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【8】清酒に関する資格

科学的かつ歴史的な清酒の話を書いていたらいつまでも終わりそうにないので、とりあえずサクッと書けるネタを先にやっていこうかなと。
最近SNSの広告で「唎酒師ききさけしが厳選!」とかよく見る(気がする)ので、それらの「資格」に関するお話をしていこうかと思います。


清酒に関する資格

資格といってもピンキリでして、どこの誰が認めているのか、どれくらいの人がその資格を取得しているのか、そのためにはどの程度の費用と時間が必要なのか…など。またそれぞれの資格が何を指しているのか。ちょっと整理していきましょう。
認定団体は国や公共機関、民間団体、海外団体など様々です。言葉の響きだけではよく違いの判らないものについても解説してみたい(というか自分でも調べて把握したい)と思います。

酒造関係者の資格

まずは清酒の関係者が持っていると良いとされる、または関係者でないと受検できない資格について。

杜氏とうじ

これを資格と言っていいものかどうか、というところですが。
勝手に「杜氏」を自称する分には何の資格も必要ないのですが、各地の杜氏組合において「○○杜氏」と認められるには、それぞれ条件があると思われます(正直そこまで把握できません)。
さらに各組合の上に「日本酒造杜氏組合連合会」が上位組織として存在し、2010年(平成22年)から認定制度がスタートしました「日本酒造杜氏」の称号を得るためには、以下の要件を満たす必要があると記載されています。

(1) 日本酒造杜氏組合連合会(以下、日杜連という。)に加盟する各杜氏組合に所属する組合員であり、かつ、日杜連の会員である者
(2) 所属杜氏組合組合長の推薦を受けた者
(3) 所属杜氏組合及び日杜連に所定の組合員費及び会費をそれぞれ継続して完納している者
(4) 杜氏として活動している期間が5年以上の者

日本酒造杜氏組合連合会webサイト 認定制度 より

先も述べましたが、勝手に杜氏を名乗る分には特にこれらの話は関係しません。杜氏がいない、というのは単にそれらの流派の技術を持った(認定された)杜氏がいないというだけで、醸造管理責任者≒杜氏でしょう、というのが私の認識です。
杜氏をトップにもつ「蔵人」の組織図的なモノもあるのですが、それは資格というよりポジションの話なので割愛しますね。

酒造技能士しゅぞうぎのうし

国家資格として「酒造技能士」があります。私も取得したやつです。
「技能士」とは、「技能検定」と呼ばれる厚生労働省による国家検定制度で試験に合格すると名乗ることができます。

技能検定とは、働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、機械加工、建築大工やファイナンシャル・プランニングなど全部で131職種の試験があります。試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。

厚生労働省 技能検定制度について より

その職種の中に「酒造」が含まれております。
「酒造」と言いながら清酒に限定されており、焼酎やビールやワインは含まれていません。今のところは。
1級と2級がありますが、「受検資格は、関連する実務経験のある検定職種卒業・修了した学科・訓練科に関する検定職種に限り得ることができます。」とあるので、趣味ではまず受検が出来ません。それと要求される実務経験年数が級により異なります。実務経験のみの場合、1級で7年、2級で2年です。専門の教育を修了した場合には実務経験期間が短縮されるのですが、酒造技能士の場合は、発酵学であっても短縮要件としては認められず、酒造の専門学校や醸造学科でないと反映されないそうです(過去に実際に短縮要件を聞きました)。

技能検定は他の技能士と同様に「学科」と「実技」がありまして、それぞれ別日程ですが私の受けたときは半日程度で終了しました。特に学科は制限時間が2時間くらいあったと記憶していますが、選択式ですし解くのに時間はそれほど必要なく、途中退出が認められておりましたので実際に早々に退出しました(笑)
実技試験は酒蔵が会場となって行われましたが、米や米麴を見て精米歩合や状態を判定したり、オフフレーバーを照らし合わせたり、所定分析法に基づいたアルコール分の測定などの一般分析(からの数量計算もあります)をしたりしました。私の時は濾過機の組立もありましたが、実技試験の内容はその後一部変更されたと聞いています。

私が受けた頃は年1回後期(下半期)の試験だったのですが、酒造りの繁忙期にそんなのやってられるかという要望から、年1回前期(上半期)に試験が変更となりました。受検者数が減ると技能検定自体が無くなってしまうので、受検しやすくするための処置ですね。
合格すると立派な賞状とヘッダーに乗せた「技能士章」が貰えます。酒造における技能がありますよ、と国(厚労省)が認めてくれたわけですが、じゃあそれで美味い酒が造れるかというと…それはまた、別の話。

清酒専門評価者

独立行政法人酒類総合研究所では、清酒に関する官能評価の専門家を養成する「清酒官能評価セミナー」を開催しています。そこで5つの試験(①基本味とにおいの識別、②酸味及び甘味の差異の検出、③香味強度の順位付け、④においの記述とその由来、⑤記述的試験法)に合格後、さらに清酒の官能評価に関する経験を証明する申請書を提出し基準を満たした人が「清酒専門評価者(正式名称:清酒の官能評価分析における専門評価者)」として認定されます。

清酒専門評価者とは
感覚の感受性が高く、清酒の香りや味の多様な特徴を評価するのに一貫して反復可能な能力を有している評価者で、清酒の官能評価分析の経験があるとともに、清酒の製造方法や貯蔵・熟成に関する知識を有している専門家です。

独立行政法人酒類総合研究所「清酒専門評価者の認定について」より

官能評価だったら「唎酒師」も同じじゃないの?と思うでしょうが、これも素人は受けられません。応募資格は下記の通り。

原則として、酒類の製造業、販売業又は酒造技術支援に従事し、かつ、酒類の官能評価に関して1年以上の経験を有し、通訳なしで受講可能な次のいずれかの資格を有する方となります。
なお、受講に当たっては化学、生物学、醸造学、統計学の基礎的な知識が必要です。
1. 大学(短期大学を含む。)の農学・食品・生物系学科卒業以上の経験を有する方
2. 職業能力開発促進法に基づく酒造技能士2級以上を取得されている方
3. 当研究所主催の酒類醸造講習(旧・酒類醸造セミナー)、旧清酒製造技術講習又は公益財団法人日本醸造協会主催の「実践きき酒セミナー」を受講済みの方 

独立行政法人酒類総合研究所「清酒官能評価セミナー募集要領」より

原則として酒造業界関係者(製造系に限らず販売業等でも可)しか受けられませんし、加えてある程度の基礎が無いとダメです。
「清酒に関して、その官能的性質の差異の検出、属性の決定、品質の鑑定などの客観的な判断を行うとともに、官能評価結果と製造や貯蔵等に関する知識を組み合わせて意見を述べることのできる専門家の養成を目的とします」というだけあって、これかなり難しいみたいですよ。私は受けたことが無いので詳細は知りませんが、知人が無事認定されたものの、レポート(記述的試験のことかな?)が相当厳しかったとか…。
2007年10月からこのセミナーが開始され、2022年3月末までに153名の方が清酒専門評価者として認定されているとのことです。

きき酒マイスター

公益財団法人日本醸造協会が行っている「きき酒セミナー」で成績優秀者が認定される資格(称号)なのですが、コロナ禍の影響か、セミナーが実施されていないので現在休止中…ですかね。詳細の情報が見つからず、過去に行われたセミナーの様子を知らせるPDFファイルでかろうじて存在は拾うことができました。
これも日本醸造協会のセミナー自体を受講するためには酒造関係者でないと難しいと思われますが、どうなのかな…。

一般で取得できる資格

上記は酒造関係機関が認定する関係者向けの資格でしたが、その他の団体が一般人向けに認定している清酒に関する資格はざっくり以下のようなものがあります。

日本酒検定

日本酒サービス研究会・酒匠さかしょう研究会連合会(SSI)が認定している資格です。

日本酒の魅力を消費者のみなさまに知っていただく機会を広く提供し、消費者が「日本酒をもっと楽しんでいただくこと」を目的に実施しています。
2010年より開始され、現在までに累計約5,000人の方が合格されており、昨年の実績では、年間1,500人を超える消費者の皆さまが受検しています。

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 「日本酒検定」より

級が5・4・3・2・準1・1級とあり、1級を取得すると「日本酒名人」の称号がいただけるそうですよ。5級・4級はネット上の試験で随時受検でき、3級~1級は試験会場での受検となりますが、3級・2級はCBT受検も出来るとのことです。テイスティングは伴わない、知識のみを要求される資格です。
これまでの認定人数については、SSIがサイト上で公開している情報で2022年5月末時点で以下の通り。
1級:16名、準1級:106名、2級:563名、3級:3,451名、4級:621名、5級:603名 合計5,360名

記載の通り、一般消費者の方を対象にした資格ですので、20歳以上ならどなたでも受けられますが、最初は5~3級までのチャレンジになり、以後は下位の級をパスする(2級・準1級については他のSSI認定資格でも可)ことで受検資格が得られます。
公式テキストが別途有償で販売されています。検定問題例を見るとかなりマニアックな知識まで要求されるので、きちんとテキストを見て学んでの受検が推奨されます。加えてモラル・マナーについてはテキスト外からの出題とのことですので、サイトに記載の出題例から押さえておく必要もあるんでしょうね。

日本酒ナビゲーター

同じくSSIによる認定資格というか、オンライン受講に限り試験はあるようですが、基本的にはセミナー受講するだけでOKのもので、特にクラスはありません。

 日本酒の魅力を消費者の皆さまに知っていただくことを目的に実施しています。
認定セミナーでは、一般的には難解といわれる専門用語や原料、製造方法はもちろんのこと、歴史や文化、さらには、日本酒が持つ香味の特徴を踏まえた楽しみ方について広く学んでいただけます。セミナーを受講することで、日本酒の魅力をより深く知り、日本酒をより一層自身で楽しむことができるようになる資格「日本酒ナビゲーター」に認定されます。

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 「日本酒ナビゲーター」より

こちらも一般消費者対象の資格で、2022年5月末時点で24,590名の方が認定されています。これにパスすると1年間FBOオフィシャルサイトのステータスが「シルバー」にランクアップし、唎酒師等の受検費用が優待価格になるなどの特典があるとのことです。
上記「日本酒検定」に比べると楽しみ方に特化した内容なのかな…?それとも優待価格になるための踏み台かしら…?
受講された方の感想をお伺いしたいです、これ。

日本酒学講師

これもSSIによる認定資格で、「日本酒学講師」は國酒である日本酒と焼酎を正しく伝えることができることを認定された“講師”の資格で、3日間の講習(年2回実施)を受け、後日試験に合格すると認定されます。
焼酎も含むのに「日本酒学」もどうかと思いますけど(小声)、これまで500名以上の方が認定されており、こちらの資格を持っていると、セミナーを開催して上述の日本酒ナビゲーター(および焼酎ナビゲーター)を認定することができる、との記載があります。それだけに受検の要件と認定の要件がそれぞれ厳しく設定されています。

受講受験資格
条件1.「唎酒師」または「焼酎唎酒師」認定者であること
※認定者でない者は申込以前に認定を受けていない資格を取得するべくコースに申込済であること
注)「唎酒師」「焼酎唎酒師」はSSI認定を指し、「国際唎酒師」「国際焼酎唎酒師」とは異なります。
条件2. FBO公認講師であること(FBO公認講師同時取得プランあり)
条件3. 次のいずれかを満たしていること
A:酒匠/日本酒学講師 講習会受講者限定「VR日本酒製造体験プログラム」への申込および参加
B:以下に指定するFBO及び提携加盟団体が主催するセミナー等への参加履歴
□「学びの遠足!蔵元見学・VR日本酒製造体験」
□「蔵元体験実習」
□「造って学ぶ日本酒道場」
□「日本酒学講師とめぐる蔵元見学ツアー」
□2022年1月・2月開催「VR日本酒製造体験プログラム」
C:「蔵元見学証明書」の提出
受講日*に別途定める「蔵元見学証明書」を提出してください。

認定条件
以下①から③のすべてを満たすことが認定条件となります。
① FBO認定会員かつ受講受験資格で定める通り「唎酒師」または「焼酎唎酒師」であること
② 試験結果(第1~4次)が、当会の定める基準に達していること
③別途定める認定登録料の納付が完了していること

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 「日本酒学講師」より抜粋

後述の「唎酒師」が必須であることから、一定基準の知識・教養は持っていることが前提なので、講義では専門知識を「どう教えるか」をスキルとして磨くことになります。2022年5月末時点で552名が認定されています。

唎酒師ききさけし

「唎酒師」が一番良く聞く資格でしょうね。ききけし、じゃなくて、ききけし、なのは調べて初めて知りましたけど…。

これもSSIによる認定資格で、NPO法人FBOが公認する、1991年に制定された日本酒提供・販売者資格であり、2022年5月末時点で38,519名が認定を受けています。
「日本酒のサービスはもちろんのこと、飲食サービス、小売りサービスに必要な知識、技術を学び有効なセールスプロモーション能力を身に付けた、いわゆる、日本酒のソムリエといえます。酒類業界や飲食業界の最新情報にアンテナを張り、日々その能力を維持・向上を図る日本酒提供販売のプロフェッショナル」とのことで、知識のみでなく、テイスティング能力とサービス能力も必要とされており、飲食店や酒販店に限らず観光業やイベント開催等においても活躍が期待される資格…だそうです。

資格取得には以下の5つのコースがあります。
・e-ラーニングコース
・通信コース
・オンデマンドコース
・2日間集中コース
・1日通学コース
カリキュラムは同じですが、進行や試験方法が異なるみたいですね。自宅で受講する場合もテイスティング用の清酒は送付されるので、それを用いてテイスティングのトレーニングおよび試験を受けられるとのこと。

カリキュラムとしては4つの柱があってそれぞれ以下の通り。

1.食品、飲料全般の基礎知識とプロとしての心がまえ
・世界のさまざまな酒類・嗜好性食品の基礎知識や食文化
・酒類のテイスティングにおける目的や、求められる能力
・サービスの基本として、心構えやプロトコール、危機管理
・セールスプロモーションの基本として、目的や経営理論、酒税法
2.日本酒のプロとしての知識
・日本酒の原料・製法・歴史に関する知識
・提供の際に重要となる、特定名称酒や日本酒の表示
・日本酒を香りや味わいで分類するための香味特性別分類(4タイプ)について
3.プロとして必要な日本酒のテイスティングとサービス
・テイスティングの目的や評価の方法
・実際の日本酒のテイスティングを通じて、「香味特性別分類(4タイプ)」を活用した香味特性の抽出や、わかりやすく効果的な表現方法について
・品質管理において重要な劣化の識別について
4.日本酒のセールスプロモーションについて
・ニーズの考え方を整理し、消費者別・季節別・料理のジャンル別・香味特性別といった、さまざまな切り口でのプロモーション方法

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 「唎酒師-カリキュラム」より抜粋

なお「唎酒師」に認定されると、同時に「日本酒品質鑑定士」(日本酒の香味を維持するべく、適切な保存管理方法に精通するほか、劣化した日本酒をテイスティング評価により識別できる)の資格もついてくるそうですが、これを単独で取得が出来ないなら何のための肩書なのかよくわかりません。

沢の鶴さんは社内で資格取得を推進されたのか、こんな商品出されてますので、紹介しておきます。買ってみようと思いながらまだ飲んだことないので、自分向けの備忘録としても。
しかし受検費用やFBO年会費、個人と会社どっち持ちなんだろうでしょうね、コレ。

酒匠さかしょう

「唎酒師」の更に上位スキルとして、SSIが認定する資格です。

酒匠さかしょうは、卓越したテイスティング能力を武器に、日本酒や焼酎のセールスプロモーションを行う資格です。
唎酒師や焼酎唎酒師を超えるテイスティング能力を磨くことを目的に、味の要素の理解や、香りの表現例の習得などを行います。
ポジショニングMAPで日本酒や焼酎の香味の「視覚化」や「数値化」を行い、消費者へのわかりやすい提案や自社での商品選定など、販売企画立案力の向上が狙えます。

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 「酒匠」より

「唎酒師」「焼酎唎酒師」両方の認定を受けた上で、2日間18時間の講習を受け、さらにテイスティングを含む4つの試験にパスしてようやく認定されるということで、唎酒師よりもグレードの高い資格となっています。2022年5月末時点で541名が認定されています。
カリキュラムや受講条件などはかなり長くなるので、SSIのサイトよりご確認ください。

SSI研究室 専属テイスター

「酒匠」認定後、SSIが定めるプログラムに参加し研鑽を積むとともに、選考会で酒類全般の知識、高度なテイスティング能力はもちろんのこと、もてなしの心、さらには日本酒の提供・販売環境の向上に対する熱意や相応しい能力を有すると認められた者、だそうで、2022年5月末時点で88名が委嘱されているそうですよ。

国際唎酒師

英語のサイトになっちゃうので詳細よくわかっていませんが、SSI(厳密にはSSI international)が国際的に認めますよ、とする「唎酒師」の資格です。カリキュラム等は恐らく同じなのでしょうが、専門的表現→日本語→英語という多段階翻訳が要求されるので、なかなか難しいみたいですね。「焼酎唎酒師」「酒匠」「日本酒学講師」についても同様に「国際-」となるものがあります。2022年5月末時点で国際唎酒師が7,578名、国際酒匠が114名、国際日本酒学講師が165名認定されています。

SAKE DIPLOMAサケ ディプロマ

ここから先はSSI以外の組織による認定資格です。
SAKE DIPLOMAは一般社団法人日本ソムリエ協会が認定する資格です。
国際的にもソムリエに日本酒・焼酎の知識が必要とされるようになり(和食に限らず洋食でもペアリングに用いられることがあるようで…)、そこに特化した資格を認定するようになった模様です。
受検の基準日時点で20歳以上であれば特に受検のための条件はないようです。試験は1次試験が60分のCBT試験、2次試験がテイスティング+論述となっています。この資格を持っている人を知っていますが、なかなか難しい試験のようで、きっちり対策が必要なようです。ワインの官能評価の表現同様に独特な表現がなされるみたいなので、清酒業界における官能評価表現とはまるで異なる世界が待っているのでは…と思われます。
なお、先述の「国際-」同様に、こちらにも英語で表現する「SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL」があります。

SAKE EXPERTサケ エキスパート

SAKE EXPERTは一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションが認定している資格で、サケ・アカデミーを受講後に試験にパスすると認定されます。

和食が世界無形文化遺産に登録されたことにより、国内外で日本酒がますます注目されています。しかしながら、まだ日本酒の知識が正しく理解されていないのが現状です。
JSAは日本酒を提供するソムリエやキャビネットなどのプロの方をはじめ、多くの方々に日本酒の基本知識、料理とお酒のペアリング、ワインと日本酒の違いなどを学んでいただき、正しい知識をもって、お客様にすすめていただけるよう、「サケ・アカデミー」を開講しています。また個人でオンラインサロンを開講される方など「日本酒の魅力を多くの方に伝えたい」という方にも好評です。

JAPAN SAKE ASSOCIATION 公式サイトより

「世界に通用する日本酒の資格」と銘打っていますが、2015年から始まったものの、主催団体が小さいこともあって、他の資格に比べると浸透していないのが実情でしょう。上位資格に「JSA認定講師」「JSAマスター講師」があり、JSA認定講師は自らセミナーを開催し、「SAKE CONCIERGE」(SAKE EXPERTの下位資格)を認定できる資格なんだそうです。
受講費などは他と同様にかかりますが、年会費は必要ないとのことで、それは上記の資格と比べて大きな違いかと思います。

WSETダブルセット SAKE

WSET(Wine & Spirit Education Trust)とは、ロンドンに本部を置く世界最大のワイン教育機関で、ワイン産業をサポートする英国のワイン商組合「Vintners Company」により1969年に創設され、現在では世界70カ国でWSETの教育組織が運営され、年間約95,000人が認定試験を受験するなど、国際的に認められている認定資格です。
そのWSETが2014年より日本酒部門(=WSET SAKE)を開講し、Level 1とLevel 3の2段階が用意されています。

WSET SAKE Level1
日本酒に関わる仕事を始めようとしている人や、日本酒に興味のある一般の方におすすめの初心者レベルのコースです。日本酒の主なスタイルおよびタイプを視覚、嗅覚、味覚を通して学び、風味と⾹りに影響を与える重要な要素について理解を深めます。
・言語:日本語または英語
・問題:4択マークシート式30問
・正答率:70%以上で合格

WSET SAKE Level3
日本酒について十分な知識、テイスティング能力をお持ちの方を対象に、日本酒の主要成分と生産技術の違いがもたらす酒のスタイルや品質評価について「なぜその結論になったのか?」を論理的に導き出せる力を養うコースです。
・言語:英語のみ
・問題:4択マークシート式50問/記述式3問/ブラインドテイスティング2種類
・正答率:55%以上で合格

キャプラン株式会社 WSETとは? より

世界標準の日本酒知識を学べる
「WSET SAKE講座」は、世界最大のワイン教育機関「WSET」が提供するワインの世界標準メソッドに基づいて開発された、日本酒を体系的に学ぶことができる講座です。
日本酒を体系的に理解できる
日本各地の風土や文化に根ざしさまざまな個性を持つ日本酒を視覚、嗅覚、味覚を通して学び、風味と香りに影響を与える重要な要素について体系的に学びます。
日本酒を世界へ発信できる
世界で愛されているワインと同様に、論理的かつ客観的な表現で日本酒を学ぶことにより、世界中の人々へ日本酒の魅力を発信できる力を身に付けます。

世界標準知識として日本酒を学ぶ | キャプラン ワインアカデミー より

level1は1日の講習と試験で終わるようですが、level3になると講習自体が数か月に及ぶカリキュラムのようですね。公式サイトは英語でちんぷんかんぷんなので、日本で担当?しているキャプラン社のサイトから丸写しです。
受検者のサイトらしきものを拝見したところ、SAKE DIPLOMAともまた異なるアプローチで知識や回答を要求されるみたいです。

資格って必要なの?

資格が無くても酒造りや官能評価で素晴らしい能力をお持ちの方はたくさんいらっしゃいます。
結局はそれがあることで発信に説得力を持たせられるかどうか、だと思います。私が1級酒造技能士であることを公表しているのも、業界でそこそこ経験積んでいる人間だと示すためで、ただの素人が言いたい放題しているわけじゃないよ、と言えるわけですよ。

一般で取得できる資格には上述の通りたくさん種類があるわけですが、受検費用を払って、試験受けて、認定されて終わり…ではなく、その資格を認定している団体に入会して年会費を収めて…と継続して費用が発生するものがあります。FBOにしてもJSAにしても年会費が1万円以上しますから、10年20年先までずっとそれを維持しようと思うと相当な金額になります。仕事にその肩書が必要、あるいは肩書を武器にビジネスを始めたい人が取得して、その費用以上のリターンを獲得できる場合に取るものでしょうね。ただの酒好きや資格マニアが取るにはあまりお勧めはできません。

最後に一つだけ。SSIの運営会社、株式会社酒類総研とありますが、独立行政法人酒類総合研究所とは全く関係がありません(「株式会社酒類総研」でGoogle検索すると混同されて表示されますが…)。
SSIの設立が1991年、醸造試験所から酒類総合研究所への移行が2001年でして、株式会社酒類総研の設立が1989年という記載が発見されていますが、別の情報で法人登記が2015年に新規で行われているというのもあり、設立当時は違う組織名だった?など謎が多い部分ではあります。

次はコンテスト関連のお話を進めたいと思いますが、書きかけの微生物のお話も並行して書いていかないとな…

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