、一部で噂になっていた『羅小黒戦記(ロシャオヘイ・センキ)』を観てきました。どうやら当初の予定では日本での公開期間がかなり短く、それでもこの映画のファンが拡大公開を望んだことで全国的に観ることができるようになったとのことです。実際に観ると、噂通り躍動感あるアニメーションの中に、ジブリへのオマージュを思わせる美しさが入り込み、エンタテインメント作品としてここまでのものを、今の中国は作っているのだと驚きました。日本と欧米とではキャラクターの表情の作り方が違うことはよく知ってい

          『羅小黒戦記』に見られる現代中国における政治的リアリズム

          『ドラえもん』における文学的想像力とその歴史化

          唐突ですが、僕は『ドラえもん』で育った人間で、『ドラえもん』は僕の国語の先生でもあります。昔祖父が入院していた病院の売店で並んでいる単行本をふと手に取り、子どもながらにとてつもなく面白く、小学校~中学校にかけて一番の愛読書でした。当然『ドラえもん』とは、その単行本の発売は1974年と古く(小学館発行の雑誌は1970年)、ゆえに作中の言い回りはどこか古風で、平成生まれの子ども(=僕)には少し難しいところもありながら、そうしたセリフをまねしつつ、僕の語彙が形作られていきました。今

          『ドラえもん』における文学的想像力とその歴史化