正宗@酒造技能士

一応国家資格(1級)取得しています。 清酒(日本酒)について少しでも正確な情報を載せた…

正宗@酒造技能士

一応国家資格(1級)取得しています。 清酒(日本酒)について少しでも正確な情報を載せたいなぁとTweetしていたのですが、情報見にくくなったのでnoteにまとめることにしました。 なるべく事実を書きますが、後で修正したり、現在進行形の情報もあったりしますので、ご利用は慎重に。

最近の記事

【23】清酒と水

清酒の原料というと、ラベル表示を見ると米、米麴、醸造アルコールなどのその他政令で定める物品……と並んでいますが、記載が省略されているだけでその大半を占めるのが水。銘醸地には必ず豊かな水源があるとされますが、水が清酒醸造に与える影響と、その違いが酒質にどのように表れるのか、などを紹介したいと思います。 酒造用水の条件酒造用水、というと読んで字のごとく、酒造りに使われる水全般のことを指すのですが、清酒醸造においては用途で細分化されています。 必要量は上記引用では20~30倍と

    • 【22】清酒醸造の微生物(2) -麴菌②-

      麴菌について基礎的な話を-麴菌①-で触れました。②では麴菌の研究・育種に関わる部分を紹介しますが、その前段として「種麴屋」の話題から紹介します。 種麴麴を造る際に元となる「種麴」ですが、「もやし」とも呼ばれます。語源としては「萌やす」=「芽を出させる」という意味で、野菜のモヤシと同じ語源なんだそうです。 この種麴は室町時代には既に製造されておりまして、発酵産業に利用する微生物が別に製造され、産業としてその時点で成立していたというのは驚きですよね。 種麴造りが確立されるまでは

      • 【21】清酒醸造の微生物(2) -麴菌①-

        【14】~【20】と7回にわたって長々と酵母の話を進めましたので、清酒醸造における重要な微生物のもう一方の主役、麴菌について紹介したいと思います。基礎的な話を①で、その他研究に関わる部分を②で書いていく予定です。 酵母が比較的ダイレクトに香味といった酒質に影響する一方、麴菌はその前段階であるコメの溶解に大きく関与しています。香味に直接影響する要素もあるのですが、米麴をどのように造るかが酒屋の技術であって、種麴は種麴屋の専門領域として扱われていた背景もありまして、酵母ほど様々

        • 【20】清酒醸造の微生物(1) -酵母⑦-

          一度に読む(書く)文量を超えたので、記事を分割しています。 -酵母①-・-酵母②-・-酵母③-・-酵母④-で、日本醸造協会から頒布されている「きょうかい酵母」の清酒用酵母の紹介が一段落しましたが、「きょうかい酵母以外」にも広く使われている清酒用酵母があります。 -酵母⑤-できょうかい系以外の酵母をまとめるはずでしたが、公設機関による研究について47都道府県分を並べることにしたので、民間・大学による研究開発酵母と分割しました。そして47都道府県並べた結果、情報が膨大になってしま

          【19】清酒醸造の微生物(1) -酵母⑥-

          一度に読む(書く)文量を超えたので、記事を分割しています。 -酵母①-・-酵母②-・-酵母③-・-酵母④-で、日本醸造協会から頒布されている「きょうかい酵母」の清酒用酵母の紹介が一段落しましたが、「きょうかい酵母以外」にも広く使われている清酒用酵母があります。 -酵母⑤-できょうかい系以外の酵母をまとめるはずでしたが、公設機関による研究について47都道府県分を並べることにしたので、民間・大学による研究開発酵母と分割しました。そして47都道府県並べた結果、情報が膨大になってしま

          【19】清酒醸造の微生物(1) -酵母⑥-

          【18】清酒醸造の微生物(1) -酵母⑤-

          一度に読む(書く)文量を超えたので、記事を分割しています。 -酵母①-・-酵母②-・-酵母③-・-酵母④-で、日本醸造協会から頒布されている「きょうかい酵母」の清酒用酵母の紹介が一段落しましたが、「きょうかい酵母」以外にも、民間企業や大学、地方自治体公設研究機関における研究で開発され広く使われている清酒用酵母があります。 それらをまとめて酵母の話を終えるはずでしたが、公設研究機関の方は各都道府県で記載すると膨大な量になったので、今回は民間企業および大学で研究開発された酵母の紹

          【18】清酒醸造の微生物(1) -酵母⑤-

          【17】清酒醸造の微生物(1) -酵母④-

          一度に読む(書く)文量を超えたので、記事を分割しています。 -酵母①-では「きょうかい酵母」の清酒用6号まで、-酵母②-では同7号から14号について、-酵母③-では泡なし酵母(_01号)の経緯と1501号から1801号まで触れました。 「きょうかい酵母」の主だったところは紹介を終えたことになりますが、他にも頒布されている清酒用「きょうかい酵母」がまだありますので、引き続き紹介していきます。 次回以降で「きょうかい酵母」以外の酵母、すなわち日本醸造協会以外が開発した酵母たちにつ

          【17】清酒醸造の微生物(1) -酵母④-

          【16】清酒醸造の微生物(1) -酵母③-

          一度に読む(書く)文量を超えたので、記事を分割しています。 -酵母①-では「きょうかい酵母」の清酒用6号まで、-酵母②-では同7号から14号について触れました。今回は14号までの間に並行して分離・頒布された「泡なし酵母」について、それから15号(1501号)以後の「カプロン酸エチル高生産酵母」を紹介します。低尿素生産性酵母や酸高生産性酵母などは-酵母④-へ収録予定です。 泡なし酵母についてきょうかい酵母ではナンバリングにおいて「_01」を付記したものが「泡なし」としています

          【16】清酒醸造の微生物(1) -酵母③-

          【15】清酒醸造の微生物(1) -酵母②-

          一度に読む(書く)文量を超えたので、記事を分割しています。 -酵母①-では「きょうかい酵母」の清酒用6号までについて触れましたので、今回は同7号から14号までをお伝えします。次回-酵母③-にて、その間に分離された「泡なし酵母」、それから15号(1501号)以後について紹介を続けます。 きょうかい酵母(続き)7号酵母 分離源:真澄 分離者:山田 正一・塚原 寅次 他 分離・実用年:1946年(昭和21年) 戦後早々に実用化され、現在でも広く使われている7号酵母は、長野県の「

          【15】清酒醸造の微生物(1) -酵母②-

          【14】清酒醸造の微生物(1) -酵母①-

          【12】清酒醸造の科学的解明の歴史 では、清酒酵母の存在が明らかになったのち、優良酵母の探索について触れました。その結果生まれたのが「協会酵母(きょうかい酵母)」です。その過程と、各きょうかい酵母の紹介をまず-酵母①-、-酵母②-…と何回かに分けてお送りし、その他の酵母に関するトピックを最後にまとめようと思います(きょうかい酵母を順番に挙げていくだけで、文章量がとてつもなく多くなりましたので…)。 優良酵母の探索1906年(明治39年)、醸造試験所の技師であった高橋偵造は酵

          【14】清酒醸造の微生物(1) -酵母①-

          【13】清酒の賞味期限

          既に各所で解説されている内容ですが、とりあえずこのネタならさほど時間かけずに書けそうなので、サクッとやってしまおうかと思っていたのに随分かかってしまいました…。 微生物のお話はもうしばらくお待ちください…。 消費期限と賞味期限本題の前に、まずこの2つについて解説しておこうかと思います。 解説というか、消費者庁が出している資料の文言コピペになりますが。 「食品表示基準」の第二章第一節第一款第三条において、一般用加工食品では「消費期限または賞味期限」を定められた表示の方法に従

          【13】清酒の賞味期限

          【12】清酒醸造の科学的解明の歴史

          【7】清酒の製法的分類 において、清酒は麴菌と酵母の並行複発酵を利用して造られる、という話をしましたので、それらの微生物について紹介していきたいのですが、簡単に話をするなら他所のサイトを見ていただいた方が早いので、まずは少々マニアックな歴史的背景、主に明治時代の、西洋科学の移入によって清酒醸造が科学的に解明されていったお話をまとめたいと思います。その次に各微生物についての各論ですかね…出来るかな。 ヘッダの写真は後述します東京都北区滝野川の旧・醸造試験所の建物の写真を国税庁

          【12】清酒醸造の科学的解明の歴史

          【11】清酒の価格構造について

          長期休暇前になると、帰省の手土産にちょっといいお酒でも…と思い、稀少な銘柄を買い求める方もいらっしゃるかと思いますが、その販売価格は本当に適正か、そこで買って問題がないか、といった内容についてまとめてみたいと思います。Twitterの固定ツイートにも設定していますが、もうちょっと情報も追加してみます。 商品売価の設定についてまず清酒の売価がどのように決まっているのかをざっくりと説明していきたいと思いますが、経営や経理はまともに勉強したことないので、そこら辺の説明や用語に不備

          【11】清酒の価格構造について

          【10】清酒と飲用温度の関係について

          清酒は醸造酒の中でも特徴的な点がいくつもあるのですが、飲まれる温度帯が広く、それにより味わいを変えることもその一つ。一般に食品の好ましい温度は食品の種類によって違いがあり、体温を中心に±25~30℃の範囲とされますが、清酒については冷(5℃)~温(一般的に55℃くらいまで)どちらでも飲用されています。 前半では飲用温度に関するトピックスとしてその表現を、後半は温度変化が与える香味への影響を紹介します。 清酒の飲用温度と表現上記の表は、清酒の飲用温度と表現をまとめたものです。

          【10】清酒と飲用温度の関係について

          【9】清酒のコンテストについて

          ※2023年1月より、受賞の記述に関する規則が変わっています ※各鑑評会の細かい内容は2022年7月時点のものです ※世界酒蔵ランキングについては2023の変更点等、若干加筆修正しました いずれも執筆当時の古いままですがご容赦ください。 「○○賞受賞」や「金賞受賞」といったPOPの付いた商品が特に春から夏にかけて多く並びます。というのもそれら清酒のコンテストがだいたい春に集中し、初夏にかけて結果発表が行われるためです。何かよくわからないけど、賞を取った酒や賞を取った蔵なら間

          【9】清酒のコンテストについて

          【8】清酒に関する資格

          科学的かつ歴史的な清酒の話を書いていたらいつまでも終わりそうにないので、とりあえずサクッと書けるネタを先にやっていこうかなと。 最近SNSの広告で「唎酒師が厳選!」とかよく見る(気がする)ので、それらの「資格」に関するお話をしていこうかと思います。 清酒に関する資格資格といってもピンキリでして、どこの誰が認めているのか、どれくらいの人がその資格を取得しているのか、そのためにはどの程度の費用と時間が必要なのか…など。またそれぞれの資格が何を指しているのか。ちょっと整理していき

          【8】清酒に関する資格